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「おもしろい」の正体、知りたくない?

「何回観れば気が済むとね」

大団円のあとのエンドロール。「君をのせて」を口ずさみながら、ビデオテープを巻き戻す。
頭から再生しようとしていたら、いつのまにか台所から出てきた母が包丁を持ったまま呆れていた。

「だっておもしろいんだもん」

おもしろいからまた観たい。

同じ作品を繰り返し観るのに特別な理由なんてなかった。

おもしろいってなんだろう


おもしろいと感じるなら100回でも1000回でも観たい。

この気持ちは大人になった今でも変わらない。
母親に呆れられながらずっと観ていたジブリ作品は、大人になっても大好きでよくレンタルもした。

当時、あまりに頻繁に借りる私をみて、妹が見かねてDVDを買ってくれたほどだ。


「また同じの観てる。そんなにおもしろい?」
「よく何回も観て飽きないよね」
「なんでそんなに何回も観るの?」

これまでに、何回も聞かれた。なんで、と聞かれても理由なんて考えたこともなかった。
そもそも「おもしろい」ってなんだろう?
なにに対して「おもしろい」って感じているんだろう?

私は「おもしろい」の謎を解くことにした。

いざ、ストーリーカレッジへ!

「今ね、ストーリーの勉強してるんだけど、おもしろかよ~!」

仲良しのまゆみにストカレに入ったことを話すと、やれやれ、また三日坊主がなにか始めたな、と半分呆れ気味に聞いていた。テーブルのクッキーに手を伸ばしながら、

「あんたも色々よくやるね……」

と一言ぼやいている。さっきまで煙を上げて職場の愚痴をまくし立てていた人物と同じ人物とは思えない。でも毎度のことなのでお互い気にしない。

それよりなにより話を続けたい。さっきまで散々仕事の愚痴に付き合ったんだ、今度は私の話をきいてもらおうか。

「講師の先生ね、現役の脚本家でね永妻先生が脚本書いた『ほとぼりメルトサウンズ』って映画Amazonでも配信されてるんだよ、その先生が講師してくれてしかも3ヶ月間添削もしてくれるってすごくない?現役の脚本家の先生に自分の文章見てもらえる機会なんてたぶん一生ないよ!講義は6回だけどそれプラス補足講義とか特別講義とかもりもりあって情報量すごいし消化しきれないくらい濃ゆ~~~~~い講義だしやりがいしか感じん! 一緒に講義を受ける人達もWebライターとかシナリオライターとか自分でお店やってる人とか色んな人がいてなんかおもしろそうな人ばっかりじゃろ!?」

「……お、おぅ……あんたが楽しいならなによりじゃない……」

さっきまですごい剣幕で職場の愚痴を捲し立てていたまゆみを「テンション高いなぁ」と見ていたが、私もたぶんこんな顔をしていたに違いない。若干引いているような気がしないでもないが、ストカレのワクワク感と楽しんでる気持ちを全力で伝えられて私は大満足だ。

実際に毎回講義の時間はあっという間に過ぎた。
自分を棚卸ししてストーリーを探す講義。
三幕構成を使った自分だけのプロットの作り方。
電子書籍出版に向けた章立てや本文の添削。

毎回、聞くこと、知ることすべてが新鮮でなにもかもが鮮やかだった。

「おもしろい」の正体

ストカレの講義が進んでいく中で、少しずつ「おもしろい」の正体も明らかになっていった。

・ストーリーの流れの作り方
・人を引き付けるキャラクター像の作り方
・ストーリーを作る上で重要なポイント
・ストーリーを更に盛り上げるためのスパイス

ストカレのゴールは電子書籍を出版すること。
それなのに私ときたら電子書籍を出版するためのノウハウよりも、先生が講義の合間に小話的に教えてくれる「脚本家直伝テクニック」に夢中だった。

ストーリーを盛り上げるために使えるちょっとしたテクニック。
観てる人が応援したくなるキャラクター、嫌いになるキャラクターの作り方。
セリフだけでキャラをかき分けるコツ。

作品に触れて「おもしろい」と感じていたものの正体が、永妻先生のこぼれ話の中に紛れ込んでいる。話を聞いて「おもしろいの正体はこれだったんだ!」と腑に落ちた。

それがわかっただけでも、私はストーリーカレッジを受講してよかったと心から思う。

「納得」と「ゆだねる」のあいだ

これで私もスラスラとストーリーを書けるようになって、電子書籍まで出版できました! と書ければストカレの卒論としてもいうことなしなのだけど。
まだ、電子書籍は出版できていない。
ストカレでは永妻先生の添削を直にうけられる。すごく貴重なことだ。

「自分の書いたものがつまらなすぎて、こんなの人に読ませたくない!って思ったら一生完成しないんだよね……」

ストカレを受講中、同期の友人にオンラインお茶会に誘われることがあった。その度に同じことで悩んでいる私に、

「時間を決めてそれまでやって、時間になったらもう出す」

講座で一番のスピード感を持つ友人はこういった。

私は自分が納得していない文章を人に読まれるのがどうしても嫌だった。これまで何度も書いたけれど、気に入らなくて下書きのままずーっと眠っているものも山程ある。

よくないよなぁ、と思いながら下書きを引っ張り出して書き直してるうちにまたドツボにハマってお蔵入り。
だからnoteもブログも更新頻度が低い。
悪い癖だと思いながらなかなか直せなかった。

ストカレに申し込んで、少し、変わったと思う。
友人のアドバイスもあって「納得」と「ゆだねる」の間を、少しずつだけどさぐれるようになってきた。大体プロでもない自分が「納得できない」からといくら直したところで私の文章など、たかが知れている。それなのに生意気にも自分が納得できるかどうかにこだわってきたのは「そのときの最高を見せたい」気持ちが強かったからだ。

ただ、文章は一度世に出してしまったらあとは「読み手のもの」で、どう受け取るかは読み手の自由。

作者が納得して書いたものであっても、読み手にとってはつまらないかもしれないし、逆もまた然り。
自分が読み手の立場になって考えてみる。
作者が「納得して書いたかどうか」なんて、知りようがない。

今までに何百、何千回と観てきたジブリ作品だって鑑賞しながら「これは宮崎監督が納得して作ったんだろうか」なんて、ただの一度も考えたことはない。

おもしろかったらそれでよくない?
読み手として考えたら、この一言に尽きる。

それに「納得しているか」に関係なく、自分が想像していたこととまったく違う反応をされることも結構多い。

「いや、面白いと思いますよ」
課題で書いたnoteの記事を、永妻先生にほめてもらったとき。同期の仲間から感想をもらったとき。自分ではあれでいいのかまったくわからなかった。自分なりに精一杯のつもりで書いたけれど、それが正解かどうかは1ミリも自信がなかった。

ただ、プロの脚本家の先生に「おもしろい」と言ってもらえたのが自分でも驚きだったし、読んでくれた人から感想をもらうのは言葉にならないくらいうれしかった。

思い切りよく投げてみて、あとは読み手に任せる。

もっとできるようになりたい。

「おもしろい」のその先に待つのは

ストカレ最後の課題。

電子書籍の出版。
ヒーローズ・ジャーニーでいう「最大の試練」。

最大の試練を乗り越えこのストーリーを終わらせること。
課題の添削期限まであと105日。

それまでにストカレで学んだ「おもしろい」を私なりに形にしたい。

そして「電子書籍を出版しました」とポストする。

言っちゃったからにはやるしかない。
今とてもドキドキしている。




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