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年下彼氏の取り扱い説明書

私の彼は11歳年下だったが、先日私の誕生日があったせいで、現在は12歳差になっている。
大人になったら一回りくらいの年齢差なんてそんなに変わらないでしょ、というのが彼の持論であり、その時点で他の男性と感覚が違っているのではないだろうか。

若い子の方がいいんじゃない、とそれとなく聞いてみても、元カノで懲りたらしい。

そんな彼と、先日初めて言い合いをし、改めて彼が変わっていると確信したので、備忘録代わりに取り扱い説明書をまとめておくことにする。


1.好意の種類が違う

私は恋愛の「好き」とそれ以外の「好き」があるが、おおむね好きだと感じる相手、物に対して一律に一直線に愛を伝えるタイプである。

好きだから会いたくなるし、構ってほしくなるし、連絡が来たら嬉しくなる。
それが私の普通だし、世間一般的には私のような感覚でいる人の方が多いのではないだろうか。

だから、彼の飄々とした淡白な態度は、私の物差しで測ると「好きではない」ことになってしまう。

・友達と遊ぶ時間が多いということは私が好きじゃないってことでしょう?
・君には私が必要ないように感じる
・好きなら会いたいって思うのに、そう思わないのは好きじゃないってことだよ
・私に興味なんてないでしょ

上記は、私が彼に言いがちな言葉だ。

彼と話し合っている時につい吐き出してしまって、彼が自身の恋愛観を語り、私がそれを否定する。
彼の言葉、彼の気持ちを、彼ではない私が否定することがおかしいとは思うのに、つい、口にしてしまう。

彼からとうとう「どの視点で言ってるの」と苦言を呈されてしまって、改めて謝罪した。
このままでは堂々巡りになる。

私は彼の言葉を深堀りさせてもらうことにした。
彼のいう「好き」はどういうものなのか。

私のこと、そんなに好きじゃないのにどうして付き合ってるの?

私の質問も大概だが、彼からの答えはもっとおかしかった。
彼曰く、「好かれて気持ち悪くない人と付き合っている」という。

いや、それってやっぱり好きじゃないってことじゃん。

多くの人が私と同じことを感じたのではないだろうか。

好きだから付き合うのではなく、好意が心地いいから付き合う。
随分と受け身な姿勢だ。
そんなの私である必要がない。誰だっていい。

続けざまに聞けば、「そういうことではない」と否定される。

このまま聞き続けても理解できる気がしなかったので、過去の恋愛に絡めるかたちに質問を変えた。

「私のほかに好意を伝えてきた人はいた?」
「いた。でも気持ち悪かったから断った」
「どうして気持ち悪かったの?」
「恋愛体質で、俺じゃなくてもいいって思ったし、浮気するだろうなって思ったから」

彼はよく、「俺じゃなくてもいい人は嫌だ」ということを口にする。
浮気されたトラウマのせいなのか、彼はその部分だけは潔癖だ。

その点において、私に対しては安心しきっているらしい。
私は、彼に会えば好きだという気持ちを隠すことなく言葉にするし、LINEでも好意を伝えるのが当然という態度を崩さない。
浮気をする可能性が極めて低いという点で、私が恋人に選定された理由があるのかもしれない。

「どうして私と付き合ってくれたの?」
「タイミングがよかった」
「元カノと別れて一番寂しい時期だったから?」
「うん」

普通はここまで素直に答えないだろう。
彼女を安心させてあげるために好きだからと言ってあげよう、なんて考えは彼にはない。

嘘で言って欲しいわけではないが、そういうところが私を不安にさせる原因であることを彼は知らない。

この調子だから、どうして付き合ってくれているのかが未だに理解できていない。
同年代ならまだ、他に相手がいないから単なる暇つぶしだろうなと思うのだが、彼は私の一回りも下で、遊ぶにしろ暇つぶしをするにしろ、もっと若い子とするべきだと思うのだが。

彼の持論からすると、年齢に重きを置いてないから、年齢関係なく遊ばれているのかもしれない。

「私とどうなるつもりなんだ」
ため息交じりに伝えれば、いつかは同棲して結婚したいとぬかす。
どの口が、と言いたくもなるというものである。


2.恋人の存在意義

彼は淡白なタイプではあるものの、彼女は切らしたくないという。
聞いたときに、友達がたくさんいるし、彼女とか必要なさそうと言ったら、そんなことないと否定された。

彼は、自己肯定感はとても高いが、「他人からはいらないと思われている」という相反する思いを抱えている。
今どきの若者が陥りそうな承認欲求をこじらせたかたちなのだろうと理解しているが、そこがまた彼を読み解くときに難解さを増している部分ではある。

