リモートワークに関する私見
0. はじめに
私は、公認会計士・税理士事務所を運営しています(追記: 2021年5月、登録抹消しました)。企業へ管理業務を提供することが主な仕事です。地域は国内外、規模はスタートアップから上場企業までを含みます。私は顧客と物理的接触をほとんどしません。会わない、ということです。つまり顧客からみると、私は管理部のリモートワーカーに該当します。この形態で仕事をするようになって、9年間が経ちました。管理業務の提供方法は、管理チームリーダーとして顧客の管理メンバーへ指示する方法・自事務所スタッフとともに提供する方法・自分ひとりで提供する方法 と様々です。その経験から得たリモートワークに関する私見を、エッセイとして記述します。マニュアルやTips集ではありません。
私の業務範囲は、経営管理です。経営管理には、財務・経理・法務・労務・税務 が含まれます。したがって、本記事は、その範囲外の領域(営業・企画など)には、あてはまらない内容があることが想定されます。
1. タスク管理
リモートワークにおいて最も大切なことは「何を・いつ・誰がやるのか」をきちんと定義することです。一般にこれはタスク管理と呼ばれます。適切なタスク管理の要件は、以下の通りです。
タスク管理の要件
第1要件 : チームが対応するべき全ての業務が記載されている
第2要件 : タスクごとに「誰がいつまでに」が定義されている
第3要件 : タスクのステイタスが常時更新されている
ステイタスとは、そのタスクがどういう状態なのかという意味であり、タスクをブレイクダウンしたチェックリストないしはタグによって管理されます。リモートワークでは、コミュニケーションの難易度が上がります。また、他者の仕事を横目で観察することができません。したがって、会話のやりとりがなくても、観察しなくても、「メンバーが自分のやるべきことを把握している・リーダーがメンバーの業務の進捗度を把握している」状態を確保するために、前述の要件を満たすタスク管理が必要なのです。
そして、この要件を満たすため、タスク管理の「場」(つまりツール)には以下の機能を求めます。オンライン・複数人利用・階層化・優先順位設定・期限設定・アサイン設定。私は、2つのツールを使ってタスクを管理しています。定期的な業務には、Googleスプレッドシートを用います。たとえば振込・給与計算・記帳 などが含まれ、月次・四半期次・年次 といったシート構成です。これで業務全体の8割をカバーします。スポット対応の業務には、Trelloを使います。たとえば資金調達時の投資家対応・株主総会事務・その他単発のプロジェクト がこれに該当します。ツールおよびその使用方法は、タスク管理の要件とツール機能を満たすのであれば、どのような形であっても問題はありません。
さまざまなチームから報告されるリモートワークの弊害や失敗の多くは、このタスク管理の欠陥を原因としています。長くなるので解説はここでとめますが、「コミュニケーションがうまくとれないから仕事が漏れる」「日報の書き方が悪いから仕事の進捗を把握できない」などと考える前に、そもそも「何を・いつ・誰がやるのか」をきちんと定義・共有していないのではないか、と疑うべきです。
2. マニュアル整備
リモートワークのポイントは、コミュニケーションを減らすことです。仕事におけるコミュニケーションの大部分は前述のタスク管理に関連する内容ですが、次に多いと観察されるのが、「業務のやりかた」についての質問です。マニュアルは、「業務のやりかた」を記載した文章で、タスクリストを必要に応じて分解したものです。要件は以下の通りです。
マニュアルの要件
第1要件 : タスクリストでは担当者が業務を完遂できない場合に作成される
第2要件 : 担当者がこれを読めば業務を完遂できる
マニュアルを利用することで、担当者の質問頻度が減ります。逆に、担当者の質問が発生したときは、「タスクリストの粒度が不十分」「マニュアルの説明が不十分」を疑い、タスクリストとマニュアルを改善します。つまり、改善の対象は「人」ではなく、「タスクリスト」ないしは「マニュアル」です。リモートワークを原因としてコミュニケーションの弊害が生じて、「仕事がうまく進まない」という事態に陥ったとしても、それはリモートワークの問題ではなく、説明が必要になった背景が問題なのです。
3. 成果物の管理
