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【スペシャル短編ためし読み公開☆】『理花のおかしな実験室(12)』発売中!
お菓子×科学の超人気シリーズ最新刊♬
『理花のおかしな実験室(12) つながるエールと初入試!』
が大好評発売中!!
本のなかには、ゆり×ユウが主人公の
スペシャル短編『パーティをしよう!』もはいってるよ☆
今回は、短編の冒頭をトクベツに公開!!
![](https://assets.st-note.com/img/1720579797221-MqxGUTK8VM.jpg?width=1200)
昼休みの教室はざわざわと騒がしい。
そんな教室の窓側の席では、真剣な表情で問題集に取り組んでいる女の子──理花ちゃんの姿が妙に目立っていた。
あー、理花ちゃんって、ほんっとがんばりやさんだよねえ……。
理花ちゃんっていうのは、わたし──金子ゆりの親友。
理花ちゃんは今、中学受験に向かってがんばっている最中。
もう卒業も迫ってきてるのに、毎日塾の課題で大変そうで、思い出作りもできずに寂しいんだ。
けど、理花ちゃんの夢──科学者になるためだから応援したいなって思ってる。
でも応援かあ。具体的に何をしたらいいのかな。
──あ、そうだ。いいこと考えた!
ひらめいたわたしは、理花ちゃんに気づかれないように教室の反対側に行くと、そっと、おなじく親友のななとみぃにささやいた。
「理花ちゃん、もうすぐ誕生日じゃない? お祝いしてあげたいんだけど、どうかな?」
「賛成!」
なながすぐに言って、みぃもうなずいた。
「でも、どうやって?」
「やっぱ、お祝いって言ったらパーティでしょ!」
ななが張り切って言う。
「でも、理花ちゃん、忙しいから来られるかなあ」
みぃがちょっと心配そう。
わたしたちはうーんと考え込んだ。
「それにパーティってなると、どこでするの?」
そういえばそうだ。
お誕生日パーティって、たいていが、自分の家にご招待してやるものだと思う。
でもわたしたちが企画するのに、理花ちゃんの家でするのも変だし、どうしよう。
家でやるのも無理だし。わたしのお姉ちゃん、うるさいんだよね。
考え込んでいると、
「あとお料理がいるよ。ケーキだって。わたしたちで作るの?」
みぃが言う。するとなながニヤッと笑った。
「料理とケーキは大丈夫でしょ。だってそらくんがいるし、それに……」
ななが声を潜めた。
「ゆりの『彼』、料理が得意じゃん!」
とたん、わたしは真っ赤になる。
「そ、それは、そうだけど……手伝ってくれるかわかんないよ?」
と言いながらも、ユウちゃんならきっと、手伝ってくれるって確信はあった。
だって、ユウちゃん、めっちゃくちゃ頼もしいんだもん。
ユウちゃんっていうのは──クラスメイトの広瀬そらくんのいとこで、広瀬ユウちゃんのこと。隣の学区の小学校に通っている、わたしとおなじ小学六年生だ。
フランス人形みたいにきれいな顔立ちをしてて、一見すると、女の子にも見える。
でも、中身はびっくりするくらいに頼もしくってかっこいい。
自分の考えがしっかりあって、周りに流されずに言いたいことをきっぱり言う。
強くて賢い、わたしの……つきあいだして二ヶ月の自慢の彼、だ。
最初、なんとなく気が合うなって思ってたくらいだったんだけど、一緒にお菓子を作ったりしているうちに、かっこいいなって思い始めたんだ。
だからといって、それが好きかどうかなんてわかんなかったんだよね。
ユウちゃんを好きになったのは──って、ええっと、何考えてるんだろ、わたし!
あ、ユウちゃんって呼んでるけど、男の子だよ。
最初女の子かと思っててそう呼んでたから、そのままになっちゃってる。けど、わたし、ユウくんって呼びたいなあって実は思ってる。
で、でもいざ呼ぼうとすると気恥ずかしいんだよね。ユウちゃんのこと、男の子って意識してますって言ってるようで。
でもいつまでもこのまんまじゃイヤだなぁ。
そんな事を考えていると……。
「ゆりが頼んだら手伝ってくれるに決まってるよ〜。だってカワイイカノジョのお願いだよ?」
ななとみぃがなんだかにまにまと笑っていた。
「もう、ななもみぃもニヤニヤしないで!」
二人にこんなふうに見られると、どうしても素直にユウちゃんのこと話せないよ! なんだか恥ずかしいじゃん!
「まあ、とにかく、料理の方はゆりに頼むとして……あ、でも場所とか色々考えないと」
「うーん」
自分で言い出したものの、企画ってけっこう大変だなって思った。
たちまち企画が倒れそうになって、がっかりする。
あー、わたしっていつもこう。深く考えないで思いつきで行動して、周りを巻き込んじゃうんだ。
もうちょっと考えてからやればいいのにってあとになって反省することがたくさんで、嫌になっちゃう。
そう。あのときもそうだった。考えなしに言った言葉で、理花ちゃんを傷つけた。
──女の子なのに、虫が好きなんて『変』って。
ひどいこと言っちゃったんだって気づいたとき、すごく反省したし、もう許してもらえないんだろうなって思った。
だけど理花ちゃん、そもそも怒ってもいなかったんだよ。
そして、調理実習で考えなしに行動して、アレルギーのことでみぃのことを傷つけたわたしのこと、助けてくれた。
わたし、あのとき、理花ちゃんはすごいって、心底思ったし、わたしもあんなふうになれるかな? なりたいなって思ったんだよね。
あのとき、ああやって変わろうって思ったからかな。
きっとわたしはちょっとだけ変わったんだと思う──って、現状、まだまだ全然ダメダメだけど!
