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ロンドンのファッション教育:古着から学ぶインスピレーションの力
昔、パタンナーの方からこんな話を聞きました。ロンドンの有名なファッション専門学校では、入学してすぐ、学生たちに街の古着屋で気になる一着を選んで購入し、それを分解して縫製や構造を学ぶ課題があるそうです。自分で古着を探し、手に取り、隅々まで観察し、そして解体していく――。一見すると地味な作業に思えますが、そこにはファッションの基礎だけでなく、「インスピレーションを生む力」を育てるという意図が込められている気がします。
日本では、古着というと「中古の洋服を安く手に入れる」といったイメージが強いかもしれませんが、ロンドンの街には多くのヴィンテージショップやリサイクルショップがあり、学生たちは日常的にこうしたインスピレーションの源と触れ合うことができるのです。
この恵まれた環境の中で、ただ技術を学ぶだけでなく、ファッションに対する感性を養うことを教えられると聞き、とても新鮮でした。
新しい物や商品だけでなく、過去の物からアイデアを掘り出し、ただ真似するのではなく新たな形へと作り上げる――。それはとても理にかなっていて、伝統的な企画方法でもあるのだと改めて感じました。