出会いの掟



視線が触れた瞬間、落ちる音がした。
それは思っていたより呆気なくて、聴き逃すことの方が多いように感じる音であった。
しかし、相手があなただったから聴き逃さずにはっきり捉えられたのかもしれない。思えば、この時からもう始まっていたんだろう。
きっと日常的に、初めましての人と顔を合わせるたびに、その音は微かに鳴っている。それを互いに聴き逃さなかった時、それはもう、誰もが願う「たった1人の誰か」に出会った瞬間なのだ。
わたしの瞳をカメラのレンズに喩えるなら、その出会いの瞬間をまるで知っていたかのように、完璧にピントを合わせていた。視線が触れる瞬間を綺麗に捉えたレンズは、過不足なく理想的なタイミングでシャッターを押した。
そしてそのとき撮れた記憶の断片という名の写真は、不思議としばらく経った今でも頭の中で鮮明に引き出すことができる。他の出来事とは比べ物にならないほどに、「そのとき」が現在に蘇る。
落ちる音がはっきりと聴こえること。出会いの瞬間を完璧に捉えて、それをしばらく経ってからも思い出せること。これが俗にいう「運命的な出会い」の掟なんだとわたしは思う。


今日から連載を始めます。更新は不定期です。
今まで趣味で書いてきた物語、どこまで読んでもらえるのか試してみたいと思います。

ちなみに、この物語の続きはわたしもまだわかりません。きっとその時のわたしの裁量で非常に移り変わると思います。

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