2021年2月10日 COVID19 予防接種第1回目
はじめに
さて、前回でも取り上げました、COVID19予防接種についてですが、先日私も第1回目を接種してきましたので、その様子をお知らせします。
とはいえ、私は医療や疫病については専門知識をまったくもっていないので、予防接種そのものについて言えることは、まあ、注射がチクっとしたとか、思ったよりあっという間に終わったとか、個人的には副反応と呼べるような現象は現れなかった…とか、その程度のこと。
予防接種の、医療としての影響力や社会的な影響力に関しては専門家にお任せして、今回は予防接種にまつわる、「イスラエルあるある」的な、私の個人的な体験を共有させて下さい。
イスラエルの「健康維持機構」
前回も書いたように、イスラエルではデジタル化された国民皆保険制度を利用して、医療従事者や基礎疾患のある人、そして高齢者を最優先で接種を進め、その後徐々に接種対象者の年齢を下げていく、という方法を取りました。(現在はすでに年齢制限による優先順位というものはなくなり、誰でもが同じように予約できるようになりました。)
ちなみにイスラエルの保険制度なのですが、私はこのコロナ禍における日本の報道で、初めて「健康維持機構」(HMO)という日本語(および英語)を知りました。健康維持機構とは、簡単に言うと非政府、非営利の保険組織で、組合機能だけでなく、お医者さんや看護師さん、技術師なども雇って診療所を運営している団体のことです。
私はいままでずっとこの言葉に該当するヘブライ語「クパット・ホリーム」を使っていて、それは、在イスラエルの日本人社会の方々も一緒だったと思います。どんなに「ヘブライ語が苦手で…」とおっしゃる方でも、「ノー!」と「ちょっと待て!」と「健康維持機構」はヘブライ語、という感じで、それほど日本語ではなじみの薄い制度だったのです。
イスラエルの健康維持機構は全部で4つあって、それぞれが任意の団体を一つ選んで入る仕組みになっています。建国に伴い国が必要に迫られて作ったものから、その団体で問題が起きて派生して新しくできた団体など、それぞれ少しずつ歴史が違い、全国どんな田舎に行っても正規の診療所があるものから、都会では充実度ぴか一だけれど田舎の方では別の健康維持機構との契約診療所のお医者さんで診療している…というものもあり、ちょっとずつ特徴があります。
そんな、健康維持機構ごとに開設された予防接種会場で予防接種がバシバシと打たれていくのですが、超低温といった特別な条件下で保存ができなかったワクチンの廃棄問題など、無駄を省くために、現場の人たちやコミュニティーの力で融通を利かせながら、ワクチン接種が行われていることは前回書いた通りです。
コロナ予防接種の予約を入れる
そのうちに、私もついに接種対象者となる日がやってきました。私は、ワクチン反対派ではないのですが、やっぱり注射はなんとなく怖いものです。
それでもコロナにかかる恐怖と公衆衛生の観点からの義務感が勝り、ワクチン接種の予約を入れる決意をしました。
予約はアプリか電話。でも、電話なんてかけたら何分待たされるかわからない。おなじみの、自分が所属する健康維持機構のアプリで予約を入れます。(健康維持機構ごとに、多少の違いはあると思いますが、ここでは私が加入している健康維持機構の体験談をさせていただきます。)
ID番号とパスワードを入れてアプリに入り、「コロナ関連」という比較的新しいボタンをタップします。
すると、今度は「コロナの一般的な情報」「実施済みのコロナ予防接種について」「コロナ予防接種の予約」「コロナ検査の予約」「コロナ検査の結果」「外国へ行く人のためのコロナレポート(コロナ検査の結果、予防接種証明書)」「精神的なケア」の7つの選択肢。
そこで「予防接種の予約」をタップ。自宅付近や勤務先など、自分が注射を受けたい場所の町名を書き込むと、そこに近い接種会場を表示してくれます。会場を選ぶとカレンダーが出てきて、そこに表示される予約可能な日と時間をタップします。
ここで予約確定なのですが、その前に、接種を受けるにあたっての条件や注意事項(アレルギーの有無、いままでに予防接種で何らかのショック症状があったか、接種後は最低15分は会場で待機すること…など)がずらずらと、10項目ほど出てきました。健康状態の確認事項もあり、問診も兼ねているのでしょう。注射の接種時間は1人当たり7分で設定されていると聞きました。会場に来る前に遠隔で確認ができることはここで済ませてしまうのだと思います。
これらの条件を全て承諾した人は予約確定ボタン。
注射を受けられない条件に当てはまったり、何か不安や不明な点がある人は健康維持機構の相談窓口に直通する電話ボタンをタップして、その場で個別対応。
こんな流れで、1回目の予約を入れると約3週間後の2回目の予約も自動的に入ります。SMSで予約の詳細および接種会場の位置情報がピロロっと送られてきて、予約完了です。
予防接種当日
私が選択した予防接種会場は、隣町の市役所前の広場に簡易設置された可動式のプレハブ小屋。
小屋の入り口には誘導係がいて、接種に来た人に名前と予約時間を聞きながら表にペンでチェックを入れています。ここはいきなり、ものすごいアナログなんですね。(誘導係には個人のデータにアクセスする権限がないのかな?それとも単に会場の広さとか動線の問題?)
