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別れの理由
どうでもいい夢を見た
本当に、寝覚めの悪い、どうでもいい夢だった。
元夫との離婚話で揉めている時の夢だ。あった事のおさらいをするような夢で、突拍子のない妄想が横やりを入れたりする事もなく、淡々と流れていく時間を眺めるような夢。一語一句、違いがなかった。
ただ、私は、何を言っても首を縦に振ってくれないので「好きな人が出来た」だとか「子どもに愛情がない」と言ったりもした。その発言が後々自分の首を絞めるだろうと判っていても、それしか、残されている言葉がなかった。あんなにも誰かと離れたいと思った事はなかった。だから、夢に見る。
本当の原因は
離婚に至った本当の原因は日々の蓄積された鬱憤だ。それがご理解頂けなかった。いつのまにか生活上の担当が当たり前に割り振られてしまう事や、だからと言ってそれら抱える苦痛に耳も傾けて貰えず、何かにつけては
「仕事が忙しい」ときて「誰に食わして貰ってるんだ」となり「じゃあお前が代わりに稼いでこいよ」等という極論に至る。いつもそうだった。
慣れというのは怖いもので、誰と会って接していても必ず忘れないようにしようと思っている事がある。
(夫婦)に絞って考えるのであれば元々男女としての発展形であり、元を正せばただの一個人だ。初心忘れるべからず、で、その人にはそれまでもあれば、今もあり、これからもある。これは友達でも、なんでもそうだ。慣れているから、でぞんざいに扱ってしまうと、場合によっては取り返しがつかない状態になる事もある。よく知っているから、慣れているから、で言葉を投げたり勝手な行動をしてしまうと相手を傷つける可能性も出てくる。そういう意味で、初心を忘れないでおこう、と思っている。
それをきっと、相手は、はき違えた。わざわざ尋ねたり、許可を得たりしようとするのは、指示指導がないと動けないのではなく、相手の時間や考えている事が欲しいからそうするのであって、何も弱くてそうしているのではない。そこを男は、はき違える。「俺がいないと何もできないんだな」
この、所有的な扱いを女は特に嫌う。そもそも一個人なので、なんでもわかっているようなフリをして物事を進められる事に「はぁ?」となるのは当たり前の話だ。こちらは聞くが、相手は聞かない。こちらはするが相手はしない。こちらは……といつのまにか、こちら側ばかりが気を遣い、相手が自分に気を遣うのが当然、だって妻だもん、のようになっていた事。
例えば好きになって初めてデートに誘ったとする。そんな場面で
「女なんだから飲料水くらい汲んで来いよ」だとか
「ここは俺のおごりだから、お前には発言権はない」だとか
「それが嫌ならここはお前が払えよ」なんて、言う??
言わないでしょーよ(笑)まず、そんな男、受け入れられないし。
そうした細やかな気配りを忘れない為に日ごろのコミュニケーションがあるはずだけど、いつのまにか、それはお前の仕事だろ、俺は忙しい、のようになる。生活上、少しは仕方のない事でもあり、初心すぎると水臭い事になるんだけど、それでも、ぞんざいに扱ってしまったなと気づいた時には埋め合わせのできる人/謝れる人が大人としてきちんとしていて、そういう夫婦にはいつも
【お互い様】
の気持ちがあるので、離婚にまで発展したりしない。
一番いけないのは「仕事が忙しい」という言葉、これは逃げだ。
だいたいその台詞が出る時は、全く別の話題の時だ。話しかけた側からすると
『今仕事の話なんてしてる?仕事が忙しいかどうかなんて聞いちゃいないんですが』
となる。人間面白いもので、例えば仕事が忙しくてもその後に"自分が楽しみにしている"用事があったとして、それでも本当に忙しいのならトイレに隠れてでもリスケを計るし、そこに本当に取り組む姿勢があるのであれば
「今週は忙しいから、その話、来週でもいいですか?」
と言うし、下手して、もし相手が浮気等をしていたら、即時その相手に
