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大学院修了後も同志と学べる場を作るー 慶應健マネ「医療サービス研究ゼミ」のケース

先週末に久々に、母校である慶應大学院・健康マネジメント研究科(関係者は「健マネ」と呼ぶ)の在学生と卒業生向けの有志の勉強会を開催しました。12回目を迎える今回の勉強会は、スピーカーや運営も含め全37名(在学生21、卒業生16)の方々に申込みいただき、とても良い学びと交流の場となりました。(なお、慶應では在学生を塾生、卒業生を塾員という言葉を使う文化がありますが、今回は在学生・卒業生という言葉に統一しております。)

数年前から同じ研究科出身の先輩である田村桂一氏(本業は公認会計士・税理士。健マネ4期)と共同代表をしつつ、有志で開催している勉強会ですが、コロナ前までは「医療経営」をテーマにし、会の名前も「医療経営ゼミ」と標榜して行ってきました。ただ、コロナの流行でしばらくお休みが続き、ようやくコロナが明ける兆しが見えてきた昨年末ごろより再開しています。また、再開に際しては、もう少しフィールド広げて「医療サービス研究ゼミ」と衣替えし、事務局メンバーにも現役コンサルの椎野優樹氏(健マネ6期)と病院で経営企画に携わる宗像舞氏(健マネ16期)の2人も加わり、各方面のネットワークを活用して開催しております。(ちなみに神戸は健マネ10期)

修了後も同志と学べる場を作った経緯

医療サービス研究ゼミの前身である医療経営ゼミは、2017年4月より開始しました。

開講風景

卒業とともに繋がりが立ち切れる

多くの学校では卒業(修了)すると同期や後輩、先輩との繋がりが薄くなり、本当に仲の良かった人以外はほとんど連絡を取らなくなることが多いように思います。三田会という強固な同窓会文化を築いている慶應大学においてもやはり一部では盛り上がりをみせるものの、その他の部分では繋がりが薄くなっていくことが多いように思います。特に大学院はその傾向が強いように思っております。私が通った健マネも然りで、三田会の活動も思ったほど活発ではなく、卒業生同士の繋がりや卒業生と現役生との繋がり形成はほとんどないような状況でした。

一方で、大学院の大きな魅力は何かと考えると、より高度で密な時間を少ない人数で過ごすことで、同期や後輩、先輩と志を共にし、研究や学業に励むことができることです。こうやって培う繋がりがとても重要で、魅力だと感じています。このような繋がりが大学院在学中だけで終わってしまうことは、とても寂しいものです。

大学院在学中にメンターのような相談できる人が欲しい

加えて、在学生にとっては、研究に向き合う際のアドバイスや修了後のキャリア形成における不安を相談できるメンターとなるような人は重要です。事実、私もその1人でしたが、私が在籍した当時は教育の仕組みとして工夫がされており、それが上手く機能していたように感じています。

私が在学していた頃の健マネでは、大学院の中に看護、医療マネジメント、スポーツマネジメントの3つの専修がありました(今は公衆衛生コースが加わり4つ)。その3専修の全学生が必修として履修する統計科目などでは、バックグラウンドや研究分野が全く異なるメンバーごちゃまぜでグループワークを行うなどして、今で言うダイバーシティ&インクルージョンな場が出来上がっていました。残念ながら今は必修ではなく選択で、独自性に任せたカリキュラムになっています(これも時代の流れか…)。また、医療マネジメント専修が年に1回行う公式の山荘合宿では、他の専修からの参加OKな2日間を掛けた研究発表と質疑応答の機会があり、先輩の発表や自身の発表に向き合う中で研究マインドが高められました。加えて、夜のBBQと宿舎周辺の散策では学生同士やOBOGとの交流(先輩たちがちょくちょく顔を出します)、主査副査の先生方との腹を割った会話など、とても重要なコミュニケーションの場だったと感じています。ただ、この様な仕組みは、今は無くなってしまったようで、学生の独自性に任せる方針に転換したと風の噂で聞いています。

これも1つの時代の流れと言ってしまえばそうなのですが、知識やスキルだけでなく、価値観にも影響を与える場であって欲しい大学院という場においては、継続してほしい仕組みだったようにも感じています。加えて直近ではコロナの影響もあり、大学院でもオンライン中心の講義でリアルな交流ができないという弊害もあったと聞きました(今はコロナが明けて解消されたようです)。

その様なこともあり、また自分たちの継続した学びの場として構築したいという想いもあり、このような会を立ち上げています。また、コロナも落ち着いてきた昨年末よりリスタートしたという経緯です。

医療サービス研究ゼミはどんな場か

健マネという大学院は、現在は看護、公衆衛生、医療マネジメント、スポーツマネジメントの4つのコースに分かれています。また入学者は医療や介護福祉、ヘルスケアに興味を持って入ってくる方や実際にその領域で仕事をしている方が多いです。医療サービス研究ゼミでは、この様なバックグラウンドの方々に興味を持ってもらえて、業界を知る機会やキャリア形成、繋がりづくりにも資するテーマを毎回設定して開催しております。

