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葉巻でGO!

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■この記事は2023年10月開催されたイベント「第6回A40」において、サークル遊嬉楼の同人誌に虎舌庵名でのせた記事を整形、誤字訂正したものです。限られた知識経験と少ページで実際に愉しむまでの具体的な段取りに苦心した覚えがあります。結果として葉巻の歴史や種類、周辺の知識はバッサリ切り捨てた内容になりましたが、初心者が迷ったときに何をどうすれば良いかの手引きになるよう工夫はしたつもりです。実際の冊子にはメンバーのRENさんに葉巻を嗜む女性や女体化キャラの素敵な挿絵をいただいておりました。


         葉巻でGO!
                      Kaname Tsubaki

・諸君葉巻はどうだね!
 近年我が国も政経界の思惑に乗せられた嫌煙ブームが猖獗を極め、愛煙者には煩わしいことこの上なしである。指定の場所ですら火を付けようものなら正義のヒステリー持ちが態々乗り込みけたたましく非難し出すこともありその有様はまさに受難である。

 だがいつの世にもうっかり者はいるもので、つい小説や映画、アニメや漫画のイカした煙草のみを目にしてしまい「あぁ、アタイも物憂げに紫煙を燻らせながら世の儚さ無常を憂いてみたい…」とシビレ、如何にすればスモーカーへの第一歩を踏みだせるのかと考えるも喫煙する知人はなくただウロウロと思い悩む子羊が今日も何処かで身悶えしているに違いない。

 そこで今回かくの如き悩める喫煙入門者のため、ひとつ分かりやすく門の叩き方道の歩み方をやってみようと思った次第である。

・煙草も色々あるよね!
 
「紙巻(手巻き)、葉巻、煙管、パイプ、水煙草」等々一口に煙草といってもその種類は歴史や地域により多種多様である。また使用する葉の品種や吸い方も合わせればまさに無数、とてもこの紙面で語り切れるものではない。

 よって数ある煙草の中でもダントツに見栄えが良くほどほどな手軽さで始めることができるアイテムとして葉巻を取り上げてみたい。ちなみに英語では葉巻:Cigar(シガー)、紙巻きCigarette(シガレット)と表記されるがここでは専ら葉巻としていく。

 時に葉巻と言えば諸氏はどんな人物が思いつくだろう。小説映画ではギャングやマフィアの悪党、西部劇のニヒルなガンマン、有閑上流階級の紳士あたりがイメージされ、最近のアニメや漫画ではバッカーノ!の愉快な面々、ブラックラグーンの姉御ことバラライカ、ヘルシングのヴァンヘルシング卿や英国の重鎮達が嗜んでいるシーンが浮かぶのではないだろうか。

 そんな彼らのように粋に葉巻を吹かすだけでなく、豊かに香る煙や味わい深い旨さに近づく実際を全くの初心者でも最速で叶えられるようこれからできる限り分かりやすく解説していきたい。

・その前に!
 先にも述べたが現在喫煙を取り巻く状況はかなり厳しいものがあり、喫煙行為をまるで犯罪のように扱う極端な一部の勢力まで現れている。

 しかし喫煙は成人に認められた娯楽の一つであるし、また健康への害など因果関係が未だ不確かなこともあり行為自体の是非はここでは対象外としておく。勿論未成年の喫煙は禁止されているし喫煙不可を指定されている場での煙草も当然アウトである。

 以降そのような常識範囲の心得を前提とし本文を楽しんでいただくよう心よりお願い申し上げる。

・早速本題に!
 葉巻にも様々な種類やサイズがありその値もピンキリ、さらに所作や道具まで考え出すとあまりに広く限りがない。そうしてまごついてばかりでは何時までも先には進めない、よって初心者も最速で嗜めるよう決め打ちで紹介をしていきたい。

 巷では初心者こそまず最初に上等な本格を吸って葉巻の旨さを知るべきという意見も聞くが、一本千~一万円近くする上に保管にも注意の必要な高級品を直接指導もなく初めての人間が上手く吸えるとはとても思えない。
 なので取り敢えずここで概要を把握し、その後に自分の嗜好に合わせ都度試しながら手を広げた方が宜しきにかなうとする。

