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2023年のおわりに。

 2023年もあとわずか。今年はニューカレドニアやカリブ海(アルバ 、トリニダード・トバゴ)への海外取材も行うことができ、その準備もあって常に次の準備に追われながらいたような気がします(そういう今も、次の取材の下調べをしたり。)。
 各地で対面でできるイベントも増えてきて、見ています、読んでいます、といった反応を直接いただける機会も多く、リモート期間中に(当時は反応のなさに鬱々としながらも)やってきたことの意義をようやく感じる1年となりました。

出水市の県道沿いにどーんと自分の名前が。恥ずかしかったなぁ^^;
(2023年の3月に終了した展示です。)

 2024年も、年明けの北海道は根室市、鹿児島県は出水市とイベントが続きます。この仕事を選んで、気づけばもうすぐ8年目。こんなにも、常にやることがあるとは思いもしなかったのですが、夢中でやっていると時間が過ぎるのも早いなと感じます。

 取材に目を向けると、2022年にも海外取材はやっていたわけですが、先輩におんぶに抱っこだったモンゴル(それはそれで素晴らしい経験でした!)や、主に船に乗っていたノルウェー北極圏と、どちらかというと受動的な旅だったな、という印象が残っています。
 今年行った取材に関しては、特にカリブ海取材は、現地に入ってから、人と出会い、鳥を探し、安全に気を配り、お金の計算に頭を悩ませ、天気予報とにらめっこ…そして実行、という能動的な旅ができたと感じていて、その感じが2019年のペルー以来のものだったと思っています。
 本来は、現地で翌日の予定を決めるような旅が理想なのですが、一度離れてしまうと感覚が戻るか心配で、つい遠ざかってしまっていたのが事実。しかし、コロナ禍で感じた「いつ行けなくなるかわからない」「行ける時に行くことの大切さ」という思いに背中を押され、ひとつひとつ乗り越えながら、無事に取材を終えることができたこと。それが一番よかったなと思っています。よい写真も撮れたと思います。
 その成果は良い形で見ていただけるよう、準備をしたいと思っています。


トリニダード・トバゴの国鳥、ショウジョウトキ。
子供の頃に絵に描いた記憶がある鳥で、約25年越しに実物を拝めることになった。

 2023年は悲しいことも多くて、手放しに「よい1年だった!」と言い切ることもできないのが本音です。特に、学生からフリーランスへと、駆け出しの頃にお世話になった方々の訃報に触れることも多くありました。

『鳴き声から調べる野鳥図鑑』(文一総合出版)
 この本がなければ、いまのように人前でしゃべることもなければ、自分の写真が人目に触れることもなかったと思います。というのも、この本の企画の打診を受けたのが、大学院生の頃に就活のため、名古屋から東京へ向かう新幹線の中でのことだったから。

「松田道生さんと本を作るの、どう?」

 編集者からいただいたメッセージを「面白い!」と直感し、就活前線から降り、1冊の本を作るため、1年を費やすことに決めました。製作の過程ではご自宅にお邪魔し、僕が子供の頃から本で読んでいたようなレジェンドたちとのやり取りを話してくださったり、そして時には僕が観察してきたことを興味深そうに聞いてくださったり、という時間を過ごしました。もちろん、松田さんご自身も僕にとってはレジェンドであることに変わりなく、その時間を過ごせただけでも、この本を作る決断をしたことを肯定する理由になるものです。

 大学院を出てフリーランスになる春、この本が完成し、名刺代りに本を持って挨拶に回った結果、当時のオリンパスさんを含むいくつかの企業からお仕事をいただけるようになったのですから、感謝してもしきれません。もっとも、一番感謝しているのは、フリーランスになることの怖さでいっぱいだった自分に、「この世界は面白そう!」という思いを植え付けていただけたことだと思っています。

 松田さんとはその後も親しくしていただいて、ご自身の文章に写真が必要であれば、編集者に僕を紹介してくださったり、写真展があれば会場にお運びいただき、ブログで紹介していただいたり、ととても励みになるお付き合いが続いていました。本当に、ありがとうございました。


一緒に作った本は宝物。「冒険者たち」は、僕が子供の頃から大好きな本であることを覚えていてくださって、「本棚の整理をしていて…」と今年お送りくださったもの。画家薮内さんから松田さんのサイン入りで、松田さんは「僕の名前が入っているから価値ないかもだけど…」とおっしゃっていましたが、僕にとっては「だからこそ」の宝物。

 そして、2023年は志賀高原、石の湯ロッジでの「野鳥観察セミナー」も開講。このロッジをご紹介いただいたのが、風景写真家の萩原史郎さんでした。
 史郎さんと出会ったのは確か1年目のCP+でのこと。フリーランスなりたての自分が登壇するのはそれはもう、怖さしかなくて緊張したのを覚えているのですが、登壇後の舞台袖で優しく声をかけてくださり、その後お互いの写真展や毎年のCP+でお会いする仲になりました。
 ようやく開講のご報告ができると思った矢先での訃報はショックでしたが、史郎さんが惚れ込んだ志賀高原の自然は、講座に参加してくださる鳥好きの皆さんにも魅力的だったようです。その魅力を伝えるお手伝いをすることが恩返しになれば…。そう思ってます。素敵な時間と、ご縁をありがとうございました。


初めて志賀高原でご一緒した日に、望遠鏡で一緒にキビタキを見ました。嬉しそうなお顔が忘れられず。「菅原さんと鳥を見ていると面白くて」とロッジの皆さんや生徒さんにお話しされていたことが、講座を立ち上げる原動力になりました。


 さて、もうすぐ迎える2024年はどんな年になるでしょうか。
 みなさんにとって、そして鳥たちにとって、明るい1年になることを願っております。

Los Angelsにて。沈む夕日とカッショクペリカン。

 よいお年をお迎えください。今年1年ありがとうございました。

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