『永遠のピアノ』シュ・シャオメイ
📕『永遠のピアノ』シュ・シャオメイ
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友達の奈穂子さんに薦めてもらった本です。
読み始めたら止まらなくなり、3~4時間くらいであっという間に読んでしまいました。
40歳でプロデビューをした中国人ピアニストの自伝(ノンフィクション)です。
幼い頃からピアノの才能のあった著者は、北京でトップの音楽学校に入学。
しかし当時は文化大革命が始まっており、西洋の音楽は「悪」として粛清され、
著者も時代の波に飲み込まれ、収容所に入れられてしまいます。
必死の思いで、隠れてピアノを弾き続け、
無事に解放され自由になった彼女は、アメリカ、そしてフランスへ。
芸術を「ビジネス」と捉えるアメリカと、
「人生を豊かにするもの」としてリスペクトを払い、芸術家を保護するフランス。
二国の文化の違いも興味深いタッチで描かれています。
著者のシャオメイさんは、西洋のクラッシックの演奏を得意としながら、
中国古来の哲学にも造詣の深い人。
彼女は全編を通して「バッハと老子は似ている」と語りかけてきます。
私も最近、シャオメイさんの影響で、老子関連の本を少しずつ読んでいます。
シャオメイさんが紹介してくれたエピソードが次々に出てきて、
改めて、彼女の老子の理解の深さに驚かされます。
自分も中学生の頃、(キリスト教の学校に通っていたので)
礼拝で数回、ピアノを演奏しました。
宗教的な音楽ということで、バッハのインベンションから何曲か練習して弾きました。
西洋のキリスト教徒のバッハが作曲した曲が中国の老子の思想と結びつくとは、不思議で、
世界は大きく、奥が深く、国や文化は違っていても、
人間の崇高さはつながっているのだな…と感動を覚えました。
また、本編と直接関係ないかもしれませんが、
途中でビクトル・ユゴーの書いた手紙が、著者に紹介されています。
内容は、「中国に蹂躙し、遺産を破壊し、植民支配したフランスとイギリスは、
自らの過ちを認めるべきだ」と、帝国主義を糾弾しているものです。
著者によると「本国フランスで有名ではないが、中国では有名」とのこと。
この本はフランス語で書かれ、フランスで出版されているようですが、
ビクトル・ユゴーのこの文を載せるフランスの出版社の理性と勇気にも敬意を払ってしまいました。
自分の国の過ちを認めることは、どの国にとっても難しいからです。
ユゴーは『レ・ミゼラブル』の作者としてしか認識していませんでしたが、この手紙の名文を読んで、彼が偉大な文学者と称えられる理由がよくわかりました。
時々、シャオメイさんのピアノ演奏をYou Tubeで聴いています。
彼女のピアノには、魔力のように惹きつけるドラマティックさ、情熱があり、
聴き込んでしまいます。
『ワイルド・スワン』や『三体』の第1巻を彷彿とさせ、
音楽の素晴らしさをズシンと伝えてくれる本でした。
奈穂子さん、おすすめありがとうございます!