友達と遊んでいて楽しいなら彼女なんていらないねというと、彼女はいて欲しい、いることに意味があると彼は言う。

何でも、友達には非常に気を遣っているらしく、楽しませなくてはいけないだとか、ゲーム中は友人間の空気が悪くならないように道化を演じてみせたり、ゲラを演じてみせてりして、疲れてしまうらしい。

過去の彼女の前でも、「相手が求める自分を演じる」ということをし続けていたらしく、自然体で何も考えずにいられるのは私の前だけ、と言っている。

誰かに甘えたこともないし、誰かと一緒にいるときに気を抜いたこともない。
それが私の前でだけは、何も考えずにただそこにいるだけでいいのは、とても楽らしい。

だから付き合っている、と言われて嬉しかったが、私も年齢を重ねているので、他人の言葉を鵜吞みにするほど馬鹿じゃない。

それだけでは「好き」にはつながらない。
居心地のいい存在なんて、恋人という括りでなければならない決まりなんてない。

あまりにも好かれている気がしないので、いっそのこと友人に戻りたいと言ったら、友人だったらもっと連絡を取らなくなるし、会わなくなると返されてしまった。

私はできたら毎日構ってくれていた友人の頃に戻りたかったのだが、彼は以前のような友人関係には戻れないとつっぱねてきた。

一方通行な好意を抱えて付き合っているのは辛いのだというと、「俺も好きだよ。そっちの好きと違うだけ」と言われる。

そう言われても、彼が時々言ってくれる「好きだよ」に心が入っているとは、到底思えない。

私はさらにぶっこんでみた。

仮に私が別れるって言ったらそのまま別れるんでしょう、と聞いてみた。
彼は即答でそうだねと言う。
それってやっぱり好きじゃないからじゃないの、と聞き返せば、「好きじゃないって思われている相手と付き合い続けるのは無理でしょ」とのこと。

恋愛というものはそんなすぐに割り切れるものではないと思う。
嫌いになって別れることもあるだろうが、好きだけど辛いから別れるということもあるだろう。

そういう場合も考慮せずに無理なの、と聞いてみたが、「相手が別れるって言ってきたってことはもう何を言っても無駄だと思っている」とのこと。

なるほど、意外と柔軟に考えられないタイプらしい。
これは多分、「自分だけを好きでいてくれる人」であることが、彼にとって恋人の存在意義、ひいては彼の恋愛観に繋がる重要なところなのだろうと思う。


3.大人な部分、子供な部分

彼は基本的に達観しているためか、大人びた考えを持ち、どこか一歩引いた態度ですべてに向き合っている。

だから恋愛に没頭はしないし、自分が確立しているから、自分の世界の中で心地よく過ごしている。
そんな調子だから、大人びた雰囲気ではあるのだが、年齢らしく、子供だと思う部分もある。

好きなものの話をしているとき、彼はとても子供に見える。
私が理解していても理解していなくても構わず、嬉しそうに楽しそうに話す。

彼の友達のことを話す姿も、年相応か大学生くらいの男の子なんだなぁと、実感する。

何も隠さず、身内ネタでも構わずすべてを報告してくる彼は小学生男児のようで、母親にでもなった気分になる。

話し合いをしているときも、私の方が幼稚なことを言うが、私があまりにも言い過ぎると、拗ねることもある。

背中を向けて、知らない、という姿を見ると、すべてがどうでもよくなる。
言い合いになった時に、「もっと普通の人を好きになりたかった」とこぼしてしまったら、背中を背けて、丸まって、「変わった人に変わってるって言われたくない」と拗ねられてしまった。

そして、口では色々言ってくるが、態度は大人びてはいない。

寂しくない、いなくても大丈夫と言ってくるくせに、一緒にいるときはそれが本当かなぁと思うくらいにくっついてくる。

好きじゃないとでも言っているようなことしか伝えてくれない彼が、寝ぼけて抱きついたり、抱き寄せたりする姿とか、先に寝た私に優しく囁く姿とか(起きた)、無意識の行動がすべてを表わしているじゃないかと、やっと気が付いた。

彼は、大人であることを強要されてきて、きっとそれが染みついてしまっている。

だからこそ、真面目な話し合いで私と一問一答のようなことをすると、必要以上に畏まって、固く考えて、自分が傷つかない答えを返してしまうのだ。
大人であればこう説明するだろうというお手本のような答えであり、もしかしたら彼自身の本音ではないのかもしれない。

そう思うくらい、ベタベタしてきてくれる。
寝ぼけて、意識が半分ない状態の彼は、子供還りをして、素直に甘えてくる。
これが彼の本心で、本音だと思ったら、言い合いや話し合いはするだけ無駄というものだ。


