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となりのアライグマ その3「アライグマの手のひらの秘密」
前回「アライグマが日本で生きていけるのはなぜ?」で、アライグマは両手で物を水につけて洗う習性があり、水辺が大好きだというお話をしました。今回はその理由についてお話します。
水辺を中心に行動するアライグマ
野外のアライグマの行動を観察しているうちに、アライグマは水があるところを中心に移動していることがわかりました。
アライグマが好む環境で、特に重要なのが「水と斜面地、高い木」と言われています。
水を飲むことは、動物が生命を維持していくために不可欠で、すべての生物たちにとって重要な行動です。水辺はオアシスとして、多くの生物が利用する環境です。
でも、アライグマは水を飲むこと以外でも水を必要としています。その行動に水が必要なため、アライグマは水辺を中心に移動を続けるのです。
アライグマは「洗いグマ」
では、その行動とは何か。「アライグマがする独特の行動」と聞いて、みなさんが真っ先に頭に浮かぶのが「物を洗う」しぐさではないでしょうか。
▲前肢を水につけ洗うしぐさをするアライグマ
水の中で前肢を使って物を洗うようなしぐさは、人と同じような行動をしているようで、大変可愛く見えます。このしぐさから「物を洗うクマ」となり、「洗いグマ」の名がついた・・・とされています。
ただ、観察をしていると、アライグマは物がなくても、洗うような行動をすることがわかってきたのです。
アライグマが川沿いを移動している時、頻繁に前肢を水の中に入れる行動が観察されています。アライグマが前肢をつっこみ、洗うようなしぐさをしていた場所を何度も調べましたが、物の痕跡は見つかりませんでした。
また、食事の後や木登りの後など、前肢を使った行為をした後に、洗うしぐさをすることが、頻繁に観察されました。
それらの情報から、私は「アライグマは物を洗うのではなく、前肢を洗っているのではないか?」というひとつの仮説を立てたのです。
飼育個体の実験でわかったこと
アライグマの行動は、まず最初に前肢で触れることから始まります。狭い隙間や暗渠(あんきょ)のパイプなどにも躊躇せずに前肢で触れて探ります。このことから、かなり前肢に頼って行動をしていることがわかります。
▲細い穴の中でも躊躇せず手を突っ込むアライグマ
さらに私は、飼育個体のアライグマから得た過去の実験データを再確認しました。そこで、仮説が確信へと変わる行動を見ることができたのです。
飼育個体のアライグマに様々な食べ物を与えて、その行動を観察する嗜好性の実験の時のことです。
アライグマは、大半の食べ物を前肢で触れてからケージ内に取り入れて、念入りな確認をして口へと運んでいました。
しかし、ピーナッツクリームを与えた時にのみ、特異な行動が観察されたのです。
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