・必要なもの!
 葉巻:大まかにプレミアム(熟練職人が上等な葉を一枚一枚手作業で巻き仕上げており高価で保管に温度湿度の管理、熟成などの知識や設備も必要)と、マシンメイド(機械を使って作られており中心は刻んだ葉が入る。割に安価で保管状態をあまり細かく気にしなくてもよい)があり今回は後者で。
 着火装置:今回は通常使うガスライターで。(マッチは短いと着火まで保たなくオイルライターは臭いが葉巻の香りを損ねると敬遠されるが好みなので気にならない方は可)
 灰皿:途中休むのに葉巻を乗せ置けるものが便利。
 飲食物:口直しをしたり共に味わいを愉しむ。甘いコーヒーや果物ジュースなどが手軽。
 時間:紙巻きと違い手軽なものでも二十分程度、ものによって一時間は吸えるので十分な余裕を持ちたい。

 最初はこんな所でOK。葉巻以外はスーパー、雑貨屋で入手できるし既に持っている道具があればそれを使って差し支えない。

・状況開始!
 さて、ここからは葉巻の入手から吸い終わるまでの実際を順次示していこう。

 ①訪問…まずは葉巻の扱いがある喫煙具等専門店を探す。街角の小さなたばこ屋には置いていないことが多いので検索サイトやネットマップで専門店を見つけよう。
 
 どうしても行動可能範囲に見当たらない場合は通販利用もよいが、このままスモーカーにクラスチェンジしてしまうこともあるので今後様々な相談や注文ができるお気に入りの実店舗を確保した方が何かと便利である。初心者に吸い方やおすすめを教えてくれる優しい店員さんがいれば尚よし。

 まれに初心者を小馬鹿にし嘲笑する不良店があるのでその時は相手にせず無視し即座に出よう。(常連と強面以外にこれをやる店が実際ある)

 ②購入…店員に相談できたなら後はそこで教えを請うていけば良いのだが、相性もあり今ひとつ話しかけにくかった場合のためにここで二つの銘柄(価格は執筆時のもの)を紹介しよう。これは箱買いだけでなくバラ売りをしてくれる店もある。

 GLORIA(グロリア)一箱五本入り1,150円:昔は日本国内で作られていた伝統ある葉巻。玄人からは味が薄い、スカスカと言われることが多いものの日本人に向けて考えられた味わいはとても穏やか。香りも柔らかく味は渋めで甘みも大人しい。喫煙経験自体が少ない人にも入りやすいと思う。およその人が想像する葉巻の形。

 TOSCANELLO(トスカネロ)一箱五本入り1,150円:こちらは逆に香りや味が強め。吸口は細く先が太いコニカル状の見た目がとてもユニーク。
 風味に数種類あり初心者はバニラかカフェが吸いやすいと思う。アニスは香りが好きな人以外には甘草臭が強すぎるし、グラッパは吸い慣れていないとまずその良さは分かりにくい。クラシコは一本の価格は高いが両先端が吸口になっており、真ん中を鋏などでぶった切り二人で仲良く吸える変わり種である。
 このシリーズには独特の甘草のような香りがあり人により好き嫌いがかなり出るのではと思う。しかし巻きがコチコチに堅く多少ラフにくわえても葉が解けたりせず、またとても小振りな割に三十分はゆるゆると吸えかつ煙草としても強めであり好みに合えば手軽で便利である。

 ③着火…箱を開けると香りが漂ってくる。堪能したら一本を取りだし早速火をつけてみよう。用語として吸口の方をヘッド、反対の着火側をフットと呼ぶ。
 ちなみにプレミアムでは吸口に葉が巻かれておりシガーカッター等で口を切るのだが、今回は既にカット済みなのでそのまま着火に移る。

 本体が地面に平行になるようヘッド側を持ち、フットの断面をガスライターの炎側面に当て炭化させるように回し均等に炙る。この時あくまで面を炙るのであって本体の表面を大きく焦がしたり面の片側だけ燃えてしまったりすることのないように。
 面円周に一㎜程白く灰が見えたらほぼ火はついているはず、ここで軽く吸って口に煙が来ていれば十分である。

 ④持方…火傷せぬよう保持するだけなのだが折角の趣味娯楽、ここは見栄え良くいきたいもの。スタンダードな例を挙げると人差し指を鉤状に曲げそこに本体を挟み、握った中指にその先を乗せヘッド側の側面を親指で支える持方がある。そうして吸口を軽く口の片側に挟むもしくは当てて口元を隠すように吸えばOK。噛み込んだくわえ煙草で口が半開きといったみっともない真似は避けられたい。自分のスタイルが決まるまでネット検索や鏡で様になるようチェックするのも良いだろう。

