【1000文字小説】片付け大魔王とコーヒーカップ
誰にでもこだわりはあるっていうお話。
わたしは、おせっかいが過ぎて仕事を辞める羽目になってしまった。
同僚と新人社員と派遣さんに、おせっかいをしていたら自分の仕事がおろそかになり、残業したら残業が多すぎると言われた。みんなは定時に仕事を終わらせることができるのになぜわたしだけ残業なのかと上司に言われ、すみませんというほかなかった。
おせっかいだから、誰もかばってくれるわけでもなく、結局肩をたたかれた。まあ、退職金がそこそこでたのでよしとしよう。
で、次の仕事を探しつつ、一人暮らしの部屋を片付けていたらすっかり「片付け大魔王」になってしまった。
別名断捨離やりすぎまたは殺風景すぎる部屋に住む女。
片付けすぎて、部屋にはほぼ何もないという状態を作ってしまった。あんまりにも殺風景なので、ひさしぶりにテーブルを買いに外出した。
仕事を辞めて、母親は心配してるみたいだけれど、なんとか一人暮らしは続けられるくらいの蓄えはある。
気に入ったテーブルが見つからないので、別の場所へ行く前に、トートールコーヒーショップで休憩。
チェーン店だけど、どのお店に行っても店員さんは丁寧でとても心地いい。つい長居してしまう。
で、今日もアメリカンのSサイズとミルフィーユを注文して、ゆっくりとコーヒーを飲みケーキを食べた。
セルフサービスのお店なので、食べた食器はカウンターにもっていく。
カウンターの上には、いろんな人が置いたカップや食器が並んでいる。
アイスコーヒーのグラスもカップとソーサーもぐちゃぐちゃ。
というか、間開けすぎて下げ口のスペースがいっぱいで、わたしのトレイを置く場所がない。
なので、グラスとカップを区分けして、トレイも大きさの同じものは重ねて、ゴミは紙とプラを分けて、自分のトレイを置くスペースを作った。
その時になって、内側からやっとグラスやソーサーやトレイを下げてくれた。
グラスやソーサー、トレイを内側に寄せてから、その場を離れた。
トートールコーヒーショップをでてから、わたしはわたしにちゃんと言ってあげる。
あーあたしってば、えらいわー、今日。
もー誰もほめてくれないけど、あたしはあたしは、がんばったわー、いいことしたわー、役に立ったわ。
えらいぞあたし!
今日も満足度は100%!
片付け大魔王は家の外でも片付け大魔王になるのよ。
きっと明日は仕事が見つかる。
はず。
完
※「1000文字小説」は、完まで含めて本文のみタイトル含まずぴったり1000文字の小説です。
※この物語はフィクションです。
実在の名称・団体・個人とは一切関係ありません。
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