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【映画】出口が入口?「ブルックリン最終出口」

一発目は最近特に気に入ってる映画の事を。

「ブルクリン最終出口」(Last exit to brooklyn :
公開年 1989 独・米)と大変古い、知名度もあまり
高くない映画ですが、原作はビート文学のジャン
ルでそこそこ古典的人気作のようです(未読)。

因みにこれを知ったのはかなり昔で、スカパーか
何かのスクランブルで「スターチャンネル」の
放送番宣で映像を観たのが最初。

公開から数年経ての事で、自分の地元(静岡の
田舎の方)では情報も何も全く引っ掛からなか
ったくらい。

主演はスティーヴン・ラング、ジェニファー・
ジェイソン・リー、バート・ヤング等、監督
「クリスチーネF」のウーリ・エデル、という
ドイツ系の監督です。

タイトル通りニューヨークのブルックリンが
舞台ですが、20~30年代の大恐慌や第2次大戦
の煽りで、所謂都市空洞化が進み(世紀末のよう
だ)街自体荒廃し、労働者組合側のストライキ
と経営側の衝突で荒れに荒れているという。

画面も退廃的で薄暗い夜の映像が多く、また
その物陰で妖怪の様に蠢いてる輩(半グレ、
娼婦、クイアな人々)の群像劇、といった趣で
それぞれが主人公、といった感じ。

類似する作品としては、大島渚監督が経済成長
下時代の釜ヶ崎を描いた「太陽の墓場」に共通
する部分が多々あり、脚本家もデズモンド・ナカ
ノ、という日系人で、原作からこれを起こすに
当たってこの映画が頭にあったのかな、
と何となく推測します(確証や資料は無い)。

またひとつ黒澤明の「どん底」(元はゴーリキー
の戯曲)まあこれは大多数の映画がこの類での
参考にしてるとは思われますけど。

…とにかく登場人物の一人で娼婦の(というか
寸借詐欺、または美人局)トゥララ(ジェニ
ファー)性格も口も態度も悪く、荒んだ街の
様子を象徴するようなキャラ。

これ観てどこを好きになるの?と思いきや、
彼女は彼女なりに今の自分が嫌で、この街から
出たがってる、というのが観てるうち痛くなる
ほど伝わってきます。

そんな彼女がとある水兵と一夜過ごすうち、
彼の優しさにほだされて(財布目当てだったが)
中盤上機嫌で朝帰り。

それが、見出しの画像。これ何かに似てますね。

有名なドラクロア「民衆を導く女神」ですが、
映画的意味合いは真逆で、劇中ではもっと不穏
なスト鎮圧の警官隊の先頭にいる格好です。

組合員と警官隊が衝突する前触れを絵で示し
てる、このセンスで完全に持っていかれた。

まあ、宗教的イコンや絵画を劇的に利用するの
は良くあることですが、大写しで皮肉たっぷり
に笑うトゥララ(頭には多分ストとか何にも
ない)のこれが後半カタストロフィの幕開け
になっている、という(だから何だ、と言われ
れば素敵でしょ?と返したい)

こういう絵的快楽が一個あれば大抵の映画は
頭の中で象徴化・結晶化して残ってしまう。

伴う退廃的な雰囲気や叙情的なスコア(マーク・
ノップラー)また、この更に先の彼女の自己破壊
的行動(ネタバレ伏せ)が、街全体の死と再生を
象徴するようで、それ自体が宗教的寓話のように
美しい。

あ、結局トゥララ一人称視点みたいな語りに
なってしまいましたが、ほかそれぞれ感情移入
できるマイノリティ的「推し」が見つかるかと
思いますので、是非(雑なまとめに入った)。

ただ現在視聴困難で、プレ価格の中古DVDか
海外の動画サイト漁る位しか観る機会が望めない、

なので何とか再上映、

からの再ソフト化を望む物であります。

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