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トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第11回 豊田章男の疑問

■誰もが気づかなければならないこと

 豊田章男が地区担当員になって、最初に気づいた疑問があった。それは生産から販売部門に行ったからこそ気づいたことであった。

 「工場ではジャスト・イン・タイムで作っているのに、なんで販売店のヤードにはこんなにたくさん新車があふれているんだ。さっさとお客さんのところへ持っていかなきゃ、車は傷むし、代金も入ってこないじゃないか」

 トヨタ生産方式を理解している社員であれば、誰もが気づかなくてはならないことだ。もっと言えば、トヨタの社員であれば疑問に思わなければおかしな事実だ。だが、実際は彼が問題提起するまで誰も声を上げなかった。それは、販売店のヤードに車が置いてあっても、当たり前だと思っていたからだ。

 トヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムを発案したのは豊田喜一郎だ。喜一郎が社長だった当時、トヨタは生産から販売まで一体の会社だった。ジャスト・イン・タイムとは本来、生産から販売までを通して達成されるべき考え方だった。ところが、分社化したために、トヨタ自販ではトヨタ生産方式が忘れられてしまう。その後、2社が一緒になってからも、同方式はあくまで「生産工程だけの話」とされ、生産現場を知らない大学卒の人間にとっては「入社研修で習ったけれど、実はどういうことかはわからない」システムになってしまった。

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