【学マス】プロデュースにおけるキャラクター設定とゲーム設定の連動 EX1:十王星南
はじめに
遡ること四カ月前。当時プロデュース済の全アイドルの親愛コミュ10話まで達成した私は、10人それぞれの物語とゲーム内設定の連動について記事を書いた。
あれからシーズンイベントや新曲実装、さらにR版の別仕様登場に伴い、ほとんどのアイドルが別プランにも踏み出したが、未だ連動は保たれているように思う。
もちろん新バージョンが出る度に考察するのも有意義とは思うが、さすがに全て解説するのは野暮が過ぎるだろう。最初の一歩、初期プランにおける設定からバックボーンを見出すことができれば、後は各プロデューサーなりに十分追っていけるはずだ。
だからこそ、新たな『最初の一歩』についてはきちんと触れることにした。
ハーフアニバーサリーという最初の節目に満を持して降臨した『一番星(プリマ・ステラ)』十王星南。
既にプロデュース可能な10人のアイドル科生徒とはスタートラインからして違う彼女もまた、文芸における物語がゲーム的な設定に反映されている。その検証が彼女の新たな一歩を読み解く一助になれば幸いである。
なお、今回も親愛度コミュを含む育成中のネタバレはある程度不可避となっている。ネタバレを気にする方は本項目に入らず引き返していただきたい。
十王星南プロデュースと彼女の真価
まず前提として、本来ならば星南は3年生時には表立ってステージに上がらず、後進のプロデュースに手を伸ばしている。それは星南実装前夜に実装された親愛度コミュ10.5話の存在、そしてその10.5話が星南にだけ存在しない事実で明示されている。
つまり星南をプロデュースする行為自体、当の星南がプロデュース対象の一人とする花海佑芽と同じくifルートに近い扱いと言える。その前提を踏まえて読み進めていただきたい。
一番星としての実力
さて、改めて十王星南である。
冒頭でも書いたが、星南は前年のH.I.F(Hatsuboshi IDOL FESTIVAL)を勝ち抜き、既に学園No.1アイドルたる「一番星(プリマ・ステラ)」となっている。
アイドルマスターの歴代作ではjupiterの面々や斑鳩ルカなど、事務所移籍でやってきて既に実績があるアイドルならば存在したが、あくまで初星学園の中といえどスタート地点が頂点であるのは間違いなく異例である。
そしてそれ故に育成開始時の初期ステータスは圧倒的に高い。
さすがにいきなり育成完了後のステータスとまではいかないが、初期状態にして既にTrueEnd補正が付いているような状態だ。初期値が高ければ高いほど、強いアイドルの育成において明確な有利が付くのは当然のこと。しかし前年王者となればこの高初期値に不自然さはない。
さらに王者たる実力を示すのは数字だけではない。星南参戦と同時に解禁された新タイプ:アノマリーもまた、彼女の実力の一端と言えるだろう。
十王星南は3才からアイドルとしての英才教育を受け、彼女の望みから初星学園にアイドル科が生まれたとされる生粋のアイドルエリートだ。それだけの下地があれば、初星学園に入学してからアイドルを目指し始めた生徒より洗練されたパフォーマンスが出来てもおかしくはない。
だからこそのアノマリー実装だ。実装時点でのアノマリーは当然ながら星南の専用タイプである。プレイヤーが指針と全力値という未知の要素と格闘しながら、アノマリーの仕様を理解していく工程そのものが、十王星南独自のパフォーマンス理論を理解していくこととほぼ同義である(少なくとも今の時点では)。そしてその見返りは早々に体感できる。
恵まれた初期値に、洗練された独自のパフォーマンス理論。その二つをきちんと活かせば中間試験はいとも簡単に突破できる。難易度マスターでは育成プランと入手スキルカード次第で2位陥落が十分起こり得るのだが、星南に限ればそんなことはない。まるでステップレースに阪神大賞典を使って圧勝するメジロマックイーンのようだ。
どう見てもアイドルとして盤石に見える十王星南。