直近の6月の勉強会では、「業界研究:医療コンサルティング」と題して、卒業生4人のコンサルタント経験者に登壇いただきました。健マネ卒業生の中にはコンサルティング業界に進む方も少なくなく、学生からのニーズは大きいと感じています。

第12回の風景

さて、医療サービス研究ゼミは、旧医療経営ゼミの時代から数え今月の開催で12回目となりますが、これまで様々な方々にお越しいただき、業界の話や最近のトピックなどを共有いただきました。

これまでの開講テーマと登壇者

当日のスケジュールは、「インプットパート」でゲスト講演、「アウトプットパート」で参加者によるグループディスカッションを行います。参加者全員が言葉を発することができるように構成しております。

また、勉強会の会場は、思い入れのある慶應のキャンパスの一室にて行っており、卒業生にとっては思い出深い場所にあらためて来る機会は初心に帰る気持ちにもなります。

その後、勉強会の反省や話し足りない内容を懇親会にてざっくばらんに会話するという流れで、とても有意義な情報交換になっているのではと感じています。

場を作ったことで見えてきた効果

このような場を作り運営してきたことでいくつか見えてきたこともあります。

1.OB/OGには修了後も毎年新しい繋がりを作れる

前述しましたが、大学院修了後は疎遠になる事が多く、せっかくの学舎の繋がりが途切れてしまうことが少なくありません。このような勉強会に参加することで、入学・修了年に関わらず、継続して広い繋がりを形成することができます。健マネで言えば開講してから既に約20年経っているため、毎年約30名の入卒者だとすると「同じ学舎という共通項」を持った約600人近いコミュニティと考えることができます。期を超えた繋がりの場を作り、それを活かさない手はありません。

2.現役生はOB/OGと繋がり悩み・不安解消に繋がる

大学院の在学中は知識やスキルのインプットはもちろん、研究というアウトプットが課せられます。研究することに慣れている人ならともかく、初挑戦という方も多く、これに向かうためには情報が鍵を握ります。大学院のオフィシャルなプログラムとして受け身で得られる情報もありますが、自ら取りに行く必要がある情報もあります。いわゆるコツやノウハウというものです。その意味でも、この過程を一度経験している卒業生に聞けるチャンスを作ることは重要です。

また、大学院に進学する方の多くはキャリアアップやキャリアチェンジを想定して来られている方も多いです。その意味でも、業界や個別の職業について、オフィシャルな情報から裏情報までざっくばらんに聞ける環境を作る意義は大きいと感じています。

3.そもそも学びは何歳でも新たな気づきに繋がる

VUCA時代と言われる今、環境変化が激しくそれに上手く順応していく能力が必要と言われています。その意味でも、年齢に関係なく学ぶ姿勢が重要で、学びからは新たな気づきを得ることができます。さらに、これまでの自身の経験などによって物事の見え方が変わることは知られていますが、学びも然りで、同じ内容であってもタイミングが違うだけで、また違った気づきが得られることがあります。凝り固まらず、まずは踏み出してみることが重要です。そんな学びたい方のための学びの場になればと思っています。

4.共通項のある同志との学びは安心と継続に繋がる

そうは言っても学ぶという行為は、他の様々な魅力的な暇つぶしやエンターテイメントに比べると継続することが難しいかもしれません。だからこそ、思い入れのある学舎や共通項のある同志と会って学ぶということがポイントで、それがモチベーションに繋がります。学びを継続的に行う仕組みとして、とても良いのではと思っています。

5.周りまわって大学院のプレゼンスに貢献(期待を込めて)

この様な場が盛り上がり、参加者各個人の満足に繋がると、個々の活動に良い影響を及ぼす可能性が大きいです。前述の研究や就職の話もそうですし、新たなビジネスアイデアやそれこそ将来のパートナーが見つかるかもしれません。このようにして会を重ねていくことで、単にこの勉強会の良さに留まらず、大学院の魅力に繋がる可能性はゼロではありません。今でこそ評判はSNSという時代でありますが、1番の有力情報はやはり信頼できる友達や仲間、同僚、先輩などからの口伝えが重要だと思います。雰囲気の良い環境、学び舎、生涯にわたって繋がる場は、さまざまな可能性を秘めているのではないでしょうか。

おわりに

今回は、大学院を人生の一期間、単なるステップとして終わらせるのではなく、生涯通しての人との繋がりと学びの場として活用していくをコンセプトとして取り組みをご紹介しました。

私自身は色んな組織や地域で場づくりを行なっていますが、各組織・各地域には踏み出していないだけで色々な可能性が眠っています。是非、ご興味を持たれた方は、自身のルーツを紐解き、場づくりを行ってみてはいかがでしょうか。

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