「ごめん~。今日なんだけど仕事たてこんじゃってて」
と私たち妻が聞くような事もない"ごめん"を頭につける事だろう。尤も付き合い立ての頃は、"仕事が忙しい"のその内容を聞いてもいないのに、上司の誰々が、同僚の誰それが、等と知らない人間の話題までが出て、どういう環境に身を置いていて、どういう仲間に囲まれていて、どういう仕事に着手しているのかまでをも説明する。
人は好きな相手に自分がどんな人間かを知ってもらおうと必死だからだ。
これが、結婚したと同時に「お前は知らなくてもよい事」となり、「俺の生活や自由にまで踏み込んでくるな」のような対応になる。女が許せないのはここだ。
あなたの何も知らず、私の何をも知らず、身の回りやご飯の支度のみであれば別に私ではなくてもよいのではないか、それなりに稼いでダスキンのお手伝いサービスでも利用すりゃあいいじゃないの、となる。
そのくせ、よそ見をすると体裁が悪いだの、俺という人間がありながら、のように言ってくる部分においては、こちらからすると
「こちらは愛されもしていない。なんなら人権すらない。それなのに、愛してくれとは何事だ」
となる。ふざけるんじゃない、甘えるんじゃない、子どもがいるのに好きな男が出来たから別れたいなんて簡単な話じゃないんだ、好きな事だけで生活が回っているお前じゃあるまいし、というのが当時の私の言い分であり、本音だった。
ただ、別れてくれないので「好きな人が出来た」と言ったのは本当だけど。
早い話、女は母親ではない。
我が家の場合は、子どもが三人いて、ほとんど夫は家にもおらず、右も左もわからないような田舎に連れていかれて、一番上は発達障害、一番下は当時まだ身体の障害があったところ、稼いだお金はお客さんとの飲食にほぼ使われて、他人のFBで蟹を食べたり豪遊しているのが流れてくる始末で、一番下の子の具合が急に悪くなっても頼れる場所も足もなく、上の二人を歩かせて下を背負って雪の中、受診に出向いたりして……急遽の事で持ち合わせもなくて、友達がわざわざ私の口座に振り込んでくれたりもした。
片や出先でどんちゃん騒ぎ、一方こちらはそのお金は家には入らず、幼子を抱えてのどん底生活。もう少しお金があれば、欲しいと言ってたお菓子も買ってやれたのに……そう思いながら一日が終わっていく。
あの状態でこのままこの先が延々と続くと、私は一生こき使われて終わっていくんだろう、と本当にうんざりした。正直、顔も見たくなかった。
大きな仕事が入るから、だからあれも仕方がない、等と毎回のように聞かせられて初めの内はよかったね、と流せもしたが、大きな仕事が入ったところで何もこちらにメリットはないわけだし、恩着せがましく
「今日のその飯は誰の稼ぎで食えてんの?」
等と言われる事にも本当に嫌気がさしていて、顔を合わせると喧嘩になる。こちらの話が通じない。子どもたちが少し大きくなると、あっちこっち出向いてくれていた方がこちらとしてもやりやすく、でも、たまに戻ってきては夫婦関係を求められる事に寒気さえしていたものの、寝ると枕元にお金を置くような人だ。これはやらない手はない!と専属の風俗嬢よろしく目を瞑っていた。夫婦であるのに、抱かれた後に涙が出るなんて、もう戻れやしない。元々、あの関係に戻る場所なんかなかったのかもしれない。
本当に本当に、全てが、嫌で嫌で仕方がなかった。
内情を知っている人には、自分なら絶対に無理だから本当によくやっている、と毎回のように言われて、それをなんとか励みにしていた。とにかく、子どもたちの為に、食いついているしかなかった。
しかし。
たまに戻ると喧嘩になる。子どもがしんどくなる程だ。これはもう別れた方が良い、と思った。でも、離婚を切り出すと子どもにはお金がかかる、その養育費の話になると決まって
「もう赤の他人になるんだから関わりたくない」
とお前たちには一円もやりたくない、という具合だった。この話し合いの時
(お前たちには、というよりも、お前には、だろ?)
