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つむじかぜ

「一瞬で恋に落ちて、次の瞬間には恋人同士になる。そんな恋をしたことはありますか?」

午後2時の喫茶店、きれいなステンドグラスの光の入る窓際の席で、メガネ越しにキラキラした瞳でそう聞いてきた君。僕は、ガラスコップに入り込んだ色を見ながらこう答えた
「ありません」
「――僕もありません」
君は自分で答えたあとに肩を落とした
「つむじ風のような恋という言葉の響きが、なんだかとても良かったので……」
言い終えてすぐ、ストローを唇で挟んでミックスジュースを飲む君
少し気まずくて質問をしてみた
「夜は何を食べたいですか?僕は牛丼という気分なのですが」
君はジューズに向けていた視線を僕に移して一瞬ぽかんとしていた
「僕はラーメンという気分なのですが」
惜しい。近いようで遠いような、遠いようで近いような、なんだか少しもどかしいこの感じ。
ぽかんと見つめ合ったまま。
グラスの氷が溶けてからりと音を立てたら、僕らは再び飲み物に手を伸ばした

つむじ風のような恋とは、どんな恋なのだろう

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