「岡本太郎賞」を受賞したこと
第27回岡本太郎現代芸術賞(通称:TARO賞)の授賞式が2月16日に行われて、入賞結果が発表された。
私の作品『今日も「あなぐまち」で生きていく』は、最高賞の「岡本太郎賞」を受賞した。
授賞式直後はフワフワとして想いをうまく言葉に出来なかったこと、熊本と神奈川を往復する日々の中で落ち着いて「受賞」を味わうことが出来なかったので、あれから10日ほどが経って、改めて振り返ってみての私の想いを綴ってみようと思う。
「あなぐまち」は、自分らしく生きられなかった子ども時代の私が、私自身の心を救うために生み出した世界(空想の町)だ。
便宜上、「空想」と書いているが、私にはリアルに見えている世界なので「現実そのもの」。
幼少期から物が生きて見えるアニミズム的思考を持ち、現実世界でうまく生きられなかった私は空想の世界と現実の世界を行ったり来たりしながら、そこに住む「物」たちに励ましてもらったり癒やしてもらって大人になった。
実は、ほんの10年前まで「周りの人もこんな風に世界が見えているのだろう」と微塵も疑わなかった私が、この特異性に気が付いたのが32歳の時だった。
「あなぐまち」を頭の中で生み出し、共に生きた期間が約40年。
「あなぐまち」を作品として形にし始めて10年。
嬉しい時も悲しい時も苦しい時も、共に生きて来た。
私には間違いなく見えている世界なのに、嘘つきだと言われたり、頭がおかしいと言われたり…といった辛く悲しい思い出もたくさんある。
そんな「あなぐまち」が、岡本太郎賞を受賞したことで私のこれまで生きてきた時間を肯定してもらえたような、そんな気持ちになったのは正直な感想。
「どんなにバカにされても笑われても、あなぐまちのことを手放さなくて本当に良かった」と心から思う。
今回、受賞したことで本当にたくさんの方々が一緒に喜んでくださったこと、お祝いの言葉やお品をいただいたこと、現地まで足を運んで作品や私に会いに来てくださったことが、10年分(正確には40年分)のご褒美をもらったようで、何よりも嬉しい。
誰かの貴重で有限な人生の時間を、私のために使ってくださることがどれほど有り難く、尊いものなのかを身を以て感じている。
本当にありがとうございます。
大人になった今でも、不器用な生き方しか出来ない私だが、それも含めて「私」。
誰にも負けない得意なこともあれば、誰でもが平気なことでも私にとっては苦手なこともある。
そんな苦手なことだって笑ってネタにできるくらい、今までもこれからも、「ありのまま、等身大の私」で生きていければ…と思っている。
背伸びしたって、きっとずっとは続かないし、居心地も悪い。
私には私のやり方がきっとあるし、それが何をするにしても全ての基準になるに違いない。
私はいつだって自分の可能性を信じているし、誰よりも信じてあげたい。
ここからどんな世界が広がっていくのか、今からとても楽しみだ。
今までずっと応援し続けてくださった皆さんも、TARO賞をキッカケに知ってくださった皆さんも、どうぞ末永くよろしくお願いいたします。
美術家 / あなぐまちの管理人 つん