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#003 L'istesso tempoの表記

Q. 「次の1拍=前の1拍」で表記されるL'istesso tempoを入力できますか?

A. Doricoでは常に「前の1拍=次の1拍」の表記になるため、入力できません。非表示のテンポ設定と組段テキストを組み合わせて入力します。

メトリックモジュレーション(メトリックエキュエージョン)とも呼ばれるこの用語、イタリア語で「同じ速さで」という意味です。おもに拍子変化のとき、速度を保ったまま分母が変わる=単純拍子と複合拍子が入れ替わったり、テンポが倍(もしくは半分) になったりするときに使われます。

そもそもL'istesso tempoには2種類の書き方があるのですが、日本国内の出版譜ではDoricoで表記できない「次の1拍=前の1拍」のほうを見かけることが多いでしょうか。「次の1拍=前の1拍」の表記では、拍子記号に左揃えします。また、「前の1拍=次の1拍」の表記では、=(イコール)を小節線の上に揃えます。以下の譜例はFinaleで制作したものです。

次の1拍=前の1拍
前の1拍=次の1拍

なお、手元にある記譜法の本を確認したところ、以下のようになっていました。

  • 平石博一・東京ハッスルコピー「楽譜の書き方」:「次の1拍=前の1拍」「前の1拍=次の1拍」の両方とも紹介

  • Garderner Reed「Music Notation」:「前の1拍=次の1拍」のみ、ただし拍子記号に左揃えする書き方

  • Elaine Gould「Behind Bars」:「前の1拍=次の1拍」のみ

「Behind Bars」は、Doricoの設計思想に影響を与えている書籍のひとつでもあり、例えばリピート記号のオプションにある「グールド」は著者の名前に由来しています。

実際の入力方法は前回のスウィング記号とほぼ同じです。プレイバックに反映させたい場合はShift+T〔ポップオーバー:テンポ〕でテンポ表記を()で囲む、もしくはプロパティで非表示にしましょう。

これはMusGlyphで入力しました


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Tatsuya Tanaka(田中 達也)/作曲家
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