タスクとマニュアルにより制御された業務の成果物は、常に他のチームメンバーに共有され、整理・格納されなければなりません。繰り返しますが(3度目)、リモートワークのポイントは、コミュニケーションを減らすことです。「00ってどこにあるんだっけ」「XXを共有してください」といったような情報探しの質問を削減することは、これに重要な影響を及ぼします。チームの全員が、何がどこにあるのかを把握している状態を確保するため、以下を提案します。
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ここまでの3点、①タスク管理・②マニュアル整備・③成果物の管理 を徹底することがリモートワークの成功要因の7割を占めます。「難しすぎるぞ」という指摘はもっともです。リモートワークには数々の利点がある一方で、これはとても難しい業務形態であって、管理業務に限っても完遂できる組織はごく一部でしょう。難しい取り組みである、と理解するべきです。
ここからは、リモートワークの成功要因のその他3割について、引き続き私見を記述します。より具体的で身近な内容に至ります。
4. コミュニケーション方法_チャット
チャットを主に用います。これなしにリモートワークは不可能です。会話、電話、メールなどは、いずれもチャットの補助ツールです。利点は、以下の通りです。
1. 物理的面会と違って移動する必要がない
2. 電話と違って相手を突然邪魔することがない
3. メールと違って即時性がある
4. 会話や電話と違って保存性があり、あとから参照できる
5. 即時性がありながら文章なので落ち着いて論理的思考ができる
これらの利点を生かせる限りにおいて、同じ部屋で仕事をしている人との会話でも、私はチャットを使います。重要なのは、「会話や電話と違って保存性があり、あとから参照できる」という点です。物理的面会や電話による会話では、そこで交換される情報はその場で流されて消えてしまいます。しかしチャットよる会話では保存され、資産として将来活用することができます。当然、発言への責任は増します。また、「論理的思考ができる」という点も重要なのですが、その議論はまた今度にします。ひとことで言うと、非論理的な人をあぶり出します。このようにリモートワークには、保存されない会話や非論理的な会話を強制的に削減するという利点があります。
利用時の注意点は、以下の通りです。
1. メンション・DMは即時返信する
- 何をしていても、すぐに返事する。「あとで返します」でもよい
2. できるだけ広い概念のチャンネルで会話をする
- 多くの人が情報にアクセスできるように
3. チャンネル数を最低限に保つ
- 情報の検索性を維持する。議論の場を迷わせない。管理コストを増やさない
4. 理解できる文章を書く
- 誤解・余計なコミュニケーションを生まないように
「4. 理解できる文章を書く」について。リモートワークでは、コミュニケーションの手段が、口頭から文章に移ります。すると突然、何を伝えようとしているのかわからない文章を書く人が現れます。身近にそういった人がいてこれを改善させたい場合・文章作成に自信がない場合(私も該当します)で、手っ取り早く基本ルールだけを抑えたい方には以下の書籍を入門本として薦めます。唐木元『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』(2015)・阿部紘久『文章力の基本』(2009)。*商品リンクはまとめて当記事最下部に掲載しておきます。
5. コミュニケーション方法_その他
「始業・終業時にオンラインミーティングをするべきか」という質問を受けます。不要です。報告や会話はその需要がうまれるたびに実施されべきであり、時の経過を待つ必要はありません。この「即時伝達の原則」に準拠すれば、始業・終業時 に交わされるべきコンテンツは存在しません。感情的な要因から「やりたい」と感じるのであれば、やればいいと思いますが。関連する議論である「仕事のリズム」については後述します。
「オンライン会議をどう利用するべきか」という質問を受けます。必要最低限にとどめ、そのうえで、記録に残したくない会話・量が膨大になることが想定される会話・どのような内容になるか想像できない会話・会話することが目的の会話 などに限りこれを利用します。LINE・FB・Slack・Zoom のいずれかを関係性(繋がり方)に応じて私は使い分けています。コールの終了後、その会話を簡単にまとめたメモをチャットに送ることが大切です。先方との内容理解に齟齬がないことを確かめつつ、将来利用するために記録しています。「記録に残したくない会話」では、自分の手元に書き留めておきます。
