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【元ネタ深掘り】第5部「黄金の風」feat.Main Characters ①

ジョルノ・ジョバァーナ


第5部「黄金の風(ヴェント・オーレ)」の主人公。
イタリアを舞台に、ギャング組織「パッショーネ」に入り込んで頂点を目指す物語の中心人物。


ジョルノ・ジョバァーナの容姿を見て「ダビデ像を思い出す!」という感想は、荒木先生のデザインの意図や芸術観を考える上で、かなり的を射た見方だといえます。


スタンド「ゴールド・エクスペリエンス」

ジョルノ・ジョバァーナは、“黄金の精神”を体現する若きギャングスターとして描かれていて、スタンド「ゴールド・エクスペリエンス」はそのカリスマ性を象徴する要素のひとつです。

プリンス (Prince) が1995年にリリースしたアルバム『The Gold Experience』に由来すると言われています。

The Gold Experience


プリンスの名前をいったん (シンボル) に変えた後の時期に作られたアルバムです。彼自身の新たなクリエイティブ・アイデンティティを模索していた、非常にエネルギッシュかつ実験精神に満ちた作品となっています。

“Gold”という象徴的な言葉は、プリンスにとって「輝き」「洗練」「豊かさ」などのポジティブな価値観を秘めて、アルバムを通して表現しようとしたのは、音楽による新しい境地、そしてアーティストとしての“新しい体験 (Experience)”でした。



プリンスは、多くの伝説・逸話が残っているアーティストの一人です。

興味のある方は、次の添付記事をご覧ください。



私が紹介するのは
日本のアーティストもプリンスのカヴァーをリリースしていますが、この歌姫も取り上げていたとは、ちょっと意外でした。



ブローノ・ブチャラティ

第5部「黄金の風」における物語の事実上の「もうひとりの主人公」とも言われる存在。


荒木飛呂彦先生自身が公式インタビューや作者コメントで明言しているわけではありませんが、イタリアの高級ジュエリーブランド「ブチェラッティ (Buccellati)」から着想を得ているのではないかという説は、ファンの間でもよく囁かれています。

創業者: マリオ・ブチェラッティ (Mario Buccellati)
創業年: 1919年、イタリア・ミラノ
特徴: 透かし彫りや美しい金銀細工で知られ、ロイヤルファミリーやセレブリティからも愛される名門ジュエラー。

スタンド「スティッキィ・フィンガーズ」

「拳で触れた対象にジッパーを取り付ける」能力


元ネタは、ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) が1971年にリリースしたアルバム『Sticky Fingers』に由来すると言われています。

Sticky Fingers

アンディ・ウォーホル (Andy Warhol) のデザインによる、実際にジーンズのジッパーが実際に開閉できる斬新なカバーが大きな話題となりました。



スペインでは、股間のふくらみが猥褻だとして、フランコ政権によって検閲によって、ジョン・パシェとフィル・ジュードがデザインした「Can of Fingers」カバーに置き換えられました。


Can of Fingers


先行シングルとしてリリースされたアルバムのオープニング・チューン

「Brown Sugar」


【2021年10月14日 AFP通信】

ストーンズの北米ツアーにおいて往年のヒット曲『Brown Sugar』が演奏されていないことを指摘されたことに対して、キース・リチャーズが「ロサンゼルス・タイムズ」のインタビューで次のように応じた報じました。

You picked up on that, huh? I don’t know. I’m trying to figure out with the sisters quite where the beef is. Didn’t they understand this was a song about the horrors of slavery? But they’re trying to bury it. At the moment I don’t want to get into conflicts with all of this shit. But I’m hoping that we’ll be able to resurrect the babe in her glory somewhere along the track.

気づいたんですね? そうだよ。どこで女性たちが不満を感じているのか、私も分からないんだ。奴隷制度の恐怖についての曲だって理解していなかったのかな? でも、彼女たちはそれを葬ろうとしている。今のところ、この件で争いごとに巻き込まれたくないんだ。でも、いつかこの歌を栄光の中で復活させられることを願っているよ。(筆者和訳)

2021年以降、「Brown Suger」は、奴隷制などに言及する歌詞などを原因として、ライブのセットリストから外されました。



第5部「黄金の風」はイタリアの裏社会=ギャング組織「パッショーネ」が物語の主軸にあり、ボスのもとで麻薬が横行している事実が明かされます。

ブチャラティたちは「子どもたちまで巻き込む麻薬」を断ち切るため、命をかけて組織の頂点に挑むストーリーです。


「Brown Suger」とは、英俗語で”精製されていないヘロイン”を指す隠語


荒木飛呂彦先生がなぜプリンス&ミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)やアルバム、曲名を“引用”したのかを深く考えると、そこには単なる“オマージュ”にとどまらない「思想や美学の共通点」が見えてきます。

プリンス

Prince

斬新なファッション、音楽ジャンルを横断・融合するサウンド、業界システムへの挑戦姿勢など、“自らの道を切り拓く”象徴的存在。

音楽性だけでなく、ステージ衣装からMVの世界観まで、一貫して「プリンスらしさ」を極め抜き、時代ごとにアップデートを重ねました。

名前を記号に変えて活動したり、著作権・レーベルとの衝突をものともせず自分の表現を死守しようとしたり、“自分が信じるものを貫く”ブレなさが特長です。


ミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)

Mick Jagger


60年代から70年代にかけてビートルズとは対照的な“反体制的”かつ“ワイルド”なイメージを打ち出し、攻撃的なロックを体現したカリスマ。

音楽だけでなくファッションやステージパフォーマンスなど、ロックシーンを激変させる先駆的アプローチを次々と生み出しました。
世間の倫理観やメディアの非難をもろともせず、退廃や快楽をテーマにした曲を発表するなど、常に挑発的で自由奔放。

尖ったクリエイティビティを内在させながらも、ミック・ジャガーは長年にわたりトップスターとして走り続けています。

ジョルノブチャラティは、未知の領域に挑戦し、新たな展開を作り出していくキャラクターとして位置づけられています。

ジョルノにとっての“黄金の精神”や、ブチャラティに象徴される“潔い正義感”は、彼らがアウトロー=ギャングでありながらも「自分の美学や理念」を頑なに守っている点で共通します。


荒木飛呂彦先生が音楽アーティストをモチーフに採用する際、単に「名前の響きがカッコいい」「海外の音楽が好きだから」というだけでなく、

  1. 既成概念を超えて、新しいものを作り出そうとする“革新的スピリット”

  2. 自らの信念や美学を究めようとする“ストイックな情熱”

  3. 危険や逆風にも屈せず、未来を切り拓く“反骨精神・カリスマ性”

といった要素をキャラクターに宿らせるための「象徴」「隠し味」として、プリンスやミック・ジャガーといった“型破りで時代を動かしたスター”を引用していると考えられます。


2016年4月21日
ミック・ジャガーはプリンスの死に深い哀悼の意を示しました。

「本当に悲しい。プリンスは革新的なアーティストで、素晴らしいミュージシャンであり作曲家だった。独創的な作詞家で、類まれなギタリストだった。彼の才能は無限だった。この30年で最もユニークで刺激的なアーティストの1人だった。」


Prince cover the Rolling Stones Honky Tonk Woman




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