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土地の境界問題
筆界と所有権界は違う
土地の境界でトラブルにならない限り、筆界と所有権界の違いを、気にされていない方がほとんど。
「筆界」・・・国が決めた、土地の地番と地番の境
「所有権界」・・・私人の権利である、所有権の境目としての土地の境界
土地上に、境界の点や線の位置を表す標識(境界標)が設置され、筆界通りに利用されていればよいが、意図せずにブロック塀などの工作物が、他の地番内に設置されていることもある。
国が決めた「筆界」は、変更することができない。
「所有権界」について、隣地所有者同士で話し合いがつかずに、係争まで発展してしたケースを扱ったこともあります。
記事にある通り、「筆界」を特定する制度(筆界特定制度)を利用することで、「筆界」は明確になる。
裁判(境界確定訴訟)より時間はかからないが、『筆界特定制度』により「筆界」が特定されたという記録が、土地の所有者を示す『土地全部事項証明書(謄本)』に記載される。
東京で制度を利用した際は、通常の測量(境界確定測量)よりも多額となり、申請~完了まで1年半要しました。
実務上では、土地の調査の専門家である、土地家屋調査士が行う、境界確定測量にて境界が確定しない場合、費用・時間の観点から、ADR(裁判外の紛争解決手続き)・筆界特定制度・裁判などは利用せず、境界測量自体を止めるケースがほとんど。
境界の争いについては、隣地所有者同士の、過去の係争が原因となることもあります。
論理の世界ではないため、纏めるのは難儀。
不動産の仕事を進める身としては、各種の制度を理解し、土地家屋調査士とともに仕事に向き合うしかありません。
境界確定測量が完了しないと、不動産の売却ができない場合もあります。
売却できないお客さまは、『資金が用意できない』+『売却できない土地』を抱える。
根深い問題です。
2021.8.20 日経新聞 夕刊