脱炭素情報#19 日本のカーボンクレジットの現状
最近はなかなか更新できない日々が続いておりました。結構日経の記事でも面白い記事が多かったのですが、いつかストックを放出したいと考えております…。(今回少しサムネイルスライドのスタイルを変えてみました)
今回は標題にも記載しましたが、カーボンクレジットを日本においてどのように扱っていくかに係る委員会が開催されておりましたので、そこに注目していきたいと思います。
カーボンクレジットには日本で制度設計が進められてきた「J-クレジット」、外国への削減貢献によるクレジット取得が可能な「JCM(Joint Crediting Mechanism)」、民間的な市場にあたる「ボランタリークレジット」等の多くのクレジットの種類があります。
しかし、制度設計が追いついていない面があり、積極的な取引に結び付いていないように日本での活用方法が明確化されていない状況になります。
今回の委員会では「カーボン・クレジット・レポート」というものを作成することによって、このあたりの定義を明確化する意図があるように見受けられました。(資料4にレポートの骨子があります)
2021年12月に第1回が開催されており、今回は第2回のようです。第1回を記述できておりませんでしたが、第2回から見ていくことにしたいと思います。
第2回 カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会
1.委員会資料内容(レポートの方向性)
資料3が「業種別意見ヒアリングを踏まえたカーボン・クレジット・レポートの方向性及び論点」で用意された事務局資料となっております。
P1には、各業界の事業者へのヒアリングを実施したとの記載がありました。別資料の参考資料1を見ると事業者名の記載がされており、エネルギー、金融、商社、航空等各業界の事業者へのヒアリングが実施されているようです。
また、カーボンクレジットに関する基本的なまとめ方をとりまとめていく旨が記載されているほかに気になった面としては、国際的にオフセットの手法の正当性やモニタリングの適格性への否定的な意見があったという部分になります。日経でも数か月前に質の低いクレジットについての報道がありました。このあたりをうまく制度設計に組み込んでいくことが重要のように感じました。
2.委員会資料内容(カーボンクレジットの需給面の課題)
P4には需給面の論点と方針案が記載されていました。
1項目目の論点Aは、海外のボランタリークレジットを活用する際の質問になります。ここに「相当調整」という言葉がありますが、これは日本と海外で削減量の整合性をとることです(海外でもカウントして、日本でもカウントしたら二重計上になってしまいます)。これに対しては、クレジット活用側が責任を持つことという記載になっています。個人的には制度でしっかり縛らないとクレジットの品質が保てないのではないかと感じてしまいました。
2項目目の論点Bは、海外のボランタリークレジットを持ってきて国内の排出量の直接削減に適用できるかというものです。これは重要な論点に感じました。これができるかどうかでボランタリークレジットの意味合いがだいぶ変わってきてしまいます。方針案としては、相当調整済クレジットに限定して考えるべきではないか、移行期にはサプライチェーン排出には適用していいのではないかという記載になっていました。これはその通りな気がしました。制度がしっかりしているものとしっかりしていないものは分けるべきだと感じました。
最後の論点Cは商品・サービスに環境価値を訴求する記載することについては、これは更なる議論が必要となっているようです。
3.委員会資料内容(カーボンクレジットの供給面の課題)
一方、P5には供給面の論点の記載がありました。論点Dとして技術ベースでの除去クレジットとして、DACCS、BECCS、海域の脱炭素であるブルーカーボンの促進について記載されています。こちらは技術的にまだこれからであることもあり、今後政府における後押しが必要という記載になっています。
上記のあたりの技術については過去記事でもまとめておりますので、もしよろしければご確認いただければと思います。
今後については3月に第三回の委員会があり、6月過ぎにはレポートが公表される見込みのようです。
今回はここまでになります。結構内容がわかる分野であることから情報量も多い感じになってしまいました。引き続きチェック頂けますと幸いです。