編集者と著者の距離感
以前、上司に「著者との距離感が近い」と言われたことがある。
「それは、注意ですか?」と聞くと、「良いこともあるけど、なぁなぁになることもあるから……」と言われ、結局注意なのか、何なのかわからなかったけど多分、注意。
全ての著者さんと親密になるわけではないが、時々めっちゃ気が合って、趣味も合って、プライベートで食事をするようになって、休日に一緒にお出かけしちゃう! というような著者が現れる。
言うべきことは言ってるし、ちゃんと本も作ってるし、仲が良いからといって規定から外れたことをするわけじゃないし、別にいいじゃん! と思っている。
一方で、距離感が必要な人とはちゃんと取っている。作家が本業でない方の本業の裏事情とかとても興味があったりするのだけど、本の制作と関係ない部分は触れないようにしたり、自分の推しとその作家さんが知り合いだったとしても、「あの人推しなんです、プライベートどんな人なんですか?」などということは言わないようにしている。
タレントさんの雑誌連載をしていた時、うまく距離が縮められなくて、うわべのインタビューしか取れず、もうちょっと恋愛のこととか将来の夢とか話してもらいたかったな、と後悔したまま連載が終了してしまったことがある。後から、「あぁ、私が自分のこともさらけ出してないんだから、向こうも心開いてくれないよな……」と気づいた。ここは、距離感を縮めるチャンスを逃してしまった。
と、まぁ距離感って様々だと思うのだが、バグってる著者さんとの関係が悪目立ちしてしまい、ちょい注意を食らったんだろう。ミッチミチにプライベートまで仲良くなる著者さんは、実際は1割に満たないのではないだろうか?
そういえば、昨日飲んでいた後輩ちゃんが、「私、人間の著者がいないのが悩みなんです」と言っていて吹いた。キャラクターとか企業コラボの本ばっかり作ってるからね。それはそれで、おもしろいからいいじゃない!
話を戻して、最近私の中で3大距離感バグっている(=大好き)のが、以下の3名だ。
【C先生の場合…】
女性誌編集をしていた頃からのお付き合いなので、もう20年くらい。C先生の方がちょっとお姉さん。
ヲタ活関連、マンガ、歴女的分野で趣味が合いまくる。
ゆえに、「あの番組見ました⁈」「今すぐYouTubeをチェックせよ!」「新刊読んで号泣中です」というようなプライベートLINEがしょっちゅう飛び交う。一緒にテレビにも出たことがある。一緒に大学で授業もしたこともある。お互いあがり症のため、本番直前まで緊張で冷たくなった手を握り合って、支え合っている。
ある日、C先生が、「十二単を着たい! 一人は恥ずかしい!」というので、「わかりました、お供します」と京都まで行き、二人で十二単を着た……。著者と二人で十二単を着た2ショット写真。なかなかのレア体験である。
これは、普段大人しい、別編集部のSくんも、声を出して笑っていた。
――しかしですよ、私たちはこの十二単を着た人物が主人公となる本をなんと2冊も出したのです。そして、もうすぐ3冊目が出るのです。
この、距離の縮め方は形になっているので良くないですか??
【Y先生の場合】
元々彼女のファンで、ある日「本を書きませんか?」とDMをしたら、とんとんと話が進み、気が合う中に。Y先生の方が、ちょっとお姉さま。
海外に住んでいるので、Webでの打合せが主だが、いつも話が盛り上がり2時間以上話してしまう。先日、4時間以上になったときは、「もう、疲れたので終わりたいです……」と言ってしまった。話し出すと止まらないのだ……。
今年彼女が1週間来日した時は、ほぼ毎日一緒(そのうち3日は仕事ですよ…)。彼女は、人と人をつなげることが好きな人なので、その1週間でたくさんの人に会わせてもらい、LINEの友達が一気に増えた。
親族の集まりにも呼ばれたので、ホイホイついて行き、彼女の従妹ファミリー、友人&そのファミリーとも知り合いに。
今月末は、彼女の従妹さんと二人で、飲みに行っちゃいます(もう、著者すらいない・笑)。
今年中に彼女の住む国へ会いに行く予定(彼女の原稿の進み具合による…)。
打合せは長すぎだが、少しずつ制作は進んでいるので、これもアリじゃないですか?
【K先生の場合】
韓国に住んでいるK先生。私の方がちょっとオンニ。
じつは私の韓国語の先生でもある。ミラ先生と私の会話を聞いて、最後にフィードバックしてくれるのだ。
K先生とは、毎週Web授業で会っているのだが、リアルでは日本で1回、韓国で1回のみ。今年の夏、1カ月実家に帰るというので、「じゃあ、私も夏休みを兼ねて会いに行っちゃおうかしら?」というと「ぜひ、来てください!」とノリノリに。
しかし、今年の夏はどいつもこいつも締切を守らず、私の業務を圧迫していた。旅行なんてしてる場合じゃないかも……と伝えると、「韓国からお土産買ってきたんですけど、おうちに送ったほうがいですか……」とものすごく悲しい顔をされてしまい、胸がぎゅっとなったので、「やっぱり行きます! 今日、飛行機のチケットとります!」と、勢いでチケットを取った。
当日、飛行機を降りると、にっこにっこのK先生が「わーーー、ロックさーーーん」と抱きついてきた。ものすごくテンションが高い。
そして、旅行に来た私よりもでっかい謎の荷物を持っている。
1泊2日、有名な観光地ではなくK先生のご実家の近くに行ってみたいとオーダーだけして、どこで何をするのかは知らない。「濡れてもいい服と着替え多めに持ってきて」と言われていたが、夏だしすぐ乾くから要らん、と思い、必要最低限の荷物しか持ってこなかった。
さぁ、ここから「おいおい、著者との距離感、崩壊してんな!」という、私の1泊2日の小旅行が始まるのだった。。。
「大荷物の正体は?」「著者に向かって、思わず“ナメんなよ”と言ってしまう事態に」「著者の実家まで行って玄関までしか入れてもらえないなんて!?」「いや、マジで着替えたりない!」という旅行記は、「編集者と著者の距離感 旅行編」へと続く。