臨床検査技師100人カイギの立ち上げと自身のキャリアでの気づき
本内容は、臨床検査技師100人カイギの第0回(2021.12.26)でお話しした内容を編集しております。映像で視聴したい方は最下層よりご覧いただけます。
はじめに
私の場合、あまり普通ではない臨床検査技師ホルダーのキャリアを歩んできました。医療機関の臨床検査の現場を経験したことがないのです。つまりはペーパーということになります。もちろん、採血なんてできるはずもなく、心電図も読めません。
ですが今は、臨床検査技師の免許を取得した多くの方が働かれるのと同じように医療機関に所属し、 法人内では研究所の責任者として病院経営と管理職育成に携わっています。 また、全国の病院で働く臨床検査技師が技師長や技術部長、事務長、副院長になるためのキャリア教育に、技師会の活動として関わっています。
私ははじめ、製薬業界の中でも治験(臨床研究)を仕事にする企業に就職し、まわりまわって気付いたら医療機関に舞い戻り、病院全体のマネジメントに携わったり、技師会の活動に携わっていたという流れです。自分でもそんなこともあるんだな、巡り合わせだなって感じたります。物事は繋がっているととても強く感じています。
このあと、詳しい話をしていきたいと思いますが、医療を学校で学び、医療の知識を得て、そして医療の免許を持ったことで、自身のキャリアデザインがとても広がったのだと思います。
その意味でも、臨床検査技師の免許を取ることは最初のスタートラインで、その後、病院で働くにしても、検査センターで働くにしても、企業で働くにしても、研究者になるにしても、いろんな道があり、やがてそれは繋がっていくものだと思っています。
米国ではよく「リボルビングドア」という言葉が聞かれます。これは、ある能力を持った方がそれまでの知識や経験を活かして、別の場所で別の役割として働くことを言います。例えば、最初は企業勤めだった方が、省庁で働き、その後、大学の教員になり、そして民間企業で働き、そして起業家になり、というようなものです。回転ドアのようにキャリアを変えながら、社会に貢献していく様を言います。
あなたは今どんな活動をしてますでしょうか。
その時その時では、活動の意味を見い出せないこともあるかもしれませんが、後から思い返すと、とても重要な経験だったように思うのです。
キャリア形成において、日々の活動に無駄なものはないと思っています。もちろん、コタツでずっとぼーっとしていたら無駄かもしれませんが、もしかしたらそれは次のステップへの充電期間かもしれません。そして、何かしら活動をしていくのであれば、それは次に繋がっていくのだと私は信じています。
企業づとめから始めた臨床検査技師のキャリア形成の話
医療を志すキッカケ
ここでは、「自分軸の重要性」について話したいと思います。
私は、父ががんになったことがキッカケで医療の道へ進みました。それまではあまり将来のことをイメージすることも少なく、当時好きだった絵を描くことを仕事にしたいなぁ、というふんわりした思いから、美大に進みたいと思っていました。
しかしながら、父ががんになり、病院に行くようになり、すごく医療が身近にあるように感じ始めたのです。皆さんの中でも私のように親族の病気がキッカケで医療の道に踏み出した方も多いのではないでしょうか。
私は、いつも何か迷いが生じたときはここに立ち返ります。
いったい何がしたかったのかと。
何ができているのかと
医療に携わっていくこと、どんな形でも良いので、より多くの患者さんのためになる事をしたい。
自分の中に軸ができた瞬間でした。
自分軸ができるキッカケは人それぞれだと思いますし、そのタイミングも様々です。
私の場合は高校3年生でした。
それ以来、医療という分野で、どのような貢献ができるのか。それが私を突き動かしている原動力になっています。
新たな場へ踏み出す
私にとって、重要だと感じているもう1つは「凝り固まらない自由な発想と継続的な学び」です。
凝り固まらないとは、考え方のことで、新しい発想ができるかということです。何かにぶつかった時や課題がある時、そこには実は様々な解決策があるはずなのです。
ただ、人は時に1つのものしか見えなくなったりします。その原因はこれまでの経験や年齢、精神状態、育った環境が影響するかもしれません。1つの回答しか出てこないという事は、そこで思考停止してしまうことでもあるのです。時にそれは危険な選択肢となる可能性もありえます。そして、もしかしたらもっと良い方法あったかもしれません。
凝り固まらない自由な発想。
この考え方が今の私の活動に繋がっています。
そして、このような思考を育てたのは、社会人を経験してから入学した大学院生生活でした。
私が門をたたいたの慶應義塾大学です。皆さまもご存知だと思いますが慶應義塾大学は福沢諭吉が初代塾長です。そこには創設者の福沢諭吉の思想に触れる機会が幾つもあります。学校には、福沢諭吉研究をされる専門の先生がおり、全ての学生に対して何かしらの教えを与えています。また、風土として「半学半教」の精神をもっています。この半学半教とは、誰でもが学生であり、だれでもが教師になりえるということで、これを日々の学生生活の中でも培います。この100人カイギも同じです。様々な方が登壇し、話をします。全員が教師であり全員が学生です。そこには沢山の学びがあると思っています。この場を通じて自分が持っていない視点に気づけたのであれば、それは大きな価値と言えるのではないでしょうか。
