韓国で、麻薬性医薬品に関して延長登録が許与された事例[判例評釈:特許権存続期間の延長と麻薬類管理法に基づく許可の適用性] 2018허2243 거절결정(특)[試行的判例評釈]当記事は法的助言を与えるものではありません。全ての情報はその正確性と現在の適用可能性を再確認する必要があります。

1. 事案の概要

本件は、麻薬類管理法に基づく品目許可を受けた医薬品について、特許権の存続期間延長が認められるかが争点となった事例である。原告は、**ロカセリン塩酸塩水和物(Belviq)**に関する特許(特許第812925号)について、品目許可取得に要した385日を理由に特許存続期間延長登録を申請した。しかし、特許庁は、延長登録の対象は薬事法(約師法)に基づく許可を受けた医薬品に限られるとして、申請を拒絶した。

原告はこれを不服として特許庁に不服審判を請求したが、特許庁は**「特許法施行令第7条第1号が対象とするのは薬事法による品目許可であり、麻薬類管理法に基づく許可は対象に含まれない」と判断**し、請求を棄却した。このため、原告は特許法院に提訴し、審理が行われた。

2. 判決の概要

特許法院は、特許庁の判断を覆し、原告の請求を認めた。その理由は以下のとおりである。

  1. 行政法規の目的論的解釈の適用

    • 特許法院は、法の文言の解釈において、単に形式的な文言の意味に依拠するのではなく、立法趣旨や制度の目的を重視すべきであると判断した。

    • 特許法第89条は、特許発明の実施に際し、許認可手続きに時間を要する場合に、特許権者に公平な利益を保証することを目的とする。このため、薬事法による許可と同様に、麻薬類管理法に基づく許可も延長対象に含めるのが合理的であるとした。

  2. 麻薬類管理法と薬事法の許可手続きの実質的同一性

    • 本件医薬品は、当初、薬事法に基づく許可が必要とされたが、法改正により麻薬類管理法の対象となった

    • しかし、両法に基づく許可の審査基準、必要書類、審査機関(韓国食品医薬品安全処)の点では大きな違いがなく、実質的に同一の審査プロセスが適用される

    • 特許法院は、薬事法による許可と麻薬類管理法による許可に本質的な差異がないため、形式的な法律の違いを理由に存続期間延長の対象から排除するのは不合理であると判断した。

  3. 特許法施行令の解釈と立法の趣旨

    • 特許法施行令第7条第1号は、「薬事法に基づく品目許可」を存続期間延長の対象としている

    • しかし、特許法第89条の規定は「許可等に長期間を要する場合」に存続期間の延長を認める趣旨であり、許可の根拠法が異なることのみを理由に適用を制限することは、特許法の趣旨に反する

    • 特許法院は、施行令が麻薬類管理法に基づく許可を明示的に排除しているわけではないことから、制度の趣旨を踏まえて広く解釈すべきであると判断した。

3. 判決の意義と影響

本判決は、特許権存続期間延長の対象を広げ、麻薬類管理法に基づく許可を受けた医薬品についても適用されることを認めた点で、特許法解釈に大きな影響を与える重要な事例である。その意義を以下の観点から整理する。

(1) 特許法解釈における目的論的アプローチの強化

本判決は、特許法解釈において、単なる文言の解釈ではなく、制度の趣旨や立法目的を重視する目的論的アプローチを採用した。

  • 特許権存続期間延長の目的は、許認可手続きによる不利益を補償することにあるため、手続きの本質が同じであれば、根拠法の違いのみによって異なる扱いをするのは妥当でないとされた。

  • これは、今後の特許実務において、特許制度の趣旨に沿った柔軟な解釈を促す先例となる可能性がある

(2) 特許庁の運用実務への影響

本判決により、特許庁は従来の運用方針を変更する必要がある可能性がある。

  • これまでの実務では、薬事法に基づく品目許可を受けた医薬品のみが延長対象とされていた

  • しかし、本判決により、麻薬類管理法に基づく許可を受けた医薬品も存続期間延長の対象となることが明確になり、特許庁の審査基準や運用方針の見直しが求められる

  • 今後、特許庁が新たな審査基準を策定し、特許権者に対してより明確な指針を示すことが期待される

(3) 他の特別法に基づく許可との関係

  • 本判決は、麻薬類管理法以外の特別法に基づく許可にも存続期間延長が適用される可能性を示唆している

  • 例えば、農薬管理法や生物由来製品に関する規制法に基づく許可も、同様の論理で延長対象とされる可能性がある

  • これにより、特許権存続期間延長制度の適用範囲が拡大し、より多くの特許権者がこの制度を利用できるようになる可能性がある

4. 今後の課題

本判決を踏まえ、以下の課題が指摘される。

  1. 特許庁の審査基準の明確化

    • 麻薬類管理法以外の特別法に基づく許可も存続期間延長の対象となるのか、明確な指針が求められる。

  2. 立法による対応の可能性

    • 特許法施行令第7条の改正により、適用範囲が明確化される可能性がある。

  3. 国際的整合性の確保

    • 米国や欧州における類似制度と整合性を確保する必要がある。

5. 結論

本判決は、特許権存続期間延長の適用範囲を広げる画期的な判断であり、特許制度の柔軟な解釈を促す重要な判例である。今後の特許実務において、本判決の影響を踏まえた対応が求められる。

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