Excelは業務管理に向かない
こんにちは、BYARDの武内です。
Paypalの生々しい創業物語である『創始者たち』を読みました。
「ペイパル・マフィア」であるピーター・ティールやイーロン・マスク、マックス・レヴチンなどの活躍は知っていましたが、Paypalの創業期にいったい何があったのかという話はほとんど知らなかったため、かなりの分厚い本ですが、一気に読んでしまいました。
明確な思想とスーパーなハードワーク、そして狂気とも言える企業文化など、私が知っているシリコンバレーのどのスタートアップとは違うPaypalの物語に、たくさんの刺激をもらいました。今話題のイーロン・マスクがこだわる「X」という名称についてのエピソードもでてきます。
さて、今回のnoteはExcelについてです。
1.Excelの使いどころ
最強の表計算ソフトExcel
Microsoft Officeとして提供されているWord、Excel、PowerPointは長い間ビジネスパーソンに愛用されてきました。近年はGoogle Documentなどの代替ツールの登場や、SaaSの普及によって、必ずしもこれらのツールを使いこなさなくても業務ができるようにもなってきましたが、今でもMicrosoft Office製品はそれぞれかなり高機能であり、使いこなすことで成果が出しやすくなることは間違いありません。
そんなMicrosoft Office製品の中でも、使える人と使えない人との差が大きいのがExcelです。
表計算ソフトは、1979年にAppleⅡ(Macintoshより前のApple製の機種)用の表計算ソフト「VisiCalc(ビジカルク)」が発売されたことをきっかけに、ビジネス用途で広く使われはじめました。その後、ロータス社製の「Lotus1-2-3」がPC用の表計算ソフトとして大ヒットし、それに対抗するためにMicrosoftが開発したのが「Excel」です。1990年代のWindowsの快進撃ともに、「表計算ソフト=Excel」の地位を不動のものにしました。
私自身は、最近はそんなに複雑な関数を使ったりする業務はやらなくなりましたが、Excelの勉強はすればするほど作業の効率化がすぐにできるので、若手の頃はかなりの時間を使ってスキルを習得したりもしました。自分でいうのもあれですが、たぶん「Excelが得意」と言っていい程度には使えるスキルは身についていると思います。
それなりにExcelは使えますが、あまりにも「何でもExcelでやろうとする人」が多いことに弊易して、5年前にこういう記事を書きました。
Excelがある世界とない世界を比較した際、特にプログラミングができない人にとっては各種計算や集計などの生産性は段違い変わるでしょう。単純なSum関数やAverage関数であっても、Excelなしでは数百行ある表の数値を計算しようとは思いません。
また「表計算ソフト」の名前にもある通り、マトリックス形式で表組みさえできれば、それらを使って計算やグラフ作成など様々なことが可能になります。行列の幅や罫線なども自由に変更できるため、手描きで様々な表を作成するよりも遥かにExcelの方が効率が高く作業ができます。
行と列というシンプルなフォーマットの中で、様々な表現や処理が可能なExcelはビジネスパーソンの強い味方です。
誤ったExcelの使い方
しかし、自由度が高すぎるがゆえに、誤った使い方をしてしまうケースが多発するのもExcelです。悪名高い「神エクセル」などはその最たる例でしょう。
まぁこれは誰が見てもダメなのは一目瞭然なのですが、タチが悪いのは「Excelで頑張ってやろうとすることで、現場の生産性を落としている」DB系の使い方です。Excel(以下、特に言及がない場合はGoogle Spredsheetも含みます)は柔軟性が高いので、さまざまなものを管理する表が簡単に作れてしまうのですが、継続的にデータを出し入れし、蓄積していくタイプの活用方法は修羅の道です。
スモールビジネス規模なら1人で作成・管理もできますが、組織のDBとして多頻度で書き込みや編集・加工をする用途でのExcel活用はオススメできません。各セルの変更ログも保持できませんし、細かい権限管理をすることもできないので、あっという間に運用が破綻します。破綻してしまいますが、それを防ぐためにExcelの守人をつけている企業も結構あります。
Excelは(実質)無料で使えるので、Excelで何でもやった方がコストがかからないように見えますが、その運用を維持するために多くの人と時間を使ったり、それによって発生する様々なトラブルのリカバリーのことを考えると、「何でもExcelでやろうとする運用」はコスパがむしろ悪くなるケースの方が多いのではないでしょうか。