 また吸う時はできるだけ唇の外側を使い唾液で濡れないようすること。紙巻きのようなフィルター部などないので直接葉がふやけて巻きが解れてしまい葉巻が台無しになる。

 ⑤吸方…さていよいよここから実際に味わう段に入る訳だが慣れぬ行為はなかなか上手くいかないことが多い。しかし何本か消費するうちには必ず美味しく吸えるようになるので焦らずじっくりトライして欲しい。

 早速先に述べた要領で手に持ち軽く口にくわえてみよう。次に吸口から燻された気体を吸うのだが、この時一般的なフィルター付き紙巻き同様に強い負圧をかけて目一杯吸引したりしないように。でないとフィルターで軽減されていない濃密な気体が直接口や喉に入ってしまい大変である。

 両切りを嗜んだことのある人なら大体のこつはお分かりと思うが、最初のうちはくわえた口の両端をやや開けたまま空気と一緒にフカッと軽く吸って自分の美味しいと思う濃さになるまで口を徐々に閉じたり吸う力を強めたりとゆっくり試していくのが良い。上手くいけば舌で甘さを感じたり軽く鼻に抜いて素晴らしい香りを愉しめるはずである。

 また味わった気体は肺に入れずにそのまま口から吐き出すか鼻から抜く、所謂吹かしが葉巻の基本的喫煙法となる。これは慣れが必要かもしれないがパイプ喫煙のように鼻の呼吸と口の吸引を独立させれば肺に入れずとも吹かしは苦にならぬようになる。

 まれに肺喫煙する猛者もいるが、濃密な気体を肺や喉まで入れると普通はまず咽せてしばらく咳き込み大変苦しい思いをするだけで良いことはない。

 そしてここでも吐く煙を正面に吹き付けたり下唇を突き出し上に吹き上げるような真似は見苦しいゆえ御法度としたい。口には出されずとも愚か者に見られるだけなのであくまでスマートを心がけよう。

 ⑥玩味…どうにか葉巻の豊かな香りや味わいに少しでも触れることができただろうか。吸う力の強さやペースによる燃焼加減で様々な香りや味が現れるのでじっくりと試しながら愉しんでもらいたい。あまりセカセカと吸ってばかりだと口中がエグくなることもあるのでゆったりと味わう方が良かろう。煙は重く濃密でしばらく周囲に立ちこめ漂うのでその香りも大いに愉しめる。

 ひょっとすると巷で過燃焼やクールスモーキングなどの細かい指南を聞いたことがあるかもしれないが、葉巻は吸うことに関してはそこまで神経質になる必要はないのであまり気にしなくて良い。
 ただどうやっても辛いばかりの喫味のものは乾燥しすぎている可能性がある。いかに保管にあまり気を遣わなくてもすむマシンメイドとはいえそこまでいくと全く美味しく味わえずまことに勿体ない。その場合残りは加湿することで回復する場合がある。

 加湿に関してはかなり細かい説明や機材が必要になるのでここではキセルの刻みと同じ簡単な方法を記しておく。市販のタッパーに小皿を置きその中に水で湿らせたティッシュやドリップペーパーを入れ、直接触れて濡れないように葉巻を同封するのだ。個別に包装のあるものはそのままで良い。入れて半日から数日を一本ずつ吸い、味の加減を見ながら試してみる価値はあるだろう。

 しかし普通の水道水で放置するとカビが出たりすることもあるので注意が必要である。精製水を利用する手もあるがそこまでいくとヒュミドール、湿温度計を使い厳密に管理するプレミアムの世界に及んでしまうので、それはまだまだ先に経験と共に学ぶ時期がくればの話になると思う。

 ⑦経過…そろそろ白い灰が長く目立ちだし気になってきたのではないだろうか。灰は当然灰皿に落とすのだが紙巻きのように頻繁に落とす必要はない。ゆったりと吸い灰皿に置いたとき自然に折れて落ちるくらいで十分だ。
 無理にトントン叩いて落とすと周囲に灰が散るのでマナー上も宜しくない。長めになっても折れずに何時落ちるかとどうしても気になる場合はそっと灰皿の底に伸びた灰を当てて静かに回しながら落とすようにすれば良い。

