見出し画像

歳の差恋愛の真理

なんてもっともらしいタイトルをつけてはみたものの、真理なんてカップルの数ごとに変わるものだ。
これはあくまでも私の話である。
歳の差ほぼ一回り。
今出会って付き合っているからこそ犯罪ではないが、十年前に遡っていたら私は立派な犯罪者になってしまう。
そう考えると、恐ろしい話だ。

私が小学五年生だった頃に彼は産まれたわけではあるが、私が高校生の時に小学生にすらなってなく、私が社会人になってやっと小学校高学年に差し掛かる。
……想像すると、とても恐ろしく、人生におけるタイミングというのは本当に不思議なものだと思う。
私がアラフォーで、彼がアラサーで、だから恋人になることができた。
十年前に出会っていたら確実に好きにはならなかっただろう。そもそもネトゲで出会わなければ、一生出会うことなんてなかった。
ネトゲでフレンドになって恋人にまでなるなんて、出会ったときには思ってもみなかった。

正直な話をする。
初めて出会った時、私はフレンドがいなくなってしまった寂しさを抱えていた。ブキをころころ変えて、強いけれど、どうしても遊んでくれていたフレンドと比べて、漠然と代わりになるのはこの人ではないと感じていた。
でも強いから、たまに遊んでもらえたらいい。
そんなことを考えていた気がする。
SNSのツイートは友達が多そうな若者で、陽の気を感じた。仲良くなれそうにないな。
根っからの人嫌いでコミュ障の私は、ゲーム以外で彼と関わる気はなかった。そもそもゲームのフレンドを作るのは交流がしたいからじゃない。一緒にゲームをしてほしいからだった。強くなりたかった。
彼は忙しそうで、遊べたり遊べなかったりのむらがあった。他のフレンドと遊んだり、変な人と出会ってしまったり。
ゲームをしてくれる人はいないものかと疲れて始めた頃、彼に時間が出来た。それまでの通話で懐いてくれていたのか、彼からも遊びたいと誘ってくれることが増えていた。
強い人に懐かれるのはよいことで、誘われれば出来る限り彼と遊んだし、私も暇なときは真っ先に彼へ声を掛けるようにしていた。
一緒にやると楽しい。アドバイスをくれて、真剣にどうすればいいのかを教えてくれる。
貴重だから、このままずっと、フレンドでいてほしかった。
やっとまともな人とフレンドになれたことに安堵もあった。

関係が変わったのは、彼が酔って通話にきたときだ。
基本的に彼はゲームで怒ることはない。口調は優しく、ゆるふわしていて、聞いていて心地いい。
私は声フェチで、彼の声がとにかく好きだった。
酔っている彼はとてもかわいくて、普段ならゲームが終わったら即通話を切っていたのに、気まぐれに雑談を始めてしまった。
そこから何となく、毎日ゲームの後で雑談をする流れになっていた。
寝るのは大体朝の3時くらい。
眠かったのに、楽しくて話していたくて、健康と睡眠時間を捨てて、彼との時間を捻出していた。
彼女ができるまで、好きな人ができるまではこうして構ってね、と言いながら、眠くてぐずりながら通話を切らないという彼を宥める時間が好きで、気づいたら彼のことが好きになっていた。
そうは言っても年齢は知っている。
11歳下。
恋愛対象にすらしてもらえるはずがないぞと、恋心を自覚した瞬間に諦めた。それでも年齢を言わないでおけば構ってもらえる。話してもらえる。遊んでもらえる。
でも少しずつ少しずつ、年齢を隠して彼と話すことに罪悪感を覚えるようになった。
年齢も何もかも知られたらきっと嫌われるに違いないのに、私は彼に私を知って欲しかった。そのくらい、好きだった。

ネットでやり取りをしているだけで好きにならないという意見もあるかもしれない。
顔を知っていて、声を知っていて、性格や仕事も知っている。
そういう相手の方が安全で、健全な恋愛なのかもしれない。
しかし、相手の人柄を知るのに、ネットもリアルも関係がないと思う。
容姿至上主義な人はちゃんと自分の好みの相手を容姿で判断して恋愛をすればいいと思うが、そこまでこだわりがなければ、中身から知ることができるネット恋愛はおすすめだ。
柔らかで優しそうな声。
穏やかな性格。
口調や態度。
そういったものはSNSでのメッセージのやり取りや通話で十分知ることができるものだ。
相手の情報が何も分からない、それでも惹かれあうということを経験した者として、ネット恋愛肯定派ではあるが、それはそれとして変な人は多い。本当に、気が触れているのかという人もいる。普通の人の仮面を被って近づいて、さも仲良しですという顔をして隣にいる。
そういう輩には重々、気を付けて欲しい。
私がフレンドになったゲームフレンドは半分以上、おかしな人しかいなかった。

本題に戻ろう。
彼を好きになり、隠し事をすることが辛くなってきたある日。
私はつい、好きだと口走ってしまった。墓まで持って行こうと思っていた気持ちだったのに、吐き出してしまったのはどうしてなのかはわからない。
私のキャパがそこで限界を迎えてしまったのだろう。
彼も驚いていたし、私も取り消したかった。
私の好きは結局そのまま彼に届いて、友達でいたかったという私の言葉は彼の説得に負け、付き合うことになった。
今となっては色々と思うところもある。

付き合うときに言っていた言葉は何だったのか、とか。
あれだけ真剣に付き合おうって言ってきたのに蔑ろにしすぎじゃないか、とか。
お金がなくて会えないというならなぜ恋人になることをあんなに押してきたのか、とか。

私には私の考えがあるように、彼には彼の考えがある。
彼はまだ若く、社会人経験だって数年だ。
私はお金はないとしても、社会人経験だけはある。
だから、多少向こう見ずでも、言ったことが守れなくても、言っていることがころころ変わっても……許すことにしている。
惚れた弱みだ。
最近思ったのは、恋人ではなく推しとファンの関係性と捉えると、辛くなくなるということに気が付いた。
歳の差もあるから、それが正しいことのような気がして、最近は不安になっていた心が凪いでいる。
そうは言っても、会話にジェネレーションギャップがあるかと言われたら、そんなにない。
ネトゲで出会って、彼は私の青春時代に流行った曲が好きらしく、音楽の趣味も合って楽しい。
アニメ、漫画もお互い見るし、ゲームもする。
時々難しい言葉を話していてわからないことがある、と言われるが、。私としては難しい言葉を使っている意識はない。癖のようなものを変えることはできないから、その都度ググってくれとお願いしている。

結論。
歳の差恋愛はうまくいかないと言われがちではあるが、うまくいくこともある。
多分、そこまで意識しないほうがいいのかもしれない。
私もやりがちではあるが、自虐はよくない。彼の隣にいるときはニコニコして、楽しそうにして、声を弾ませて。
年齢なんて気にせず、「恋する乙女」をしているだけでいいと思う。
その方が自分も楽しいし、相手も楽しんでくれる。
いつ終わるともしれない恋ではあるが、恋とは総じてそういうものだろう。
いつだって楽しんだもの勝ちなのだから。

いいなと思ったら応援しよう!