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#001 新しいソフトをどう覚えるか


元気でいるか Doricoは買えたか

Finale開発終了のお知らせから数ヶ月たち、そろそろ今後の方針を決めはじめた人も多い頃合いかと思います。わが家には2台Macがあり、Finaleが既存楽譜の保守だけになったタイミングでメインのMac mini(2023/M2無印)にマルチブート環境を整える予定です。既にアレンジの仕事は少しずつDoricoに移行しはじめ、これまでに数曲完成させました。おもに合唱・声楽などの分野で作編曲活動を行っているので、Doricoの歌詞機能の弱さと浄書モードでの日本語フォントの扱いには思うところがあるのですが…。

Doricoの練習の様子(自作の無伴奏合唱曲です)

Doricoが無理ならSibeliusでもいい

Finaleの自由度の高さについて「Finaleはお絵かきソフトだから」と自嘲的な意見をSNSで見かけることがありました。まさにその通りで、Finaleは音符や記号を置いていっただけでは読める楽譜になりにくく、自分が書いたものを「楽譜にしていく」作業がどうしても必要になるのです。一方でDoricoは最初から楽譜を書くことに特化しており、音符や記号を置いていった段階ですでに「楽譜になっている」のです。最初に触りだしたとき、いちばんに違いを感じたのはここです。もちろん、調整が必要になれば浄書モードでかなり細かいところまで詰められるので、出版用の版下作成などFinaleのときと同じようなプロユースにも対応できます。Doricoでの楽譜作成は「楽譜をプログラミングする」のに近いのではないかと思っています。自分が書こうとしているものがDorico上でどのカテゴリーに属しているのかを見極め、どういうことを楽譜上で達成したいか、がはっきりしているとこのソフトは非常に使いやすいです(※意見には個人差があります)。

「Shift+N」の一言でもいい

Steinbergのサポートフォーラムに、教会音楽家・作編曲家・楽譜浄書家のDan Kreider氏がDorico習得にあたっての心得を投稿していました。参考になると思うので、以下に引用と私が翻訳したものを記しておきます。

1. Seek to learn the “proper” way, even if it takes you longer. Take the long-term view. In the same way that you should press Tab rather than hitting Spacebar 8 times in a word processor, it’s worth the time to lay every building block properly…. Even if you don’t expect to be a power user. The first and seemingly quickest solution may seem to be the best, but it can cause unforeseen problems later… and take more time down the road.
2. Learn the “Dorico” way first. Don’t be too quick to change shortcuts to match what you know. Allow yourself to retrain your brain from square one. If over time you still find yourself wanting to alter defaults, by all means, use what works.
3. Seek to understand “why” a design or workflow function was designed as it was. That will help immensely.
4. When possible, look for a global option. Ask yourself, “will I need to perform this function repeatedly?” If so, there is a good chance there’s a global option rather than just a local one.
5. Don’t allow yourself to get frustrated. Of course you should do your own work in learning, but if you’re stuck on a problem for more than a few minutes, just ask!

Steinbergサポートフォーラムより、Dan Kreider氏の発言
  1. たとえ時間がかかっても「正しい」やり方を探し、覚えてください。長期的な視点を持ちましょう。ワープロソフトでスペースキーを8回打つよりもTabキーを押すほうがいいのと同じで、すべてのブロックをきちんと並べることには時間をかける価値があります…あなたが上級者になろうと思わなくても。最初に見つけて、一見して手早そうなやり方はベストに見えるかもしれません。しかし、そういったものは予見できない問題をあとで引き起こすことがあるのです…そして、後戻りするには相当の時間がかかります。

  2. 「Doricoとしての」やり方を覚えてください。あなたが知っているものに合わせて、早急にショートカットを変えないでください。凝り固まったあなたの頭脳を再訓練させるのです。時間が経ってそれでもなお、あなたがデフォルトのショートカットを変えたいのであれば、ぜひ役に立つものをどうぞ。

  3. デザインやワークフローの機能が「なぜ」そのようにデザインされているのか、理解に努めてください。そのことは非常に助けになります。

  4. 可能であれば、グローバルなオプション(※訳注:プロパティパネルでもローカル/グローバルを切り替えられますが、浄書オプションやレイアウトオプションなど、ファイル全体の設定を変えるオプション、のことと思われます)の設定項目を探してください。「何度もこの設定を触る必要があるのか?」を自らに問うてください。そうであれば、(ローカルではない)グローバルなオプションがある可能性があります。

  5. 自分にイラつかないでください。もちろん、学習の過程は自分自身でこなすべきですが、ちょっとやってみて問題に行き詰まるようであれば、質問しましょう!

(以上、訳:田中達也)

Steinbergに聴かせてやってくれ

学生の頃から20年以上使ってきたソフトが開発終了してしまう、というのはさすがに衝撃的でしたが、Doricoを数ヶ月触って「…まあ突然Finaleが使えなくなっても大丈夫かな…」というところまではたどり着けました。サポートはまだ行われているのか?そもそも認証が「当面維持される」の当面ってどのくらいか?日本語版でも大丈夫なのか?など、Finaleをめぐる状況は明るくないのですが、ならばDoricoで灯りをともそうではありませんか、というのがこのnoteの趣旨です。本業の合間に執筆しているのでどのくらいの更新頻度になるかはわかりませんが、のんびりやっていきたいと思います。

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Tatsuya Tanaka(田中 達也)/作曲家
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