「リモートワークでは雑談ができない」という指摘を目にします。具体的には「寂しい・面白さがない」「創造的発想が生まれない」ことを問題視しているようです。そうであれば自由にコールでもすればよいと思いますが、その目的からはむしろ同じチームのメンバーに限らず、リモートワークであることを生かし、世界中のさまざまな人々と積極的に会話をするべきではないでしょうか。仕事場での雑談が生じる理由は、目の前に人が存在する・オフィスに一定時間拘束されている、この2つです。関連するリモートワークの特徴は、世界中すべての知人がツールの向こうに同じ距離で存在する・時間的拘束がない、この2つです。「同じ距離」には、チームのメンバーも含みます。誰もがボタンひとつで会話できる同じ距離にいる、ということです。「時間的拘束がない」とは、仕事の手を休めた瞬間にオフィス環境と文化に影響を受けない自分だけの自由時間が訪れるという意味です。この状況下では、「チームメンバーとの雑談」は「家族との会話」「海外の知人との会話」「読書」「ゲーム」などと並列の選択肢です。誰と雑談するにも同じ工数なのであれば、職場の人と雑談するでしょうか。何をしても良いのなら、そもそも雑談をするでしょうか。職場での雑談に利点がないと言っているわけではありません。時間の使い方としてもっと価値のある選択肢が存在するのではないか、という指摘をしています。
6. 紙問題
きちんと業務設計された管理チームにとって最大の敵は、紙資料です。「成果物の管理」に掲載したスライドの通り、すべての紙資料はPDF化してGoogleDriveに格納されますが、そのためには誰かがオフィスに居る必要があります。また「すべての紙資料」と書きましたが、実際は郵送されてくる紙資料のうち、必要・不必要を峻別するという作業も行われます。ひとつの過激な解決策は「住所をバーチャルオフィスにする。転送先を業務アウトソースベンダーにする。すべてをPDF格納してもらう。」という方法です。難しいと思います。したがって、「いかに紙資料を減らすのか」が努力の対象です。そして、これを読まれるような方々はもう既に限界まで”ペーパーレス化”を進めているのではないかと想像するので、以下では簡単にポイントを掲示するにとどめます。
1. 法律で保存が要求される紙以外は捨てる
2. オンライン署名ツールを使う(登記上必須の書面以外は「すべて」)
3. 紙での提出が必要な申請書は外部ベンダーへ委任する
4. 業務管理ツールを使う(請求書発行、経費精算、労務など)
5. ベンダーへ、紙の請求書をPDFへ切り替えるよう依頼する
当たり前の指摘です。参考までに私は、オンライン署名ツールはHelloSign・請求書発行や経費精算はMFクラウド・労務はSmartHR を使っています。
「クライアントによっては『請求書を紙で送れ』といわれる。どうするべきか」という質問を受けます。私の顧客が紙の請求書の発行を強制されているのを観察することもあるし、私の事務所が発行する請求書にたいして言われた経験もあります。大企業に多い。社会全体のコストを上げていることを恥じるべきです。そういったとき私は、断固として紙の請求書を送りません。期限どおりに振り込まれなかったら弁護士から別の書面を送る旨を伝達します。紙の請求書を送ることは、その悪習を助長することになるため、絶対に送りません。短期的には利益を失うことになりますが、長期的には請求書発行プロセスから紙資料が根絶するという利益が得られ、なにより、自分の正義が保たれる点においてこれは大切なことです(これは些末な例ですが、利益より優先される正義は沢山あります)。汎用的な解決策が提示できず申し訳ないのですが、しかし時代の流れとともに変わっていくものと想像しています。ちなみに、クライアントに紙の請求書の発行を強制している大企業は、今回の件でリモートワークを導入し、送付先担当者は在宅勤務をしているのですが、「こちらリモート中なので請求書はデータでお送りください。あわせて原本として紙を本社へ郵送してください」と伝達してきたとのことです。