だが3年生となった彼女は、卒業と同時にアイドルを引退し、プロデューサーとなるつもりだった。星南プロデュースシナリオ以外では実際にその通りに彼女は動き出し、生徒会長として辣腕を振るいながらもアイドルとしては身を引き始めている。普通なら盤石な現状を無視した判断と見えてもおかしくはない。
そしてその現状にそぐわない行動の理由が明かされるのは、星南をプロデュースしようとプロデューサーが動く育成シナリオだけである。
頂点ゆえの限界点
十王星南には「アイドルの才能を見抜く」特技がある。これは育成実装より以前から星南、そして大元である十王邦夫学園長の特技とされ、実際にこの特技を行使して実力を見極めている場面も少なくない。多くのプロデューサーにとって既知の描写と言えるだろう。
だが、星南をプロデュースしようと打診すべく、無謀にも単身生徒会室へ赴いたプロデューサーは二つの事実を知る。
星南の特技は「鏡に映った星南自身」にも否応なく適用されること。そして前年の時点で既にアイドル・十王星南の潜在能力は全て引き出されていることだった。
その事実を知って改めてステータスを確認すると、初期値の高さと引き換えに成長率が全アイドルで最低なのがわかる。
レッスンをしても前年H.I.Fのベストコンディション以上に決してならない。それは他ならぬ星南自身がアイドルとして外せない「鏡を見る」という行動の度に思い知らされている。後進に託そうと思うのもやむなしである。
にも関わらずプロデューサーによる育成中は、成長率は低くともしっかりステータスは伸びていく。星南の発言に沿うのならば、本来は成長率がゼロどころか初期値完全固定でもおかしくないのに、だ。それは決して「育成シナリオの仕様だから」という理由で設定を安易に覆したのではない。
超越と限界突破はイコールではない
ここで重要となるのが、ゲーム上のステータスは画一化されたものだが、実際にはステータス一つを取っても個性や方向性は決して一つではないという点だ。
これは増補前の稿において倉本千奈を評した時のポイントであり、その時はお嬢様力から来る所作を反映することで、抜群の運動神経を誇る佑芽より高いダンス力に至っていた。
つまりアイドルとしてこれまで表に出していない「何か」があれば、星南はアイドルとして現状を超越しうることになる。ゆえに星南の育成コミュはその「何か」を求め、恐れず晒し、そして再び突き進む物語になっている。
そして星南に限っては、この事実は育成ステータスと別に大きな意味を持つ。星南が特技によって見ているアイドルの才能もまた、画一化されたステータスだからだ。
星南のプロデュースが開始された後も、特技で見える範囲での星南の現在値は変わらず、潜在能力が増えたワケでもないという。これはプロデューサーによるレポートでも同じで、基本評価は最初から最後まで9で固定されている。決してパフォーマンスそのものの限界を突破したのではないのだ。
それでも育成上ではステータスが増えるのは、プロデューサー(≒プレイヤー)が認識している数値と、星南が特技によって見ている数値がイコールではないからに他ならない。
星南の特技においては見えない成長を、文芸上における様々な試みと、ゲーム上において伸び続けるステータスという描写で同時に表す。片方はただステータスが正常に伸びるだけのことなのだが、それすらプロデューサー不在の星南にはできなかったことであり、どちらが外れても超越はなしえないのだ。
おわりに
歴代においてもかなり異例な十王星南プロデュースについて取り扱った今回の増補だが、いかがだったろうか。
秦谷美鈴の育成プレイアブル実装は確定しているとのことなので、すぐではないにしろまた今回のような増補記事を書くことは決めている。
また、3年生はいずれ卒業する。学校であれば当然のことだが、それは星南にも訪れる。その時の姿もまた今回の考察のままではないだろう。
さらに言えば、961プロおよび極月学園参戦にあたっては間違いなく新シナリオが組まれるだろう。サービスインからまだ半年、私も筆を置くのは当面後のことになりそうである。
あ、アノマリー実装を機にフレンド用メモリーは差し替えました。必要であればどうぞ。
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