
トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第22回 「ルルレモン」に学ぶ
■これからの「売らない売り方」
トヨタの販売店はどこでもあらゆる車種を売ることができるようになった。次いで、有力販売店はレクサス、スバル、スズキ、ダイハツの車を売るようになり、いずれは日産、ヒュンダイ、ポルシェと自動車であればなんでも扱うようになる。加えてライドシェアも手掛けるだろう。
過渡期の現在、コロナ禍の前に販売店がやっていたことは何が何でも店に人を呼ぶことだった。カフェを作ったり、平日の店舗スペースを地元のコミュニティに貸し出したり、イベントを開催して、とにかく客を店に呼ぼうとしていた。
カローラ愛媛では休日になると、定期的にミニ動物園や子どもの遊園地を開設した。徹底してファミリー層を狙ってのことだ。駐車場にアルパカ、ポニー、ウサギ、モルモットがやってきて、車に関心のない客も子どもと一緒に遊びに来た。
社長の松田卓恵は「とにかくディーラーに人が来ればそれでいいんです」と達観していた。
「店の認知度が上がります。そして、催しをやると、自社客より、他社客が多くやってきます。なんといっても、営業マンのケツひっぱたいて売れ、売れと言ったって、車は売れませんから」
コロナ禍では多数の集客は控えねばならないが、アフターコロナとなれば「店に来てもらう」ことは再び有効な手法となるだろう。
カローラ愛媛の客は車ではなく、感動を体験するために来店した。松田がやっていたように、これからの店舗は商品の提供ではなく感動を体験してもらわなくてはならない。店舗というよりも小さなテーマパーク、劇場空間になることを要求されることになる。
そして、先んじてこうした販売手法を取っている会社がある。アスレジャー(健康とスポーツ)ウエアの小売りチェーン「ルルレモン」だ。
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