一方でベンダーから受け取る請求書は、こちらが支払側で立場が強く、ゆえに電子化の意見が通りやすい傾向にあります。PDF請求書の送付をお願いしたところ、「言ってくれれば前からそうしていましたよ」と返答される場合もあるので、まずは伝達することです。しかし、対応してもらえない場合もあって、これはやっかいな問題です。ベンダーには替えが効かないケースがあるためです(逆に替えが効くベンダーはすぐに切り替えればよい)。
「送られてくる請求書のタイトルをみれば先方の管理体制のレベルがわかる」という話をしようと思ったのですが、長くなったのでここで止めておきます。
7. 物体問題
「物体」とは、印鑑・通帳・銀行の振込トークン などを指します。紙問題と似ています。印鑑は、これをできるだけ使わない努力をします。具体的には、紙問題で述べた通り、すべてをオンライン署名ツールで処理し、残る一部の業務に印鑑を"しかたなく"使います。ここで意見の分かれる論点があります。私は、「従業員・弁護士・司法書士・社労士 が、それぞれ法人印を保管し、必要に応じ押印する」という体制をとるべきだと考えています。具体的には、各者がPDFで当該書面をオンライン署名ツールで共有し権限者がそこに署名をした上で、各者がそれぞれの場所で手元の書面に押印する、というプロセスです。弁護士・司法書士・社労士 など外部ベンダーへの貸与が難しければ、せめてフルリモート局面では従業員に持ってもらうべきです。根底には信頼関係が必要ですが、管理部としてはそもそも「悪いことをしようとすればいつでもできる」状態であって、リスクに重要な影響はありません。もちろん同居者や泥棒のリスクは勘案するべきですが...。
通帳・銀行振込トークン については言うまでもなく、そういったものが必要な銀行をなるべく使わないようにする。借入関連で付き合いがあっても振込などで口座を利用しなければいい。さいあく、毎月の記帳だけ残ってしまいますが、長期的には解約しオンラインのみで完結する口座に移行するべきです。
8. 個人の仕事場問題
それぞれが自宅でどのような状態を構築すると効率的に仕事ができるのか、挙げだすとキリがないので3つに絞って記述します。
雑音のカット。最も大切なことは、雑音を消すことです。入学試験や資格試験の会場で、話し声・笑い声・テレビの雑音 などは聞こえません。聞こえればおそらく集中ができず結果に悪影響をおよぼします。仕事も同様です。集中状態を維持し成果の質を確保するためには雑音を消さなければなりません。雑音とは「集中力を害する音」です。したがって「雑音を消す」方法は「音をカットする」以外に「音楽を聞く」を含みます。個室や個人ブースなど空間を隔離すること以上に、音を隔離することが大切です。最近ではAppleのAirPods Proにノイズキャンセリングが搭載されて私も愛用していますが、雑音を消す機能だけでいえば、BoseのQuietControl 30が上です(ただし壊れやすい)。家族などと同居していて、会話やテレビなどの雑音が懸念される場合は、イヤホンを常に装着することを薦めます。
良い椅子。椅子は集中力と身体的疲労に直結します。良い椅子で実際に仕事をするまで、そのことには気づきません。机は何でも良いのです。椅子が致命的に重要です。私が長年愛用しているオススメの椅子は、ハーマンミラーセイルチェアです。
モニター。自宅にもモニターを用意するべきです。モニターを使うことの効果は省略します。自宅のモニターとして最適なのは、ASUSのモバイルモニターです。タブレットのような形状で15.6インチありながら持ち運びが可能。収納もかさばりません。出張先でも重宝します。ただし、最近MacBookとiPadの接続がボタンひとつに簡略化されてiPadProの12.9インチをモニタとして使うほうが持ち運びデバイスが少なくて効率的になってしまい、出張には持っていかなくなりました。引き続き自宅では活躍しています。
ちなみに、私のデスク構成は、PC(MacBookPro13インチ)・PC画面の上側にモニタ(15.6インチ/34インチワイド/43インチ)・右手にiPad(10.2インチ)・左手に電卓・手の届く範囲に紙と製図用シャープペンシル です。15.6インチのモニタを使うときは、その下に本などを積んで高さを出します。目線を「左右」ではなく「上下」に動かしたいのです。モニタの大きさは環境や仕事内容ごとに使い分けます。iPadは、作業内容次第でBloombergTV・音楽を鳴らしつつ、オンライン会議に使います。会議とPC利用を両立させるためです。電卓はこちらの記事を参照してください。
9. 仕事のリズム問題