4.察する力の低さ

ここまで書いてきて、彼の「察する力」のなさに愕然とした。
確かに彼からは「察するのは無理」とかなり初めの頃に言われていた。

でも、ここまでだとは思わなかった。

恋人に対して、安定してきたら気を抜いて、連絡を疎かにしたり、会う頻度が落ちたりすることもあるだろう。

だがそれでも、相手が不安にならないように言動に気を付けてくれるのが、恋人という存在ではないだろうか。
その点において、彼は全く配慮がない。

これに関しては、私が考えすぎる性格というのもある。
相手の気持ちの裏の裏まで考えて、大体の結論は私がいらないということに帰着する。
あまりにも暴論だろう、みたいな思考回路になることも少なくはないが、それにしても彼も気遣いがなさすぎる。

予定がいっぱいだから1カ月会えない。
確かに仕方ないかもしれない。
それでも何とか時間を捻出しようとするのが好きということではないのか。
会えないのは嫌だと散々伝えても、この調子だ。

それに食いついたら、

「毎週末会うのは疲れる」
「ずっと一緒は無理。恋人だからとか関係ない、人と一緒にいるのが疲れちゃう。今回、先週もあって今週もは大分辛かった」

そんなことを言われたら、「帰る」以外の何が言えるだろうか。

誕生日、どこに連れて行ってくれなくてもいいから一緒にいたいと彼の家に言って、ココ壱を食べながらそんなことを言われてしまって、悲しみと空しさと惨めさでいっぱいになった。

荷物を置いてきてしまったから一旦一緒には帰ったが、私は荷物をまとめてすぐ彼の家から帰るつもりでいた。
そうしたら彼は「ケーキ予約したのに」と言ってくる。

意味が分からない。
帰れと言わんばかりの言葉に、私が従おうとしているのに何を言っているのかと呆然としていたら、予約票を取り出して、テーブルに置いた。

正直、こんなことをしてくれていると思っていなかったら、そこでへなへなと座り込んだ。

「どうしてほしいの、どうしたらいいの」
尋ねてみても、答えはない。

「あのね、あんなことを言われたら帰るしかなくなるよ」
「そんなつもりで言ったんじゃない」

じゃあどういうつもりだよ。
思わず語気が強くなってしまった。
だがその後の彼の言動からして、本当に何も考えないで言葉を口に出しているらしい。

その後も、一緒にいることが嫌だから帰って欲しいと思っている態度ではなかったし、寝ぼけた彼はいつも以上に甘えてきた。

そう。
彼は自分がこういうことを言ったら相手はどう思うか、という想像力もないのである。
言い合った後で「私ってめんどうだよねぇ」と自虐すれば悪びれもせず頷くし、それなら何で付き合ってるの、に対しては無言。

言っておくけど、君が原因だからねと釘を刺した。
愛情表現がないから不安になる。
言葉が足りないから勘ぐり過ぎてしまう。
冷たいことを言われたら傷つくし、その気がなくても不要だって言われている気分だと告げると、素直に「ごめん」と言ってくる。

察する能力と想像力。

これは私の前では能力値がガクンと減っているだけで、他の人に対してはフル稼働しているのだろうと思う。
だから、嫌だと思いきれないし、結局は許そうという気になるから、厄介者だ。

何をされたところで、私が彼を好きだから、すべて許容するほかない。
惚れた弱みという奴だ。


5.彼について

言い合いで分かった彼について書き出してみたが、書いてみても未だに謎が多い。
この説明書は今後も最新情報が出るごとに更新するが、現段階でまとめておく。

・好かれて気持ち悪くないから好きだと思う
・癒される存在で恋人がいるという事実に意味がある
・思っている以上に子供である
・察する力、想像力が低いため、思ったことすべてを言葉にしてしまう
・ただし、言葉に関しては背伸びしている部分が多く、無意識化では甘えたいという気持ちがある

起きている時も甘えてはくるが、無意識下というか、寝ぼけている彼はあれだけ散々言ってきたことはなんだったんだと思うくらいには甘々な態度になる。

少し起きれば抱きついてくるし、私が先にベッドから出ようとするとしがみついてくるし、起きてと声をかければ膝に頭を置いて起きたくないとぐずる。

可愛いの化身になるから、話し合いで分かったのは、彼に言葉や態度で愛情表現を求めないこと。
私が求めれば求めるほど、彼は素直にそれができなくなるようだ。

私は恋人を喧嘩や言い合いをしたことがなかった。
言いたいことがあっても黙って、限界がきて別れるだけ。
私が好きで告白して、相手から好きだと思われていると感じたら別れる。

私も私で十分、問題がある。
上記もすべて彼に伝えたが、「好きになったら終わりじゃん」と言われて、失笑しながら「好きにならないでしょ」と言い捨ててしまった。

私も私で、言葉が足りない部分がある。
だから、彼の言葉もきっと足りない部分が多くて、本心を伝えきれない。
今後、そういう誤解を少しずつ解いていけたらと思う。

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ワタルツバメ
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