を見抜いたので、子どもたちの進学やこの先を考えた場合、私は体が安定もしていないし早くに死ぬ可能性もあるので彼女たちが路頭に迷う、あの子たちに最低限を確約できるとしたら、私が手を引くべきだ、と思った。
ここが多くの人に誤解されている部分でもあり、当人も誤解している部分でもあるだろう、と思っている。
気になる人はいたけれど付き合ってはおらず、子どもに愛情がないわけでもない、ただ、別れたい!ひたすらお前が嫌いなんや!が通らない場合は、なんだって言う。
途中から、大きく考えも変わった。
一緒にいる事が愛情だと思っていたものも、例えば災害や戦争の時、その輪の中にいると支援はできず共に救援を求める形となってしまう。
離れているからできる事、も、きっとあるはずで、それが常にできる場所に身を置けばよい、と思うようになった。
その後
ようやく離婚も成立し、あちらはちょっとした有名人だったので、youtubeで私の陰口を垂れ流し、私は「男にしか興味がない」「子どもを捨てた女」として広く知られる事となったのだが、そんな誤解は別に良い。好きに言って欲しいと思う。
長い目で見た場合、そんな事も本人である私と、何よりどういう心情で一旦身を引くかを子供たちが理解しておいてくれればよい話。
離婚してすぐ後はその年の年末まで私が三人の子を引き取りながら仕事もフルタイムでしていたけれど、職場にも恵まれず、体も壊すし、まだまだ三番目に手がかかる、その状況で限界があった。
長女はもう手伝いも出来る年齢だったものの、引きこもりの酷い時期で、昼夜逆転の生活を送っていたし、悲しい事に、家の事をするのは母親だけがして当然の事、と悪い背中を見て育ってしまっていたので、一気に全てが私の重荷となった。
仕事があっても家に帰ると白飯さえ炊かれておらず、洗濯物も沢山ある、その状況で放デイから戻った三女を受け入れるチャイムにも気づかずに寝ていた為に職場の私の方へ連絡が入り
「誰もいらっしゃらなかったので、デイに連れて戻りました。デイまでお迎えに来てください」
電車に乗り、迎えに行き、戻ったら23時手前。次女が気になりつつ戻ると、案の定、お腹がすきすぎて、どうしたらよいのかわからない、のような状況を迎えてしまった。少しは協力して欲しい、と注意をすると、そんなのは親の仕事だろ、子どもを巻き込んでおいて勝手に生活を変えたくせに!と長女が言う。それでとても、悩みに悩んだ。
そのままではあまりに自分が辛すぎる、だからといって子どもの言い分も一理ある。私も昔、感じた事があるのだ。環境の大きな変化に戸惑って、大人が勝手に決めた事に合わしてこいだなんて虫が良すぎる!と。
これが私ではなく、相手が父親であればどうだろう。生活に不慣れな人であるし、預けてしまって心配はあれど、子どもたちは泣く泣く動くだろう。協力する以外に道がなくなる。でも、相手が私であれば、この状況はずっと続く。なんせ、甘えていても全てが賄われるからだ。でも、私が倒れてしまったら、それはそこで急に終わる。何も出来ないまま、してくれる人間が世を去ったりしたら、困るのはこの子達ではないのだろうか……。
多分、あの話の中で、一番悩んだ部分でもあった。
可愛い子には旅をさせよ、で、いつでも支援できる場所に生活を構えればよい、そう思った瞬間だった。これは私ではない方が、この子達にとっても良い。まずは大きく変わる、不変な物などこの世にはない、その代わりに何か困りごとがあればいつでも受け入れられる体制だけは作っておこう、と決めて
「では私だけが出ていくという形、それならでいいですか?」
と言った。思った通り、あちらは、私にはお金なんて払いたくないものだからそれでよいと言った。だからそうした。結婚中でさえ、私にはお金を使いたくない人だった。別れたら余計だろう。泣かそうが何をしようがうるさく出てくる親もいないし、死んだら死んだまでだ、というような対応をずっと続けられていたので、別段、驚きもない。
