【小説】 変える、変われる。 : 75
次の日も連絡は来なかった。
体調でも崩していないと良いなと思いつつ、しつこく連絡をするのも気が引けるので、メールだけ入れて様子を見ることにした。
「度々ですいません。お暇な時にご連絡下さい。お待ちしています。」
することも無いし、書類も無いけど行くだけ行ってみようと最寄りの職安へ行ってみた。
電車で昼過ぎ位に到着すると、職安の玄関付近は建物の中へ至るまで啓蒙ポスターが貼られていて圧迫感がある。
職業訓練校の案内や求職、求人の案内が至るところに貼ってある。
当たり前だけど楽しい場所では無いし、切迫感と殺伐とした雰囲気に包まれている。知り合い同士で訪れる訳でも無いから相談員や受付の方以外とは、誰も会話も無い。
何かの番号を呼ばれて何かの書類を出したり受け取ったり。
免許の交付なんかも番号で呼ばれるけど、あれは合格だったり無事に更新出来て良かったといった安堵感で、面倒と思うことはあっても重苦しい空気感は無い。
何となく見ていたら失業手当の手続きで並んでいることがわかってきた。
この感じで手続きをしに何回か足を運ぶのかと思うと、相談をして早く転職が決まれば良いけど、精神的に追い込まれそうな気がする。
ざっと見て回ると、S駅にも求人検索の出来るコーナーが設けられているとわかった。
玉ちゃんから書類を送ってもらうまでは、S駅へ行くことにしよう。。。
特に用事は無いので、歩いて帰ることにした。
1時間強掛かるけど、気分転換と散歩を兼ねるのに余りあるし、日差しと風が心地よい。
途中で飲み物を買って、公園のベンチで休憩をした。
犬の散歩や小さい子とお母さんがブルーシートを広げたりして、のんびり過ごしている。
自分も公園中央の噴水が様々に噴出しているのを「あの水は循環しているのかしら」など、どうでも良さそうなことを思いながら眺めていた。
ああ、陽射しが暖かいなぁとウトウトし始めた時に電話が鳴った。
「もしもし、木村さんのお電話で宜しかったでしょうか?」
石黒さんからだった。早口でこそこそと話している感じがする。
「あ、はい。木村です。石黒さん?」
「はい、石黒です。メール、返信出来なくて申し訳ありませんでした。」
「いえ、お忙しいと思ったので。何回もすいませんでした。」
「あの、明日は木村さんご用事ありますか?」
「当分、何も用事が無いです、あはは・・」
「・・、明日は定時に帰れると思うので、19時くらいにS駅かK駅で良かったら。。」
「了解です、19時にS駅でお待ちしています。忙しかったら、無理しないでくださいね。僕はいつでも大丈夫ですから。」
「あ! 明日また・・」
プツっと途中みたいに電話が切れた。
ちょっと嫌な予感がした。
いや、ちょっとどころじゃない、相当高い確率でまだ二人組に石黒さんがやられていると思う。今の切り方は多分また。。
明日、会えると良いけど、、
もし、会えなかったら、会いに行こう。
迷惑かもしれないけど、会いたい。