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トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第25回 完成車物流の現場

■工場から家まで

 「完成車物流」のうち、国内向けは工場を出てから顧客の家まで行くルートだ。新車は工場を出て、そのまま客の家の駐車場に納まるわけではない。工場から各販売店が共同で運営している新車点検センターに運ばれていく。新車点検センターまでは4台もしくは6台積みのキャリアカーで行く。点検センターではオプションを付けたり、文字通り新車点検をした後、営業スタッフが取りに行って客の家まで運転していく。

 以前、「自動運転の時代になったら、工場から新車は自走して客の家まで行く」と書いたことがあるけれど、自動運転になったとしても、そうはならない。仮に製造されたすべての新車が1台ずつ、豊田市や九州、東北の工場から国内各地へ自走したとする。そうなると排出されるCO2(二酸化炭素)の量が膨大になってしまう。

 トヨタに限らず自動車各社は現在、CO2排出量を抑制するため、モーダルシフトといって、車の運送を船や鉄道にシフトしている。まとめて大量に運ぶ方がCO2排出量が少なくなるからだ。そのため、工場から出ていく完成車はキャリアカーで行くか、船、もしくは鉄道輸送になる。そして、港、鉄道の駅まではキャリアカーで運搬する。車の輸送にはどこまで行っても、キャリアカーとドライバーが必要だ。

 国内向けの完成車物流は工場から販売店までのルートを考えて、効率化すること。加えて、キャリアカーを運転するドライバーの労働時間を減らす。将来的にはキャリアカーの自動運転も可能になるだろうが、それはかなり先の話だろう。現在、考えられるカイゼンは物流システムを効率化して、そとりでもドライバーを減らす。現状、10人がキャリアカーである台数を運搬していたとする。それを9人で同じ台数を運搬できるようしたら、生産性は向上し、かつ、ドライバーを他の地区へ回すことができる。

 一方、海外向けの完成車物流でも工場から港までキャリアカーで行くことは変わらない。港からは自動車専用船で北米、アジアなどへ運んでいく。カイゼンの主目標はキャリアカーが運ぶ台数を減らすことなく、ドライバーを適正配置することだ。

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