坊っちゃん列車 観光列車への公的資金投入は公益性に資するのか?
松山市の観光資源と知られる坊っちゃん列車だが、松山市への観光客の少なさや運転手不足による継続的な赤字により2023年には運休し、運行会社の伊予鉄道は市に金銭的支援を要求した。
ここまではよくある話だ。地方都市においては低い収益性の交通機関が多い。このような観光列車に公的資金を投入するケースは珍しいが、坊っちゃん列車自体、観光業振興を目指した松山市の要請で開設された路線であることを考えると、金銭的支援を市に要求することは合理的であるように思える。
問題はその後に起こった。松山市は関係団体と協議しつつ、持続可能な運行再開を模索したが行政サイドとの連携なしで伊予鉄道が運行再開を発表してしまった。後手に回った当局はクラウドファンディングに活用を見出そうとしたが、結局十分に資金が集まることはなかった。
坊っちゃん列車は赤字でありながら継続的な運行がされてきた珍しい観光列車である。これらは伊予鉄道の財務的健全性や、松山市と伊予鉄道の友好的関係によっておそらく維持されてきたのだろう。しかし、もはや伊予鉄道と松山市には信頼関係が存在しないように思える。例え坊っちゃん列車が松山市の観光業の維持のために必要だとしても、松山市は自分たちに泣きついてきた癖に詳しいことが決まる前に運行再開を決めた伊予鉄道に不信感を抱くだろう。一方で伊予鉄道は2001年からの継続的な赤字に忍耐強く耐えてきたことに対する松山市の感謝のなさに怒りを抱いているのかもしれない。
結局のところ、坊っちゃん列車は廃止されるべきであると思う。継続的な赤字が示すのは坊っちゃん列車を目当てに松山市を訪れる観光客は多くなかったということであり、クラウドファンディングでの失敗は魅力的な返礼品の欠如もあったかもしれないが、多くの日本国民の坊っちゃん列車への関心の低さを露呈したと言える。これが公共交通機関であれば、公的資金投入について学生や高齢者への社会的支援という大義名分が存在するが、赤字続きの観光列車に公的資金を投入すべきではないし、仮にそれなしで存続ができないなら坊っちゃん列車はその程度のものであったということでしかないのだ。
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