Excelが向いているのは、ある時点における数値の加工や分析です。スモールビジネス規模ではExcel管理でも問題なかった従業員DBや顧客管理DB(契約管理、請求管理なども含む)も、ビジネス規模が大きくなったタイミングでExcelからの脱却を検討することが必要です。
また、タスク管理やプロジェクト管理などの業務管理用途については、運用ルールが固まる前にプロトタイプとしてExcelでいったん組み立てみるのはオススメの使い方です。しかし、ある程度運用が固まった段階でこちらもExcelからの脱却を検討するべきです。
ここからは業務管理用途についてもう少し掘り下げていきます。
2.Excelは業務管理ツール向きではない
業務管理ツールの代表格は、タスク管理ツールとプロジェクト管理ツールです。個々人のちょっとしたタスク管理、社内で発生するタスクのアサイン、チームで対応するプロジェクトの進捗管理など、仕事を進める上でなくてはならないのが業務管理ツールです。
タスク管理ツールは個々人のTODO管理をベースに構築されたものが多く、チームで利用する場合でも各TODOの管理主体は担当者個人です。タスク対応の漏れをなくすことを主目的として導入されるケースが多いと思います。
一方で、プロジェクト管理ツールはチームでの活用を想定したものが多く、まずは全体のスケジュールを見ながら各担当者に業務をアサインしていく使い方がメインです。大きな単位での「業務」を中長期(3〜12ヶ月程度が多い)で管理することに適したツールです。
もちろんExcelを使って、タスク管理ツールっぽいものや、プロジェクト管理ツールっぽいものを作ることは可能です。
タスク管理の場合は、1つの業務を完了させるためのタスクを細分化し、それぞれに担当者や期限を付与して、管理していきます。Excelの場合は行列ともに柔軟に追加ができるため、まだ業務内容が固まっていない場合はまずはExcelにタスクを細分化しながら進めていくやり方は理にかなっています。
ただ、Excelでタスク管理する際に問題が出てくるのは、発生頻度が多い場合、もしくは関わる人数が多い場合です。社員数が十名程度で、そのタスク管理を行う担当者が1人とかであれば問題ありませんが、担当者10名が同じExcel上でタスク管理しようとすると破綻しますし、担当者が少数でも月に50〜100程度の業務数を管理しようとするカオスになります。
Excelはあくまでも表計算ソフトなので、権限管理や期限通知、操作の制限などを厳格に行うことはできません。複数人or多頻度のタスク管理をしたいのであれば、きちんとしたタスク管理ツールを使うべきなのです。
同じく、プロジェクト管理もExcelで暫定的に行うことは可能です。最近では日付を入れるだけで簡単にガントチャートっぽいものを作成できたりもするので、小さなプロジェクトでまずはExcel上でスケジュールを立て、タスクを分解し、担当者をアサインしていく、という使い方は良いでしょう。
しかし、プロジェクトが本格的に動き出し、関わる人数も増え、進捗も進んでくると、プロジェクト期間やタスクの見直しも発生します。また、各担当者が複数のプロジェクトを掛け持ちしているケースも多いでしょう。こういう場合にはExcelでの管理はかなり対応が難しくなってきます。本格的なプロジェクトにはやはりExcelではなくプロジェクト管理ツールを使うべきです。
特に大小様々なプロジェクトをまたいで、自分が担当する業務を集約して管理する、ということはExcelでやっている限り不可能です。そうなると、各担当者がプロジェクト管理用のExcelとは別に、自分のタスクを管理するExcelやツールを用意することになります。そうなると、自分の手元のExcel/ツールで普段は管理していて、処理が終わった際に一気にプロジェクト側のタスクにチェックを付ける、という運用が常態化します。
これはほんの一例ですが、Excel管理の一番の問題は「リアルタイムの反映」ではないかと私は思っています。プロジェクトマネージャーとしては、今何がどうなっているかが最も知りたい情報ですが、Excelはそういうものを考慮して作られたシステムではないので、そこに大きな非効率性が生じます。
いくらExcelが(実質)無料だからといって、進捗管理のために頻繁にミーティングを開いたり、「あれはどうなった?」みたいなチャットが飛び交うような状態が続くと、その生産性の低さが方が大きな問題になりそうです。
3.本当にタスク管理/プロジェクト管理がしたいのか
様々な企業からヒアリングをしていると「既存のタスク管理ツール・プロジェクト管理ツールを試したが、いずれもしっくりこないので、結局Excelで業務管理をしている」というケースも頻繁に目にします。
