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2021年6月6日 日本のことを思う

はじめに


人口約900万のイスラエルでは、2021年に入ってから1日当たりのコロナ感染者数が1万人を超える日がありました。
東京の人口が約1,400万ですから、単純に割合で計算すると、東京で1日当たり1万5千人程度の新規感染者が出ている、というような状態があったということです。
そして最近ではガザ地区を実効支配するテロ集団、ハマスから2週間にわたって4000発以上のミサイル攻撃を受け、人々は連日連夜シェルターに逃げ込むか、もしくはシェルターから出られない日々を過ごしました。住居を破壊された人や死者も出ています。
この武力衝突の影響を受け、普段から微妙なバランスで均衡が保たれていた国内のユダヤ人とアラブ人の関係が悪化。双方とも武力に訴える少数の集団が一般市民を攻撃しあい、こちらも死者が出る惨事となり、建物の破壊などがありました。
さらに、このニューズレターでも何度もお知らせしていますが、イスラエルではすでに2年近く安定した内閣が成立せずに選挙が4度も繰り返されているという、イスラエルの歴史上類を見ない不安定な政局が続いています。
こんなめちゃくちゃな状態が、「5月までのイスラエル」でした。


6月に入って

そんなイスラエルでしたが、現在では1日当たりの新規感染者数が大体連日10人前後、少ない日では4~5人というような状態で、6月1日より、室内でのマスク着用義務と外国からの出入りに関わる事項を除く全てのコロナ規制が解除されました。
また紛争と国内武力衝突があったためにさらに悪化すると思われていた国内のユダヤ人とアラブ人の関係ですが、私が想像していたほど脆弱なものではないことが発覚。
ユダヤ人とアラブ人の共存を訴えるデモがイスラエル各地で起こり、企業や学校なども共存のためのいろいろなキャンペーンを行っています。
さらには、4回目の選挙の結果、今回も連立与党立ち上げはムリだと思われていたのが、期限が切れる30分前に2度目の挑戦で「連立与党の合意に達した」との報告が大統領になされ、大ニュースとなりました。
連立には、その名も「右へ党」という右寄りの政党からアラブ政党まで、多様な政党が名を連ねています。連立与党にアラブ人の政党が名を連ねたことは、イスラエル史上初。
アラブ人、ユダヤ人、双方の暴力沙汰で、共存が危ぶまれたこの時に、右寄りの政党とアラブ人の政党が合意。
私には想像もつかない展開でした。


希望を失わない


そんな、すべての事象において振れ幅の激しいイスラエルですが、これがイスラエルらしさなのかもしれません。
イスラエルに様々な問題があるのは疑いようのない事実です。生活がつらい時や苦しい時もあるし、「ユダヤ人」、「アラブ人」、もしくは「イスラエル人」としてグローバルな現代社会を生きていくことは、「日本人」として生きていくことよりも、何倍も大変なのではと思ってしまうことが多々あります。
それでも、彼らは生活を、人生を楽しむことを決してあきらめません。
何事においても、特に国づくりにおいては本当にあきらめずにトライ&エラーを繰り返す。私だったらもうあきらめて逃げ出したいと思うような状態でも、彼らには逃げる先がないのです。だから、今あるこの場所、この時をできるだけ良いものにしようと務めるのです。
そして、彼らは魔法の様に一瞬にして全てが良い方向に向かうこともない、ということも知っています。だから地道にやっていくしかない。
失敗もあるだろうし、間違えることもある。でもそれは常に想定内ですから、いつまでも失敗や間違いにこだわらずに次へと進む。
イスラエル人は本当に打たれ強い、覚悟が決まっている、と思うのです。


おわりに


今回は最後に、少し日本のことを振り返ってみたいと思います。
私は正直最近の日本のことはあまりよく知らないということもあるのですが、最近の日本の報道を見ていると、閉塞感の様なものを感じます。
日本には日本の問題があり、単純にイスラエルと比較することは出来ませんが、それでも、どの国にも良い点もあれば悪い点もある、というところは同じです。
日本では、コロナの問題、経済格差の問題、高齢化社会などが取りざたされていますが、これらの問題はほとんど世界共通で、これらの問題がない国はまた別の問題に悩まされています。
日本の報道を見ていると文句ばかりで、代替案や改善策を考えようとする空気がまったく感じられません。
失敗をあげつらい責めるばかりで、それがダメならどうすればよいか…という、前に進む発想が見られません。
どうか、希望を失わないでほしい!と思ってしまいます。
全ての問題が一瞬で解決する魔法など、この世には存在しません。辛抱強く、地道に前に進むしか、方法はないのです。
日本には言論の自由がある、政府は国民が選び出している。世界一の長寿と健康を誇り、素晴らしい文化と歴史がある。
その点で、日本はすでに世界の大部分の国よりもものすごい良い状態にあると思うのです。日本人は、もっともっと、自由に人生を楽しんでも良いはずだと思います。
コロナで禁止されている「レストランでお酒を飲むこと」だけが人生の楽しみではありません。
自分の意見を自由に口にできること、自由な服装のできること。自由に人生を選択することができ、自分の選んだ人と家族を作ることができる、家族を作らない自由がある…他にもたくさん、日本の果てしない自由を、想像力を駆使して満喫するべきだと思うのです。
ミサイルを撃ち込まれて、世界中から非難されても、常に冷静な目で生きていることを満喫しようとするイスラエル人。彼らから学べることはまだまだあると、私は思います。
*写真は子供たちで混雑する、再開された映画館。

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