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【小説】 変える、変われる。 : 15

何だかんだで夕方近くなって、これから何かしようとする気力は失せていた。

さっさと帰ってグダグダ過ごそうと思っていると、おばちゃんの提案で自分の実家へ行こうということになってしまった。

「ゆきちゃん、最近家に帰ってないでしょう。花ちゃんが連絡も無いって心配していたわよ」

花ちゃんとは母の花子。ちなみに父は太郎。役所提出書類の見本のような名前の夫婦です。

確かに半年以上家に帰っていないし、電話もしていないから心配させてしまっているかも。自分も一人っ子だから余計そうかな、と、悪い気がしてきた。

「花ちゃ~ん、ゆきちゃん来たわよ~」

おばちゃんが実家に帰ってきたかのように、ズンズン入って行く。

「おねえちゃん、あ、愛ちゃんもいらっしゃい。あれ、何でゆきちゃんいるの?」

のんきな感じで心配されていないけど、まあ、お互い元気なので良いとしましょう。

「お義姉さん、いらっしゃい。あれ、ゆきも?」

誰からも心配されていないことが判明し、父からの「何でいるの?」な雰囲気はとても安定感があって返って心地好い。

「久しぶり。」

「どうしたの?荷物なら何も来ていないけど」

自分が受取れない代わりに荷受けをしてもらう用事以外は、帰って来てはいけないのかと思うほど久しぶり感ゼロ。

「ゆきちゃんにちょっとお願いごとがあって来てもらったのよ。」

「ヒマだったら、手伝わないとね。お義姉さんのところは男手無いから大変、力仕事はゆきに任せてくれたら良いよ。」

ちゃっかり自分を男カウントから外している!

部屋の模様替えやら、高い場所への物の出し入れなど、今までもとっても便利に頑張っていますよ。。

「せっかくみんな揃ったから、お寿司でも取って早いけど夕飯にしようか」

「あら~、ゆきちゃんにたまには顔出さないと!って着いてきただけなのに、悪いわぁ」

「わあ! お寿司だって、やった~!」

これが狙いだったな、上手い!・・と思ったけど、自分も夕飯に預かれるのはラッキーだ、買って帰るのは味気ないし、作るのは面倒だ。

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