⑰『ジョジョの奇妙な冒険』feat.Killer Queen
吉良 吉影と「キラークイーン」の関係性は、彼のキャラクターを深く掘り下げる鍵となっています。
「キラークイーン」は単なる武器としてのスタンドではなく、吉良の性格、行動原理、そして内なる葛藤を象徴する存在です。
元ネタは、Queen(クィーン)の3rdアルバム
「Sheer Heart Attack(シアー・ハート・アタック)」
からのシングル・カット
「Killer Queen(キラー・クイーン)」
まずは、吉良吉影の独特のキャラクターの説明から始めましょう。
吉良吉影の人間性と行動原理
吉良吉影は、一見すると普通の会社員のようですが、実際には女性の手を「コレクション」として持ち歩く猟奇的な殺人鬼です。
彼の性格や行動には以下の特徴があります。
平穏主義
吉良は派手な事件や注目される行動を嫌い、できるだけ目立たない生活を送ることを理想としています。しかし、その「静かに暮らしたい」という願望とは裏腹に、彼の本性である殺人衝動が平穏を脅かす結果を招いています。異常な執着心
特に「女性の手」に異常な執着を持ち、それが殺人の動機にもなっています。彼はターゲットとなる女性を慎重に選び、周囲に疑われないよう計画的に行動します。冷酷さと緻密さ
吉良は冷静で、感情を露わにすることはほとんどありません。狡猾で用意周到な性格であり、常に自分の行動が露見しないよう計算しています。
「キラークイーン」「シアーハートアタック」「バイツァ・ダスト」の関係性
スタンド「キラークイーン」の能力をベースに進化・発展したものです。
それぞれが異なる特性と目的を持ちながら、吉良吉影のキャラクターや目的を象徴する能力として関連付けられています。
スタンド「キラークイーン」
触れた物体を爆弾化する能力を持つスタンド。この能力により、吉良吉影は証拠を残さずにターゲットを排除する「完全に消し去る」ことができます。
吉良吉影が持つ「平穏な生活を守りたい」という欲求と、「殺人衝動」という狂気の二面性を象徴しています。
「シアー・ハート・アタック」
「キラークイーン」の左手から切り離される自動追尾型爆弾です。
熱を感知して追尾し、爆発を引き起こし、自動操作であるため、吉良本体に直接ダメージが及ばない安全な手段として使用されます。
「バイツァ・ダスト」
「キラークイーン」の最終形態ともいえる能力で、「時間を巻き戻す」力を持っています。発動条件は、吉良が追い詰められた状況で、特定の対象(主に守りたい人や物)に「時間を巻き戻す爆弾」をセットすること。
他の能力が攻撃を目的としているのに対し、バイツァ・ダストは「完全なる防御」として機能します。
「Killer Queen」の歌詞からの考察
「Killer Queen」は、デカダンス的なエレガンスと危険な魅力を持つ女性像を描いた曲です。
曲調はポップでありながら、歌詞には危険な二面性を秘めたキャラクターが描かれています。
優雅さと洗練された美学
「Killer Queen」の歌詞に描かれる「操作的な女性像」と、吉良が他者を騙しながら自分の秘密を守る能力には、共通する美学があります。
優雅さと上品さを持ち合わせていて、外見や行動に洗練された美学を持ち、高慢で、無関心さの中に独自のカリスマ性を持つ人物像をイメージさせます。
危険でありながら魅惑的な存在
この歌詞のニュアンスは、吉良は、一見普通の生活を装いつつ、自分に近づく者や自分の平穏を脅かす者を巧妙に排除するという内面には、冷酷さと破壊的な衝動を秘めているキャラクター像とよく一致します。
飽くなき欲望
吉良吉影は、「平穏な生活を送る」という願望を持ちながら、女性の手(特に美しい手)に異常な執着を抱くサイコパス的な一面があり、彼にとって「美しいものを収集する」とは、単なる趣味ではなく、自分の欲望を満たしつつも平穏を保つための手段なのです。
Queen3rdアルバム「Sheer Heart Attack」
デビュー・アルバム『Queen』リリース当時の評価
1970年代前半、ハード・ロックやプログレッシブ・ロックが音楽シーンを支配していました。これらのジャンルは、技巧的な演奏、複雑な構成、大規模なライブ演出で注目を集めていました。
ビジュアルや演劇的なステージングを取り入れたグラム・ロックが大きな影響力を持っていました。
デビューアルバム『Queen』に対する悪評
ギター・リフやボーカル・スタイルが既存のハード・ロック・バンドと似通っているとされ、独自性に欠けると見なされました。
一部の批評家は、アルバム『Queen』を「レッド・ツェッペリンの劣化版」と批判しました。
フレディ・マーキュリーの演技的なボーカルスタイルが、「過剰に派手である」と見られ、シンプルさを求めるロックファンや批評家から反感を買うことがあり、当時は受け入れられにくかった面があったのでしょう。
1974年頃にはグラム・ロックの人気が下降気味となり、グラム・ロックの亜流と見なされることがあったQueenは、「時代遅れ」と見られたのかもしれません。
セカンドアルバム『Queen II』の評価
当時の批判的なコメント
「輝ける7つの海(Seven Seas of Rhye)」チャートイン
商業的成功を収めたことは、Queenの評価を変えるきっかけとなりました。
当時、音楽業界全体が大きな変化を遂げる中、批評家の批判が逆に刺激となり、Queenは一般リスナーに受け入れられ、既存のジャンルの枠にとらわれない多様性を持つバンドとして、次第に評価されていきました。
特に日本では、『クイーンII』がファンタジックな世界観と派手な演出で若者の心を掴み、熱狂的なファンを獲得しました。
1974年11月8日『Sheer Heart Attack』リリース
アルバムは英国アルバムチャートで2位、アメリカではBillboard 200で12位を記録し、Queenを国際的なスターへと押し上げるきっかけとなる重要な転換点となった作品です。
アルバムの成功は一過性ではなく、以降のQueenのキャリア全体を形作る基盤となりました。
「Another One Bites The Dust」のベースライン
「バイツァ・ダスト」の元ネタである「Another One Bites the Dust(邦題:地獄へ道づれ)」は、1980年リリースの8thアルバム『The Game』に収録されている楽曲です。
戦いや競争の場面を連想させる冷徹な歌詞で構成されており、次々と敵や対象が倒れていく様子を描写しています。
バックマスキング(楽曲を逆再生した際に聞こえる隠されたメッセージ)
「Another One Bites the Dust」のコーラス部分を逆再生すると
などと聞こえるというものです。
サブリミナルメッセージが含まれているという主張は、心理的現象に基づく解釈の一例であり、真実性は低いとされています。
これは偶然の産物とされ、意図的に仕込まれたものではないとQueen側も完全に否定しています。
心肺蘇生での使用
「Another One Bites the Dust」の特徴的なベースラインは約110 BPM(1分間あたりのビート数)で、心肺蘇生法(CPR)で推奨される胸骨圧迫のペース(100~120 BPM)に近いのです。
そのため、医療従事者やトレーニングで胸骨圧迫の適切なペースを教える際に、実際に使用されているケースがあります。
英国心臓財団(BHF)および英国蘇生協議会が、胸骨圧迫のペースに合う楽曲として「Another One Bites the Dust」を推奨しています。
荒木先生がこの「Another One Bites the Dust」を元ネタに選んだのは、能力の冷酷さや循環的な恐ろしさを象徴するためと考えられますが、もっと深い意味合いがあったのかもしれません。
Teo Torriatte(手をとりあって)
※ 曲中では同じ意味の歌詞が、英語と日本語の両方で歌われています。
続く、、、