居場所
ある日の午前中
森の中に入って空を見上げると、水滴が落ちてきた
湿った空気の肌感と、視界を狭める霧と、葉っぱに溜まった雨水が落ちて織りなす様々な音と、君が湿った枯れ葉を踏む音と、体力のない僕の息の上がった呼吸の音と。
喧騒から離れている癒やしと、急に覚える寂しさと不安
僕らの居場所は見つけるものではなく、本当なら最初からどこに居てもいいはずなんだと君は言う
いつから居場所を探すようになってしまったのか
“桜は明るいものだと思っていた”と誰かが言った
そんな風に……
人の数だけ居場所はあるはずなのに、こうも探して森の中まで歩かなければいけないなんて
――それから、僕らは誰かの居場所になれているのだろうか
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