タスク管理ツールはタスクの備忘録(リマインダー)的な使い方に機能が発展し、プロジェクト管理ツールはスケジュールを引いた通りに業務が進行しているかを管理することがメイン機能になっています。
いずれのツールでも業務管理がしんどいのは、複数人が関わり、かつ、短期間(1〜3ヶ月程度)で業務が完結し、同じような業務プロセスを何度も繰り返し行うようなタイプの業務です。
具体的には、受注処理(契約やそれに付随する業務)、入社対応(雇用契約、アカウント発行、備品準備など)、購買処理(事前稟議や発注処理、支払処理など)などの事務的な業務の中でもそれなりに複雑で、複数の担当者をまたぐ業務です。
タスク管理ツールは基本的には個々人の管理に依存してしまいますし、プロジェクト管理ツールはPMO的な動きをする人がいる前提での機能になっているので、旗振り役がいない事務的な業務では、発生頻度が多くなると管理不能に陥ります。
個々のタスク管理であればいいのですが、大半の業務は5〜10個のタスクが組み合わされて業務プロセスを形成しているので、それらの前後関係や依存関係を認識した上で、全体をコントロールする必要があります。
タスク管理ツールも、プロジェクト管理ツールも使えないので、ワークフローシステムを使えば全体がコントロールできるかも、と思う人も多いのですが、ワークフローシステムは実質「電子稟議ツール」であり、全体の業務プロセスのコントロールには全く向いていません。
こういう消去法で結局Excelでの業務管理になってしまう、という場面をたくさん見てきました。Excelが最適でないのは分かっているが、他に適したツールがないので、しんどいのを我慢してExcelで業務管理を続けてしまう。
これは現場働いている人にとってもしんどいですし、マネジメント側も状況が正確・リアルタイムに把握できず、事業が拡大するほどに大きなリスクを抱えてしまう状態だといえます。
4.業務プロセスを意識しながら業務管理できるBYARD
私自身がバックオフィスを中心にキャリアを形成してきており、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールがいまいちしっくりこない感じや、Excelでの業務管理はしんどいが他に選択肢がない、という感覚についてはほぼ実体験です。
だからこそ、BYARDを起業する際にはどういうツールにするかは別にして、この領域のペインを解消することが出来るプロダクト・サービスを提供したいということだけは、強く心に決めていました。
単発の処理タスクではなく、ある程度のサイズの業務をコントロールすることが必要なので、プロジェクト管理の思想を用いながら、業務プロセスの可視化や期限管理、業務の改善や標準化、担当者間のコミュニケーションなどカバーできれば、私と同じように多くの人が探している「こういうツールがあったらいいな」に近づけるのではないか、そんな思いでBYARDの開発はスタートしています。
BYARDの強みは、担当者の頭の中にある業務プロセスをパッと構築できることに加えて、そこに直接タスクを埋め込むことが出来るため、実際にタスクを処理しながらも常に全体の業務プロセスを意識することができることにあります。
発生頻度が高い業務ほど単に自分のタスクをこなすだけになりがちであり、またベテランの人ほど業務フロー図やマニュアルを見ずに業務をするので、ツールのUI上で「常に業務プロセス全体を見えるようにする」ことは重要であると考えています。
できることと、やりやすいことは違います。
機能の○×表では「○」になっている機能でも、それが実務に耐えうるレベルの機能を提供しているとは限りません。
Excelは非常に柔軟なツールであるため、「やれなくはないが、運用がしんどい(無理)」という状況に陥りがちです。タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールも、その用途に適した業務で使わなければ、その性能を十分に発揮することはできません。
BYARDは、Excel、タスク管理ツール、プロジェクト管理ツールなどがあまり機能していない領域の業務に絞って機能を開発してきました。決して万能なツールではありませんが、「もうちょっとうまくやれないか」と思っている業務でこそお試しいただきたい業務管理ツールが、BYARDなのです。
BYARDのご紹介
BYARDはツールを提供するだけでなく、初期の業務設計コンサルティングをしっかり伴走させていただきますので、自社の業務プロセスが確実に可視化され、業務改善をするための土台を早期に整えることができます。
BYARDはマニュアルやフロー図を作るのではなく、「業務を可視化し、業務設計ができる状態を維持する」という価値を提供するツールです。この辺りに課題を抱える皆様、ぜひお気軽にご連絡ください。