と落ち込んだそのとき、
「お店を借りるのもありじゃない?」
後ろから声が上がりわたしはぎょっとする。見るとそこにはさやかちゃん。
き、聞いてたの?
「聞こえちゃった」
悪びれずにさやかちゃんは言った。
「え、どこから!?」
「パーティの企画するとかいうところ? おもしろそうだなって」
わたしたちは顔を見合わせる。直後、わたしは言った。
「さやかちゃん、お願い! ちょっとだけ一緒に考えて!」
だって、さやかちゃんはなんといってもイベントの企画が大の得意。ハロウィンのときのことを思い出す。あのときはちょっと色々あったものの、普段から、イベントごとにすごいアイディアを出してくれている。
「お店を借りるってどういうこと?」
「レストランとかだと貸し切りにしてくれたりするよ」
「レストラン……」
わたしの頭の中にはぽんとある場所が浮かんだ。
二人も意味ありげにうなずいた。
それはユウちゃんのレストランだ。でも。
「まあ、お金はかかるけどね」
その現実的な言葉にしゅんとなってしまう。
ああ、お金。それはそうだ。レストランだとお金がかかっちゃうよ。ただで借してしてもらうわけにいかないし。
うーん、おこづかいでなんとかなるかな? 考え込んでしまう。
「とにかく、一度相談してみたらいいんじゃない?」
そう言うとさやかちゃんはニッと笑った。
「その、お料理の得意な彼に」
ええっ!? わたしはびっくりする。
あ、やっぱりさっきの聞こえてた!? すごい小声だったのに!
そう問うと、さやかちゃんは首を横に振って笑う。
「ううん、ちがう。ウワサに なってるよ。隣の学校の子なんでしょ?」
「えええ、なんで」
ヒミツにしてるのに。
ななとみぃはあわてたように「わたしたち、言ってないよ」と首を横に振った。
理花ちゃんも言いふらすような子じゃないし、ってことは桔平くんかそらくんがしゃべった?
「桔平くんかそらくんかな」
「桔平にはわたしが言うなって言ってあるからないと思う」
ななが言う。
それならなさそうだなって思う。桔平くんはななには頭が上がらないし。
じゃあ、そらくん? と思ったけど、そらくんって人のこと言いふらしたりしない……っていうか恋愛に疎いから、そもそもわかっていない可能性もあるよね……。
だって、そらくん、自分の気持ちにも気がついてないレベルの超鈍感だし。
あ、わたし、そらくんは絶対理花ちゃんのこと好きだって確信してるんだ! なのに理花ちゃんのこと相棒とか言っちゃうからやきもきしちゃうよ……。
あ、シュウくん……は、あのとき──ユウちゃんが告白してくれたとき──いなかったから、知らないよね。
じゃあ、どうしてウワサに なってるんだろう?
* * * * *
不可解に思いながら家に帰ると、メッセージアプリを使ってユウちゃんに連絡をする。
『ユウちゃん、今日時間あるかな? 理花ちゃんの誕生日のことでちょっと相談があるから、駅前の公園に来てくれる?』
スマホは、この間ママのお下がりをもらったばっかりなんだけど、使える機能は限られている。電話とメッセージアプリのみ。ゲームは入っていない。
わたしの周りにはまだスマホを持っている子が少ない。
それもあって、家族以外に最初に登録したのがユウちゃんのアカウントだった。
返事はすぐに来る。
『おっけー』
それだけ。結構あっさりしている。
トークルームを眺めても、いつもわたしが先にメッセージを送って、ユウちゃんが返事をくれる。
そして、わたしがいつもたくさん書いてて、ユウちゃんはサラッと返事をくれる感じ。
わたしはそれがちょっとさみしい。
だって、もっとユウちゃんとお話ししたいし。
それに……。
文章の量だけみてると、わたしの方ばっかり好き、みたいに思えてくる。
と考えかけたわたしはあわてて首を横に振った。
って、何くだらないこと考えてるんだろ、わたし!
赤くなりながら準備をして家を飛び出した。
そして、ユウへのモヤモヤはどうなるの?
つづきは発売中の本のなかで楽しんでね!!
![](https://assets.st-note.com/img/1720587800070-t4cpcff2GG.jpg?width=1200)
でも、受験を応えんしてくれているあこがれの先輩、
科学部の和彩さんがなぜか落ちこんでいた――。
その理由は、わたしの進路――科学者の夢にもかかわることで!?
本当にこのまま、受験をしてもいいのかな?
モヤモヤするなか、入試の日がやってきたけれど……。
角川つばさ文庫
『理花のおかしな実験室⑫ つながるエールと初入試!』
作:やまもとふみ 絵:nanao
▼くわしい情報はこちら▼
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