底地・貸宅地管理の問題点
Q:地元の不動産会社に、底地・貸宅地の管理はできないと言われました
A:底地・貸宅地の管理は行わない、管理会社も存在します。
地代の集金管理、契約更新手続き、借地権者への相続手続きの説明、建替え承諾等の対応・・・相続が絡む手続きまで、対応できない不動産管理会社が多いのが実情です。
賃貸アパート・マンション等の管理を行うと、賃料管理、2年に一度の更新手続き、入居募集など、日々の業務に追われてしまいます。
地代の集金管理はできても、相続人の特定が必要となる地代滞納者への督促対応まで行えない。建物賃貸管理会社の方から、当社が相談を受けることもあります。
底地・貸宅地と、賃貸アパート・マンションとは、管理できる戸数に雲泥の差があります。
Q:底地・貸宅地の管理は、どのような不動産業者が取り扱っていますか?
A:底地権を専門に買い取る、不動産業者が担っていることが多いです。
借地権が設定されている土地(底地権)を、専門に購入する不動産業者があります。その不動産業者が、業務の一環して、底地・貸宅地の管理をしています。
借地権者の方から「地主さんが不動産業者に土地を売ったため不安」という意見をお聞きしたことがあります。
当社は、管理物件の底地権を購入することはありません。
Q:底地・貸宅地の買取・売却価格は、いくらぐらいですか?
A:不動産業者の買取査定価格は、底地・貸宅地の利回り1.5%~2.0%程度です。
相続税支払いのため、相談に訪れた方からよく質問されます。底地・貸宅地は、借地権者が利用し続けることが前提となるため、地代収入から公租公課を差し引いた、底地・貸宅地の利回りにて、買取(売却)価格が査定されます。
底地・貸宅地の利回り:1.5%~2.0%にて査定されることが多いです。
Q:底地権の買取業者が地主となると、何か問題があるんですか?
A:法律上は、何も変わりがありません。
借地権者の方から「地主さんが不動産業者に土地を売ったため不安だ」とお聞きした際、『何がご不安なんですか?』質問すると「何となく不安」という回答が一番多いです。
その際は『法律上は何ら変わりがない』ことを伝えますが、懸念を拭えないことが多いです。
Q:底地権を、売却する理由はなんですか?
A:相続税の支払い。収益性が低く、管理の手間がかかるという理由が多いです。
底地・貸宅地の収益性は低く、土地の固定資産税・都市計画税(公租公課)の3~4倍受領している方が多いです。
個人の場合は、相続財産に加算され、更新料を受領したとしても、金銭的にはマイナスの財産となっています。
それに加え、地代の収受、契約更新手続き、建替え承諾の対応など、管理に手間がかかります。それにより、相続の際など、底地権を手放す方が出てきます。
Q:地代を支払っている人が、借地権者ではないんですか?
A:そうとは言い切れません。
借地権も相続財産となり、相続手続きが必要です。借地権は相続にて引き継がれている事が殆どですが、借地権の相続手がなされていない事もあります。
相続手続きを行う際、遺産分割協議書に、登記されている建物は記載されているが、登記されていない借地権の記載はないことがよくあります。
借地権と建物は別個の相続財産。借地権者からは、借地権・建物に関する相続権者の特定ができる、遺産分割協議書の写しを受領しておくことをお勧めします。
Q:地代を支払っている方の兄妹から、借地権を売却したいと言われました。
A:借地権の相続権者を、確認してください。
借地権も相続財産となり、相続手続きが必要です。親と同居していた借地権者に多いケースですが、何ら相続手続きをせず、地代を支払っている場合もあります。
相続開始後、遺産分割協議が完了するまでは、財産は相続人の共有。共有財産である、借地権の売却相談をしている可能性もあります。
借地権の売却を承諾する場合は、まずは、相続権者の特定を進めてください。
Q:遺産分割協議をしていない場合、何代前までさかのぼる必要がありますか?
A:土地賃貸借契約を締結した時まで、さかのぼることになります。
土地所有者は、相続手続きをしていることがほとんどですが、借地権の相続手続きをしていない方がいます。
財産に関する手続きとなり、遺産分割協議が完了していない場合は、借地権は共有状態となります。
Q:リフォームしていたので確認をしたら、大規模修繕ではないと言われました。
A:工事を行う際は、事前に連絡がくるようにしておくことが大切です。
土地賃貸借契約書には「大規模修繕工事等を行う際は、書面による承諾が必要」と記載されていることが多いです。
大規模修繕となる工事は、明確には記載されていません。当社で管理している借地権者には『何かしら工事をするときは、事前に連絡下さい』と周知しております。
何も連絡無しに工事を始めてしまうと、無断で大規模修繕を行うつもりではないのかと、無用の疑いをかけられる。
全ての契約は、信頼関係が築けているかに関わっていますよと伝えると、殆どの方は事前に連絡をして貰えます。
Q:建替えの相談を受けていた借地権者から、面積が少ないと言われました。
A:どのように計測しているか、確認が必要です。
土地賃貸借契約書に記載された面積(借地面積)と、現在の利用状況が異なる場合があります。
本来であれば、借地面積が変わることはありません。しかしながら、借地の境界があいまいなまま、土地を賃貸している。祖父の代は、植木の中心で境界を決めていたが、今はブロック塀が敷設されている。
道路後退(セットバック)した宅地部分の面積を、借地権者が言っている可能性がある。地代は、契約面積により受領しているため、面積が少ないと、地代を多く支払い続けてきたのではないかと言われることもあります。
Q:更新料の支払いを拒否された場合は、どうすればよいでしょうか?
A:協議を継続するしかありません。
地代(賃料)と異なり、更新料を支払わない場合においても、土地賃貸借契約を解除することはできません。
インターネットにも掲載されているため、義務が無い更新料は支払いたくないと言われることが増えてきています。
いずれにせよ、話し合いを継続していくほかありません。
Q:借地契約に関する、裁判上の手続きを教えてください。
A:借地非訟事件といい、下記の5種類の手続きがあります。
①借地条件変更申立事件
住宅をアパートに変更する、木造から鉄骨造に建て替えるなど、借地契約条件を変更する場合は、土地所有者から承諾を得る必要があります。
土地所有者から、その承諾が得られない場合でも、裁判所が相当と認めれば、借地契約条件を変更する裁判を受けることができます。
②増改築許可申立事件
借地上の建物の建替え(改築)・増築・大規模修繕等をする場合は、土地所有者から承諾を得る必要があります。
土地所有者から、その承諾が得られない場合でも、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
③土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件
土地賃貸借契約が締結され、借地権者が借地上の建物を譲渡(売却)する場合は、土地所有者から承諾を得る必要があります。
土地所有者から、その承諾が得られない場合でも、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
④競売又は公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件
土地賃貸借契約が締結されている、借地上の建物を買い受けた人は、土地所有者から承諾を得る必要があります。
土地所有者から、その承諾が得られない場合でも、裁判所が相当と認めれば、土地所有者の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。
この申立ては、建物の代金を支払った後2ヶ月以内にする必要があります。
⑤借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件
上記③・④の場合は、土地所有者は土地の賃借権と建物を優先的に買い取る権利(介入権)が与えられています。
土地所有者は、裁判所が定めた期間内に、介入権行使の申立てをすると、裁判所が定めた価格で、土地の賃借権と建物を買い取ることができます。