さて。
家を買う、というのは、千円や二千円で手に入るものでもなければ、今後の事も考えて、安くで広めの場所を選ぶ事が最善となるものの、それもあって地域は限定的となった。どう転んでも狭くて高い敷地でしか手に入らない場所だが、彼女たちがいる限り、仕方ない。
そういう事もあって離婚後に正式に付き合う事となった今の新しい旦那様と話し合って、今の場所に住居を設けた。
当然、新しい旦那様は私よりも一回り以上年下なので、こちらに彼女たちを呼び寄せてしまうと、私が先に逝くであろう事となり、そうなった場合、私たちの間には子供はおらず、全くの赤の他人の子を彼が独りで養育していく事となってしまう。それは、両者お互いの事を考えても、良い判断とはいかないので、あの子たちは私の一部ではあるものの、一緒にはおいてはおけないので、ただ私の心づもりとしてどうであるかは聞いておいて欲しいとし、理解のある人だったので、ではその条件で家を探しましょう、と快諾してくれて、いまがある。
夫婦間の問題とは
こうした他人にはわからない事情というものが夫婦間にはある。芸能ニュースで、誰それが離婚!子どもが可哀想!だとかそういう事を平気で口にする人に反吐が出る。
あんた達は赤の他人で、当人にしかわからない事情もあれば、相手も有名なだけあって互いの名やその先を汚すような事があれば大問題だから多くを語らないでおこう、としているだけだ。
そうした矢面に立たされる事のない人間が寄ってたかっていかにもの正義で物を言ってる、だからお前らはそこ止まりなんだよ!といつも思いながら眺めている。
人にはわからない事情があるものだ。わかったように口にするなんて、やめておくがよい。実際、逆だったら、離婚や結婚のあれこれを、何が原因だったかなんて赤の他人に四の五の言われたいと思うか?心配はすれども余計な事には口を挟まない、それが人として正しいと思うんだがどうか。
私はそれをされた。本当にばかばかしい話だ。
家庭や家族の事は身内しかわからない様々がある。何より離婚に至るのは昨日今日に決めた事ではなく、誰かの中に言い出せず悩んで苦しんで、長くそこにあるものだ。昨日今日知った奴がずっと連れ添って話を聞いてきたわけでもあるまいし、知ったような口を叩くな、と思う。
最近の事
この状態になって、長女は良く学び良く働き、次の大学への進路で悩むまでになった。今までの生活態度もどこかで申し訳ないと思っているような仕草もたまに見せる。私に謝る必要はないけど、ただ、引きこもって過ごした時期は勿体なかったよね、と思うだけだ。その日はその日しかないし。
次女は来春受験を控えていて、春夏冬の休みにはドサッと宿題を持って長期遠征で我が家に出張、三女は毎週末くらいに家にやって来る。
周囲からの誤解があるものの、全て、長期戦だ。
長い目でみて、一番よい方法を選んでいくしか私にはできない。
夢占いによると
誰かに誤解される夢は人間関係の不安や、誤解になってしまったままのあれやこれをきちんと説明したいと思っている時にみる、と夢占いに書いてあった。たまに子供たちと話すと、何かをぽろりと口にしては、あ、しまった!というような顔をする。私はいつも
「あの人は私の事が嫌いだし、傷つけられたと思ってるからね」
と笑う。誤解されたままでもよいけれど、実際には多分、どういう意味での別れの決断だったのか、本当のところは知らないままだろう。知らないままでも私は今が幸せなので、問題ないし支障はない。夢占いは、時として、外れる。
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