遺失物取扱をめぐる制度的課題(1) - 遺失物の「報労金」、払ってもらえなかったら
「珍事件」の経緯
この事件の概要は以下のとおり。
2023年1月、43万円入りの財布を自営業営業の男性(50)(以下、落とし主)を落とした。
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同日、大阪市西区の男性(70)(以下、拾い主)が拾得、府警西署へ届出。報労金請求の権利を主張する旨を申告した。
(この時点で拾い主には報労金の請求権が発生)
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同日、西署は財布を落とし主へ返還すると同時に、拾い主が報労金請求を望んでいる旨と拾い主の連絡先を伝え、拾い主と連絡を取り報労金についての話し合いをするよう案内した。
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しかし落とし主が拾い主に連絡を取ることは無かった。
(何日間連絡しなかったのかは記事に無いが、10~20日程度と思われる)
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業を煮やした拾い主は、落とし主に自分から連絡した。
(制度上、落とし主の連絡先は拾い主に簡単には開示されないが、本件ではおそらく拾い主が弁護士に依頼し、弁護士照会によって府警または電話会社が開示したものと思われる。財布には個人番号カードがあったとのことなので、落とし主の氏名、住所、生年月日は予め把握できていたはずである)
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落とし主は、拾い主に対して報労金を支払う意思を示さなかったばかりか、電話を通話途中で切るなど不誠実な対応をとった。
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この後、拾い主が落とし主に電話しても連絡が取れなくなった。
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一連の経過で、落とし主は拾い主に報労金について支払い意思を示さず、また、一度も謝意を伝えることはなかった。
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対応に腹を立てた拾い主は、落とし主に対し、報労金8万6000円の支払いを求める訴訟を起こした。
(財布の在中品は現金43万円と個人番号カード以外明らかではないが、財布そのものや他の在中品を合わせた品物の価値から請求額を決めたものと思われる。拾い主は、在中品を含めた財布の価値のうち最大20%の金額を請求できる)
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4月12日、大阪簡裁での調停で、落とし主が拾い主に報労金7万円を支払うことで和解した。
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和解後、拾い主と落とし主は読売新聞の取材に対し、このようなそれぞれこのようなコメントを発した。
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