小さな世界
閉じこもった世界に、君はいる
古いアパートは銀色のアルミサッシの窓枠で、君はその窓を半分開けてぼんやりと外を眺めている
左手には単行本を、人差し指を栞代わりに挟んで持っている
僕は畳に座って珈琲を飲みながら君を観察する
君は無口な方で、笑うときも大きく笑うことはない
その理由を僕は聞かない
君の前髪が少し湿ってきたように見える
世界は一つではないよね
そう呟いてから、君は手に持った単行本に再び目を落とした
人の数だけの世界の広がり方をしている
同じものを見ていても、自分に広がる世界は違っている
僕らはそれを抱えて生きている
大切に、濁らないように
濁っても、大切に
今、外に雨が降っていることが、僕らの共通点