もののごとは1つではありません。表もあれば裏もあり。それ以外のこともあります…
凝り固まるな!ということだと思います。
現在の自分が、色々なことに挑戦し、人とは違ったアプローチをして行動するのはそのような学びのお陰だと感じています。そして、そのための新たな一歩を踏み出すこと。これが新しい自分を創るのだと思っています。
新たな一歩は、学びの一歩でもあります。
是非、一緒に新しい一歩を踏み出してみませんか。
新たな場を創る
最近の私のブームは「場づくり」です。
先ほどの話に通ずるところでもありますが、「場」が「出会い」と「繋がり」、そして「学び」を生み出します。
かつての私は、サークル活動や学会参加、海外旅行や海外留学、そして大学院進学など、既にある「場」に参加することを行ってきました。一方で、そのような新しい場に出ていくことを繰り返すうちに、「場」の重要性に気づき始めました。
色々な方が出会い、想いを語り合う場。
一緒に活動する場。
仲間と成長しあう場。
それがとても重要なのだと感じています。
そのような想いもあって、自分のなかで挑戦的に幾つかの起業にもチャレンジしています。
「場に参加する」から「場を創る」という活動にシフトしたのです。
これまで、2つの株式会社、1つのNPO法人、2つの一般社団法人を作りました。また、大学院生向けのゼミを開講したり、地域の医療者向けの塾を作ってみたり、自身が働く法人内に有志の勉強の場を創ったりしました。技師会の活動では、新たな認定制度の立ち上げに関わり、認定ホルダーのコミュニティの運営も始めました。ちなみにこれまでの活動は一貫して医療に関係するものです。
さて、場への参加に視点を移すと、
やはり最初は多くの方々が新しい場に入っていくことに躊躇しているように見受けられます。しかし、一度場に入ってしますと、その雰囲気や心地よさ、また新たな学びを感じるようになっていく方が多かったように感じます。一方で、もちろん自分には合わない場だと感じて抜けてしまう方もいます。しかしながら、これも1つの選択肢だと思います。自分に合っている場なのかどうかは、人それぞれの異なった価値観のなかで産まれてくるからです。また、一個人の中でも自身のタイミングによって、今はその時ではないという事もあります。そのような意味でも、全ての方が満足する場を創ることはとても難しいのです。
ただ、少しでも多くの方が心地よいと感じる場を創っていけたらと思っています。
そして、その場を通して共に成長していけたらハッピーなのではないかと感じています。
そんなこと思いながら、場づくりという活動を行っています。
実は少し前から、場に参加するよりも、場を創る側の方が数段おもしろいという事に気づき始めました。これはここだけの話です。ここにおられる方は既にそのおもしろみに気づいている方もいるかもしれません。
このような活動を行ってきた経験から、1つの重要な課題があると思っています。それは、コミュニティの終わり方です。
場を一度作るとそれがいつまで継続するのか、継続させるべきなのか、という課題にも直面します。
その意味では、今回の100人カイギは、新たな挑戦でもあります。終わりがあるコミュニティなのです。
そんなことで、場の重要性と場づくりについてお話しました。
もし、ご興味があれば、場をづくる活動、皆さまもいかがでしょう。
そんな風に思うのです。
出会いの場は貴重。100人カイギに込めた想い
そんなことで、私は自分の生きてきた中で経験したことや感じたことを自分なりに咀嚼して、臨床検査技師100人カイギというものを創ったら、検査技師の業界がよりよい方向へゆるやかに向かっていくのではないかという期待を込めて仲間たちと創ることにしました。
100人の検査技師が自分のストーリーを語り、そして思いを語る。
それを聞く方々はスピーカーの方々と自分自身を重ねながら、時に空想の中で疑似体験をしているかのように、色々なことを感じとって帰っていきます。
その多くは学びとなり、次につながります。
その多くは新たな繋がりとなり、次につながります。
その多くは本人にもその時には分からないかもしれないが、何か新しいものにつながっていくはずです。
本日はこのような場に時間をいただいた参加者の皆さま、そして運営メンバーの仲間には心より感謝しかありません。時間はとても貴重なのです。この2時間という時間も、当然ながらとても貴重な時間です。
人生100年時代と言われておりますが、それは人によって当然違います。私は高校3年の冬に父の死によって、それを理解しました。そして、大学院時代に出会い、一緒にNPO法人を立ち上げた共同代表の早すぎる死でも、それを改めて感じました。
有限な時間の中で、この場にいる人たちと一緒に過ごせる時間はとても貴重だと思います。更に、世界には78億7500万人という人がいる中で、同じ時間を過ごすことができるということは、凄いことなのだと感じています。
臨床検査技師100人カイギへ参加する目的は人それぞれで多様であってしかるべきです。
この場を、それぞれの思いでうまく活用していただければ嬉しいです。
この場が、参加いただいた全ての方にとって、いつかどこかのタイミングで影響を与えるものになることを期待して、私の発表を終わりたいと思います。
ありがとうございました。