【ずっと遠くに行きたかった】ブラックボックス
▼基本情報
作品:ブラックボックス
著者:砂川文次
刊行:2022年
出版社:講談社
カテゴリー:文学小説
読んだ月:2022年3月【読書記録⑰】
第166回芥川賞受賞作!
▼概要
ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。
自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。
昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。
▼感想(ネタバレ含みます。)
分かりたくないが、分からなくもない身近な現実
キレやすい性格が故に繰り返す転職、納税違反、警察官への暴力事件、刑務所という負のスパイラルに落ちていく。どこか遠くの世界ではなく、安定しないメッセンジャーという仕事や都内近郊のボロアパートが自分自身にも起こり得る現実として、入ってくる。
んー、もっと深みが欲しかった
刑務の中でメッセンジャー時代に身に付けた知恵を活かしたり、(結果的に)同じ部屋の人を守ることによって、周囲に一目置かれるようになる。日々の代わり映えのしない日常に飽きて、「ずっと遠くへ行きたい」と思っていたサクマが、周囲の変化に気付き、こんな毎日も常に変化していることを理解した。
という改心物語だと、僕は受け取ったが、もう少し深みが欲しかった。芥川賞作品ならでは、の深みがある情景や描写などがあれば、もっと楽しめたと思う。
今の世間も反映したシンプルな作品です。