【小説】 変える、変われる。 : 95
望月さんと石黒さんと食事をして帰宅をしてからも、はっきりしない出来事に関してあれこれと思案して夜も深くなってから眠ったらしい。
電話が鳴って、「はっ!!」と目が覚めた。
取り敢えずスマホを掴んで出てみると、
「やあ、もちろん寝ていたね。」
玉ちゃんが普通に語りかけて来た。
「・・昨日、寝るのが遅かったみたいで。」
ちょっと寝ぼけているので、他人の話をしているような感じ。
「山がドーンで、飛んだよ。」
「・・え?」
「台風で揺れに揺れて、ゴォ~~~っと燃えた上に山が大爆発。」
「何が・・・?」
「腰巾着オヤジが飛んで、狂った二人がいま会社で、きちがピー状態だって。」
「あの人たち・・?」
「正解! ま、二人のことは詳しくは黒ちゃんから聞けると思うから。オヤジはなかなかの使い込みとパワハラ、セクハラオンパレード。追及で飛んだらしい。」
「飛んだって、連絡取れないってこと?」
「家族ほったらかしで逃げたらしいよ。嫁、放心だってさ。昨日けっこう盛り上げたのに、シレっと出勤してきた二人が発狂中。」
石黒さんがヘンなとばっちりでイヤな目に遭っていないか心配だ。
「起き抜けに刺激的だったかね。二度寝してちょうだい。またね~」
「あっ」
間髪入れずに電話は切れてしまった。
行くとは言ってあるけど、石黒さんに連絡入れないと・・!
「いつもの時間に向かいます」
メールをポチっとすると謎の全容がわかったので、またも睡魔が再び訪れた。
またも電話が鳴って叩き起こされた。
「ふぁ?」
「あ・・・、寝てましたか? すいません、石黒です。」
スマホを握った途端にボタンを押してしまったようだ。
「あ、大丈夫です、お早うございます。」
「あはは、もうお昼なんです。」
「そうでしたか、、早いな。。」
「・・きょうも大丈夫ですか?」
「もちろん大丈夫。遅くなりそう?」
「うん・・、ちょっとわからないんです。昨日、望月さんがお話した感じになっていて。」
「わかった。でも、同じくらいの時間にいるようにするから。大丈夫。」
「ありがとう。。」
「大丈夫?」
「・・大丈夫。」
「後でね。」
「うん!」
三度寝は危ないので、もう起きます。
いつもの18時少し前に、『いますぐ』玄関から死角の位置に車を停めた。
きょうは静かな玄関先で、人の出入りは殆んど無い。
玉ちゃんの話の感じだと、帰りは結構遅いのかもしれないと思った。
18時も10分位過ぎた辺りで、望月さんが階段を降りて来た。
意外や意外、追いかけるように石黒さんも階段をタタっと駆け降りて来た。
石黒さんが望月さんに何か話し掛けると、望月さんがこちらをチラっと見て、二人が一緒にこちらにやってきた。
車の窓を下げると、
「きょうも望月さん、送って・・」
「きょうは大丈夫! 木村くんの捨て身の一撃、山を砕いたよ。じゃ、マイちゃんのこと宜しくね。じゃ、また明日ね!」
望月さんがニヒルな笑みを浮かべつつ、軽く手を振って駅の方へ歩いて行ってしまった。
石黒さんがしばらく望月さんを見送ってから、車に乗って来た。
「二人・・、何があったの?」
石黒さんがビックリした顔をした。
「知ってるんですか?」
「玉ちゃんから朝に電話があって。細かいことは知らないけど。」
「お二人は解雇になりました。」