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⑧『ジョジョの奇妙な冒険』feat.Wu-Tang Clan

第3部「スターダストクルセイダース」に登場する
オランウータンのスタンド使い「フォーエバー」
エンヤ婆が送り込んだ刺客の一人として異色を放つキャラクター

名前の由来は、アメリカのヒップホップグループ
「ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)」のアルバム『Wu-Tang Forever』

ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)

ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)は、ニューヨークのスタテン・アイランド出身のヒップホップグループです。
スタテン・アイランドは、ゴミ処理場や刑務所などが集まる、マンハッタンの華やかなイメージとはかけ離れたゲットーの島で、フェリーでしかアクセスできない場所です。

この孤立した環境が、ウータン・クラン独特のエッジの効いたスタイルの誕生に影響を与えました。

ウータン・クランは、リーダーであるRZA(レザ)を筆頭に、従兄弟のGZA(ジニアス)、ODB(オール・ダーティ・バスタード)、そしてメソッド・マン、レイクウォン、ゴーストフェイス・キラー、インスペクター・デック、マスター・キラー、U・ゴッド、後に加わったカパドナから構成されています。

「ウータン」という名前は、少林寺拳法の流派とされ、古代中国で少林寺に対抗した武闘派「武当(ウータン)」に由来しています。
この名前には、カンフーの精神やアイデア、物語性を取り入れた「革命的なヒップホップ集団」を象徴する意味が込められているのです。

彼らが1993年に発表したシングル「Protect Ya Neck」は、商業主義に走り行き詰まっていた当時のミュージックシーンに新たな衝撃を与え、一気にウータン・クランはヒップホップ界で注目の存在となりました。


このシングルをきっかけに、ウータン・クランはラウド・レーベルと契約を結び、翌年にはデビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』をリリースします。

このアルバムは、ハードコアなビートと強烈なリリックが詰め込まれた作品でありながら、パーティーのようなノリも忘れず、当時のヒップホップシーンに新風を吹き込みました。


その後メンバーのソロ活動が活発化し、グループとしての活動は行われていませんでしたが、5年の空白を経て、1997年にリリースされたセカンド・アルバム『ウータン・フォーエバー(Wu-Tang Forever)』をリリース

このアルバムは、全世界で600万枚を超える大ヒットを記録しました。

ヒップホップ史に残る名作として高い評価を受け、ウータン・クランが抱えるヒップホップの哲学とアティチュードを徹底的に詰め込んだ濃密な2枚組のアルバムです。

翌年には、ロックバンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのツアーに同行し、ヒップホップとロックの最強グループの共演として大きな話題を呼びました。

リーダーであるRZAがプロデュースを手がけ、クランの持つ東洋哲学や武道の美学、そして独自のハードコアなストリート感覚が見事に融合されています。

リードシングル「Triumph」

この曲では、全メンバーがそれぞれに一節ずつリリックを披露し、曲が終わるまで一度もサビが挟まれません。

これは、ウータン・クランというグループの個性と結束を象徴しており、彼らがいかに団結し、同じビジョンに向かって進んでいるかを示しています。


「Wu-Revolution」

彼らは、教育や自己意識の重要性について語りかけ、ただの娯楽ではなく「知識と真実」を伝える役割を担おうとしています。

この曲は、当時の社会情勢や、ストリートで生きる黒人コミュニティが直面する厳しい現実に対する冷徹な批評として響きます。


フォーエバー:動物のスタンド使いの象徴


フォーエバーはシリーズ初の「動物のスタンド使い」として登場します。
人間ではない動物が、これほどまでに知性的で残虐なキャラクターとして描かれたことは、シリーズの中でも斬新でした。

フォーエバーは、オランウータンでありながらも高い知能を持ち、人間顔負けの策略を巡らせ、彼のスタンド「ストレングス」は、巨大な幽霊船を操る能力を持ち、その力を駆使してジョースター一行を苦しめます。

彼の存在は、単に物理的な「力」を誇示するだけでなく、人間に対する冷酷な支配の意志も象徴しています。

RZA

ウータン・クランのリーダーであるRZAは、野獣揃いのウータン・クランを指揮するウルトラ・スーパーな存在です。

ウータン・クランの基本コンセプトは、すべてRZAの頭の中で構築され、彼のビジョンを基にグループのスタイルが確立されました。
RZAはプロデューサーとしての実力だけでなく、MCとしても圧倒的な技量を持ち、その独特のフロウは他に類を見ない強烈さがあります。

荒木先生が”フォーエバー”をシリーズ初の「動物のスタンド使い」として登場させ背景には、野獣揃いのウータン・クランのリーダーRZAのイメージがあったのでは?



1986年制作イギリスのホラー映画『リンク』


『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』で語っている映画『リンク』

”リンク”という名の年老いたチンパンジー(実際にはオランウータンがチンパンジー役で出演)が、人間を恐怖に陥れる存在として描かれます。
動物が人間の理解を超えた知性を発揮し、制御不能な存在へと変貌する不気味さを表現しています。

映画『リンク』のリンクは、ただのチンパンジーという枠を超え、人間以上の知恵と冷酷さで観客を恐怖に陥れるキャラクターであり、その特異な存在感が荒木先生の創作に影響を与え、動物キャラクターに知性と恐怖を持たせる発想をもたらしたと推測されます。

余 談

人間と猿の立場が逆転した世界を描いた映画と言えば

『猿の惑星(Planet of the Apes)』

1968年に公開されたアメリカのSF映画(全5作シリーズの1作目)
ピエール・ブールの同名小説に基づいて制作されました。
監督:フランクリン・J・シャフナー 
主演:チャールトン・ヘストン

チャールトン・ヘストン演じる宇宙飛行士ジョージ・テイラーが仲間とともに不時着した見知らぬ惑星にあり、そこでは人間が知性を持たない野生動物のように扱われ、猿たちが文明を築いています。
テイラーは、自分たち人間が猿の支配下に置かれた世界に驚愕しながらも、やがて猿社会の中に不穏な謎が隠されていることに気づきます。
人間と猿の立場が逆転した世界での彼のサバイバルと、文明の衰退を示唆する社会的メッセージを描いています。

衝撃的なラストシーンは、映画史上に残る名シーンの一つとなり、観客に文明の行く末について深い考察を促しました。

1970年から1973年にかけて
続・猿の惑星(Beneath the Planet of the Apes)』
新・猿の惑星(Escape from the Planet of the Apes)』
猿の惑星・征服(Conquest of the Planet of the Apes)』
『『最後の猿の惑星(Battle for the Planet of the Apes)』
4つの続編が作られました。

1974年と1975年には2つのテレビシリーズが制作されました。

2001年公開のティム・バートン(Tim Burton)監督作『PLANET OF THE APES/猿の惑星』は、1968年公開の映画『猿の惑星(シリーズ第1作)』を「リ・イマジネーション(再創造)」して蘇らせた作品です。

<リブート映画シリーズ>
2011年『猿の惑星: 創世記(Rise of the Planet of the Apes)』
2014年『猿の惑星: 新世紀(Dawn of the Planet of the Apes)』
2017年『猿の惑星: 聖戦記(War for the Planet of the Apes)』
2024年『猿の惑星/キングダム(Kingdom of the Planet of the Apes)』


次号へ続く



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