「リモートワークでは仕事のリズムを確保するのが難しい」という指摘を目にします。ようするに「家ではサボってしまう」「朝からちゃんと働けない」といった内容です。私は、「リモートワークではオフィスと同じリズムで働く必要はない」と考えています。オフィスにおける仕事のリズムは、集団を物理的に統制するために生まれた副産物であり、仕事の目的ではありません。仕事の目的は、仕事を完遂することです。朝9時から夜5時まで職場にいることが仕事の目的ではない、ということです。
リモートワークを続ける中で自然に湧いてくるリズムが、そのひと本来のリズムであって、それを無理に矯正する必要はありません。人は誰もが自分のリズムで生活するべきである、これが原則です。毎日、空間と時間に支配されて働くことが例外的状態なのです。「雑談」の章で記載したとおり、過ごしたいように過ごせば良く、その自由を疑わないで欲しい。7時間継続して働く必要はなく、1時間ずつ趣味や家族との時間と交互に楽しんだり、15分ごとに読書と切り替えても良いわけです。
私のコアタイムは、23時から28時までの深夜です。朝から16時ぐらいまではほとんど脳が寝ています。実際に寝ているか読書をしたりのんびりしています。会社勤めをしていた頃はこのギャップにとても苦労をしました。
実際にやってみればわかりますが、自由気ままに過ごしていても、仕事の期限が近づけば勝手にやる気が湧いて、仕事に手を付け始めます。リーダーからの催促があれば、すぐに取り掛かります。読書などをしていても、自分宛のメンションのついたチャットが飛んでくれば、すぐに返信します。それは、いわゆるオフィスアワーとは無関係に、自分がやりたいことのひとつとして仕事を選択をした、その結果です。自分のリズムなのです。
「リモートワークだと、期限が近づいても・催促を受けても仕事ができない」という指摘があります。こういう人には、自分のリズムで自由に過ごす権利を残念ながら与えられません。リーダーは常時カメラで監視・指示する等の支配的対応をしなければなりません。とても残念です。ただし、それでも実際に出社させられるより支配圧力は弱いのではないでしょうか。
あとがき
「理想論ばかりだ」について。私は常に理想を目指しています。現実的問題へのアプローチは、何が理想かを考え、目的を固定し、逆算でどこまで妥協をしなければならないのかを検証する、というプロセスです。仕事の目的は、仕事の完遂です。目的のために妥協を繰り返し、結果として理想からかけ離れた状態がつくられても、それはあくまで妥協した、例外的な状態であると意識することが大切です(なお、理想には、「原則」「あるべき」「正義」をあてはめても概ね間違いありません)。
「現実がわかっていない」について。私は経済社会における立場柄、日本に限らず世界各国のさまざまな規模の管理チームと、能力が広く分布する管理スタッフを観察してきました。あまり一般的ではない量と幅広さであって、私に経験不足の観点から抗議をするのは少し難しいと思います。
「具体性が不十分だ」について。確かにそのとおりです。実務の現場では、たくさんのタスク管理手法やマニュアルを使用しています。それらを解説すればそのまま各社の運用に乗せることができるかもしれません。ただし、あまり具体的な方法論では、適用可能な範囲が狭くなります。限定的な状況だけで使える道具になってしまう。適用可能な範囲を広くしようと試みると、どうしても抽象的になります。したがってここでは「リモートワークを確実に成功に導く10つの方法」のような形式ではなく、理屈を説明しつつ、たとえば私は...と簡単に自分の例を取り上げるに留めました。たとえば「リズム」の章で、「朝起きたら窓をあけて空気を入れ替え日光を浴びましょう」という指摘をするとして。軽井沢の初夏であれば良いかもしれませんが、冬では寒い。3月であれば花粉が気になる。私は目が日光に弱くて直接浴びると痛むし、そもそも、自宅マンションの窓(トップ画像)は壁一面のはめ殺しで開きません。馬鹿みたいな例ですが、概ね似たような論理で、具体的すぎる方法論というのは利用範囲が狭くなります。もちろん、本記事で記述しなかったのは、実務で使える程度に具体的な方法論は量が膨大でとても簡単な気持ちで説明できるようなものではない、という点も背景にありますが...。
最後に。これはエッセイです。語尾を「...です」「...ます」と記述していますが、それらはすべて「...だと思います」を省略したものである旨、ご了承ください。
以上