freeeの価値の伝え方
「freee"マジ価値"meetup!」の全国大会であるMAJIKACHI JAPAN TOUR 2019 TOKYOでLTをしてきました。
2018年10月、10人ほどの経営者の方々の前で発表した「MoneyForwardクラウドとfreee」というスライドが、一夜にしてバズり、これをきっかけに色んな方面から声をかけていただくようになりました。
当時(今でもそうですが)、クラウド会計についてWebで色々調べても、単なる機能や価格の比較しかなく、「結局何がいいのかよく分からない」、「どっちでも同じようなものに見える」という声をよく聞いたので、いわゆる会計ソフトの機能比較とは全く違う軸で説明してみよう、と思ったのがこのスライドでした。
それから9ヵ月、業務設計を行うための会社も設立し、企業の業務プロセスを再構築するという仕事をやってきたのですが、その中で聞くようになったのは、経理の方々の「freeeは使いにくい」「freeeはよく分からない」という不満の声でした。最もfreeeを使いこなして欲しい職種の方々が、アンチfreeeの急先鋒になってしまっている、というのが現実です。
freeeも機能面ではまだまだ足りない部分は多いですし、すべての企業がfreeeを入れるべきだとは思いません。ただ、「業務を効率化したい」「データを上流から下流まで一気通貫させたい」という要望に対して、中小企業にとって最適な打ち手が「freeeを入れて、業務全体を再構築する」ことであると私は考えています。
複式簿記は素晴らしい仕組みですし、紙で行われていた記帳作業をコンピューターに置き換えた会計ソフトの功績は称賛されるべきです。ただ、SaaSが主流になり、営業やマーケティング側のツールが圧倒的なスピード感で進化していく中で、会計ソフトだけがいまだに「手で入力するもの」という世界観を頑なに守ろうとしているのは、滑稽に思えます。
クラウド化する価値とは、データの保存場所が自社サーバーからクラウドに移るということだけではありません。クラウドにある他の様々なアプリケーションと繋がり、これまでバラバラだった業務やデータ処理がスムーズになってこそ真の価値が発揮されるのです。
会計ソフトは「仕訳」という独自の言語を持ち、財務諸表や税務の申告書を作成するために必要不可欠なものです。ただ、データ入力は必ずしも人が行う必要はありません。あらゆる取引のデータを取得し、処理し、財務諸表としてアウトプットすることができる仕組みさえあればいいのです。仕訳を入力することそのものに価値はありません。
freeeはアプリストアを発表しました。会計データを集約するためのプラットフォームとして進化し、その上流、下流の処理は様々なアプリケーションと接続することで実現するという世界を作ろうとしています。
これまでの会計ソフトとは全く違うものであり、freeeは会計のプラットフォームになろうとしているのです。経理はその知識を「仕訳を切るため」ではなく、「正しくデータが集約し、処理されるため」の業務フローや連携の設計のために使わなければなりません。会計知識は不要になるどころか、これまでよりも高度で本質的な知識が求められていくはずです。
freeeの真の価値は、これまでの会計ソフトの延長で見ても理解ができません。これから確実に「事務作業」という仕事はなくなっていきます。しかし、業務フローを設計したり、全体を最適化させることができるのは、きちんとした知識のある専門家だけです。オペレーションを極めるのではなく、広い視野をもって業務全体を捉え、経理そのものをアップデートできる人だけが生き残るでしょう。