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金沢ピープルファイル003: 原田英二⑥

どんな町にもたいていひとつは気のおけない食堂があります。竹内紙器製作所のある幸浦で言えば「メルヘン」がそう。これからするのはそのメルヘンをめぐる、ある家族についての物語。あらかじめおことわりしておきたいのはすべて本当の話だということ。

第6回 店のこと②

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金沢自然動物公園で1992年に開店した動物園店はレストランと売店のどちらもかつてない規模で、セルフサービスを導入したり初めての連続だった。オープンしてから4年目に娘の結婚披露宴もここでやったんだ。娘の旦那が知らないホテルでやるよりも、せっかく飲食店をやっているんだし、あっちゃん(娘)もずっとお店で育っているんだからぼくもみんなにお披露目して祝福してもらいたいって言ってくれたんだ。

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最初は両家合わせて50人とか60人くらいで考えていたみたいだけれど、最終的には350人くらいになったかな。従業員とその家族も知り合いもみんな呼んで総動員してね、ハチャメチャだった(笑)。

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従業員みんなにタキシードを作って着せてホテルマンみたいに仕立てたり、店の外の木にも全部電飾をつけてライトアップしてさ。山手で式を挙げた後、ガイド付きの観光バスに乗ってみんなで動物園へ移動したんだけど、ベイブリッジをぐるっとまわって動物園に向かうと、まわりは真っ暗だから店が幻想的に浮かび上がって見えるというわけ。そこまでやっておいて控え室が食材倉庫だったのが娘には不評だったけれどね。サプライズで僕とダンスも踊ってもらったんだ。ダンスなんてしたことないもんだから顔を引きつらせてものすごく怒ってた。そうそう、ヨコハマ機工の吉岡社長に主賓で挨拶をしてもらったんだけど、あいつは口が悪くてね、失敗したと思ったよ(笑)。

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ウチの店はほんとうに独特だと思う。ふつうはまずコンセプトがあって、店をいくつか作ろうと思ったら同じようなコンセプトのもとに支店を作っていくものでしょ。でもウチはここならこう、ここならこうって、出店する場所に合わせて変幻自在だから。ただ間違いなく言えることは地域のために、そこに暮らす人たちのために何ができるのかということを第一に、世の中のため、人のためにやってきたと思ってる。公共の施設から出店のオファーが多いというのもそういうことなんじゃないかと思うな。あそこに頼めばきっとうまくやってくれるんじゃないか、ただ飲食店をやっているだけじゃないんじゃないか、そう思ってもらえている。利益が出たら社会に還元しなければいけないし、町の人に喜ばれて、町に必要とされるようなメディアでありたいんだよね。

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