私の名前も無事に表から見つけられチェック。「呼ばれるまでここで待ってて」と、外で待機。
5分も待たずに名前が呼ばれ、小屋に入りました。
名前を聞かれ、本人確認。健康維持機構のカードを機械に通して、熱は38℃以下か、今までに予防接種でアレルギーなどが起きたことはないか、この1週間に他の予防注射をしていないか、そして「右と左どっちがいい?」の質問を受け、いざ、注射。
「ちょ、ちょっと待ってください!あの、注射打ってる時に、セルフィー撮っていいですか?」
日本の家族にも知らせたかったし、この投稿のためにも、絶対に写真を撮りたかったので勇気を出して言いました。
「いいわよ、ぜひ撮りなさい」と、いやな顔一つせず二つ返事の看護師さん。「準備できたら言ってね」。でも、普段セルフィーなんて撮り慣れないし、利き手は注射のために動かせないし、恥ずかしさも相まって、全然画面が決まらない。
「いいわよ、ゆっくりいい角度みつけて」なんて応援されると、もっと焦ってしまって、携帯を横にしたり縦にしたり…。
もう、焦りが最高潮に来てなんとなく何かが写っていれば良いのでは?という気になる私。
焦りまくって「あ、ほら、こんな感じで、準備、できました」と言ったら、「ダメよ、そんなの。全然決まってないじゃない」と、看護師さんからのまさかのダメ出し。
「ちょっと、あなた、手空いてるんだから、こっち来て彼女の写真撮ってくれる?」
と、たまたま手の空いていた隣の机の看護師さんを、小屋中に響く大声で呼んでくれました。
医療用手袋をゴミ箱に放り込み、消毒液を手に塗りながらこちらに向かってくる看護師さん。「どれどれ、僕も新しいキャリアをはじめようかな。ここで写真スタジオ開設~」などと冗談を飛ばしながら。
他の机の看護師さんや、事務係や待機のお医者さんなど…皆がこっちを見て笑ってる気がする。もう、思わぬハプニングで、顔から火が出る思いでした。
でも、こうやって、皆がリラックスしてるところなんか、すっごくイスラエルらしい。私は気恥ずかしかったけれど、雰囲気は暖かかったです。
消毒液でささっと拭いて、注射そのものは2~3秒くらい?本当にあっという間です。あとはガーゼで揉んだりするでも、コットンパッドで抑えるでもなく、おしまい。
写真撮影の看護師さんと、注射を打ってくれた看護師さんにお礼を言って、予防接種後の説明の紙をもらって「外で15分待機ね」。
セルフィーハプニング以外は、本当にあっけないものでした。
接種後
広場にはプラスチック製の椅子が適当にバラバラと置かれて、接種済みの人はこの椅子に腰かけて15分待機することになっています。雨よけのテントもあります。今日はいい天気だし、久しぶりにちょっと遠出して隣町の公園にいるからか、なんとなく開放感。(予防接種を受けた時はまだロックダウンの最中で、車に乗って町境を超えたのは久し振ぶりだったのです。)
椅子に座って、携帯で撮ってもらった写真をチェック。結構上手に撮れてる。あの看護師さん、もしかして本当に新しいキャリアをスタートする気とか、あるのかしら?なんて勝手に想像して笑ってしまいました。
暇を持て余している誘導係のおじさんが、「調子はどうかい?大丈夫?」なんて声をかけてくれたり。イスラエル人は本当に皆、人との距離が近い。皆、知り合いみたいに話しかけてくるし、友達みたいにふるまうし。
とりあえず、第1回目の接種は無事終了。副反応と言えば、まあ、注射を打ったところを押したり触ったりするとちょっと痛いかなあ…という程度。
実は、ここのところ肩こりがひどく、左肩から腕にかけて痛みと重さに苦しんでいた私は、予防接種の注射針が針治療の代わりみたいに作用してくれないかな…と何の根拠もない期待を抱いて、左側に注射を打つように頼んだのでした。
もともと痛かったので副反応で痛いのか肩こりで痛いのかわからない。でも、なんとなく痛みが軽減したような気もするのですが、絶対に気のせいだろうなあ…。
後日接種を受けた私の主人は、接種後2日ほど頭痛や倦怠感があったというから、本当に個人差があるようです。
コロナ予防注射周りの反応
実は私は、このコロナの予防接種、イスラエルではイスラエル人よりも、イスラエルに住んでいる日本人の方が、興奮度が高いような気がしています。
イスラエル人は別に国がやると言っているから普通にやっているだけ(もしくは国がやると言うから反発、という人も)。でも、日本人は日本に住む友人や家族にイスラエルの様子を伝えたいという気持ちがあるし、日本と比較して物事を考えるので、なんだか一種のお祭り騒ぎの様な感覚すらありました。
そんなわけで、イスラエルに長く住んでいる友人の一人は「日本人がこれだけ騒いでいるんだもの!ワクチン饅頭つくって、ワクチンTシャツ売って、ワクチン御殿を建てないと!」なんて冗談を言っています。
おわりに
以上が私のコロナ予防接種体験談でした。
社会的にも医療的にも何の役にもたたない体験談ではありますが、ニュースにならないイスラエルの一場面を皆さんに実感していただけたら…と思いました。
第2回目の注射がまたもうすぐに迫っていますが、第2回目のほうが副反応が強いというウワサも耳にしています。無事に済むといいなあと思います。
それから異変種にも効果はあるのかとか、いつまで効き目が持つのかなあとか…。悩みや不安は尽きませんが、とりあえず、今日はここまで。どんな時も、沈んだ日はまた昇るのです!
以上、現場からお伝えしました♡