 そのまま長いこと吸い続けていると口の中にえぐみが出始める時がある。旨さを感じられなくなったら一休みし用意した好みの飲み物などで口の中をリセットすると良い。熱いコーヒーやオレンジジュースなどは大抵の葉巻にぴったりだし、その他も濃い味で甘いものなら大体合うのではなかろうか。無論とっておきの洋酒でもかまわない。

 また、もし途中でニコチン酔いと言われる摂取過剰による悪心が感じられたなら、喫煙はそこまでにして落ち着くまで休むべきだろう。

 こうして休憩の合間は葉巻をしばし置いて歓談したり飲み物を口にすることになる。そのために葉巻の置き場があると便利であり、専用の灰皿には必ずその部分がある。また、葉巻を置いておくためだけに作られたシガーレストなるアイテムも存在する。

 余談だが海外の市井映像で葉巻を吸っている男性女性が口中がエグくなるとやたらと唾をそこらに吐きだし始めるのを見るが、流石に自宅であっても日本ではやらない方が無難なのは言うまでもないだろう。

 ⑧始末…吸い始めから二十分も経つと本体もそれなりに短くなったことと思う。葉巻はどこまで吸ったら良いのか?この問いには極論としてどこまででも良いと答えることができる。
 市販の紙巻きのようにフィルターも無いので全て吸っても問題はない。自由になる金の無かった学生時分に友人の一人は勿体ないからと自宅では竹の筒に差して最後まで吸っていたのを見た記憶がある。

 とはいえ美味しく吸えてこその嗜好品であるから必然旨く感じる所までが目安であり、一般論としては紙のリングが巻いてある近辺であろう。大体この辺まで来ると火が近くなり匂いや味がキツくなるばかりで無く煙臭さやえぐみも増すので味が損なわれ、その上熱を持った気体が冷める間も無くダイレクトに舌に当たるため低温火傷をおこししばらくの間舌の痛みや味覚の鈍麻に苦しむことになる。

 故にほどほどの所で余韻を残しつつ喫煙を終えるのが上策である。見た目にしても貧乏くささを感じさせずにすむ訳だし。しかし不思議なことにトスカネロは細くなった終盤から何故か旨味が溢れ出してくるのでやめ時が難しく注意が必要である。ついうっかりして後で舌焼けを後悔することがある。

 さて、吸い終わりを決心したらすることは簡単で灰皿の所定の場所にそっと置くだけである。すると数分程度で煙も昇らなくなりそのうち消えてしまう。
 間違っても灰皿に押しつけて潰したりしないように。これをすると不快な臭いが周囲に広がるだけでなく、もしバーなどを利用していたなら「ここのサービスは最低だった」や同席していた相手に「つまらない時間を使わされた」などといった不快意思の表示になるとされることもあるので注意が必要だ。
 そして吸い殻は消えているように見えて熱がまだ残っている場合もあるので火の始末には十分な注意を払い処分をされたい。

 序でにもし自宅で急用ができ喫煙を中断したい場合のことを述べると、喫煙途中でも上記のようにしばらく置いて火が消えた後に再着火することは可能だが味は基本損なわれがちである。中断する前に吹き戻して中の煙を出すと良いなどとされているが効果の程は正直よくわからない。

 ⑨残心…以上で葉巻の喫煙は完了したわけだがその後に気をつけたい点をいくつか。

 葉巻の煙はかなり匂いが強くワンルームなどは閉めきっているとすぐに匂いや色が付くので吸った後はよく換気をすることをおすすめする。
 また口中のヤニ臭さが周囲に不快を与える場合があるので歯磨きやタブレットを噛むなどし衣服も着替えるかよくはたいて匂いを取り対処するのが大人の嗜みというものである。

・注意!
 周辺の諸々について。葉巻によらず趣味の世界にはどうしてもクセが強い教えたがりや口うるさく権威を醸そうとする老人がいるもので、もし店で遭遇してしまったときはヘラリとお茶を濁しておくが吉である。
 殊に初見にも拘わらずやたらと馴れ馴れしくしてくる大人に碌な人間がいないのは何処でも通じる理と思う。

・終わりに!
 これでほぼ一通り葉巻喫煙の始め方については語り終えたのではないかと思う。

 もしこれで葉巻を好きになりその先を望まれるなら、タバカレラコロナスマトラ辺りに挑戦するのも良いだろう。これは吸口を自分で切る必要があるので次のステップには適している。

 そして最後に大事なこととして楽しく吸うこと、そして神に感謝することを伝えおく。門は開かれ道は示された。

 Pax Vobiscum.

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