株式会社キリン堂 執行役員人事部長 川畑 秀一さん ~人事部の仕事は”架け橋”を架ける”クリエイティブ”な仕事~
唐突に
「人事部の仕事ってどんな仕事なんですか?」
と聞いてみたところ
「多くの人が誤解しているのですが、人事部の仕事って 『クリエイティブな仕事』 です。」
という“本質”直球回答が私に飛び込んできた。
同席の某企業のK社長のキックオフで取材はスタート。
今回のお相手は、株式会社キリン堂 執行役員人事部長 川畑 秀一 さん
<ビジョン>
地域コミュニティの中核となるドラッグストアを社会的インフラとして確立し、日常生活の「利便性」と「未病」をベースに顧客の感動と満足を創造し、地域医療・地域介護を推進して地域社会に貢献する。
関西大商勢圏に300店チェーンを展開、さらに500店へとすすめ、 顧客・社員・お取引先様・株主様もWin-Winでハッピーな社会を創造する。
<人事基本方針>
「お客様とのふれあいを通じて地域社会に貢献できる人材の育成」
ドラッグストア業界は、コロナ禍による『特需・打撃』どちらも直面したが “存在感を示した業界”だと言える。
都市部店舗は、外出自粛とテレワークの広がりによって、繁華街やビジネス街から人が消え、インバウンドが減ったことは大打撃だった。
一方、郊外や住宅地内の大型店舗は、生活必需品を扱う「生活インフラ」の役目を担っていて、マスクや除菌剤といったコロナ関連の商品がコンビニよりも充実していて、生鮮食品の取り扱いなど営業を強化する動きを活発化して、“存在感”を増してきた。
そこで
「ザックリした”問い”ですが、人と人のふれあいが大きなポイントと思うのですが、川畑部長が人材採用に当たっての着眼点は何ですか?」
とぶつけてみた。
川畑部長は、一旦 “間” をおいて答えた。
「そうですね、我が社は、まずプレゼンをしてもらうのですが、“目の輝き” でしょうか?」
「目は口ほどに物を言う」「目は心の鏡」という諺があるように、言葉を語らない「目」が真実の心を映し出す。
この部分を最初に捉えるのは、正に プロ人事パーソンの言葉だ。
「人材の発掘にはご苦労が多いと思いますが、どんな方法でしょうか?」
(川畑部長)
「人材発掘は重要です。数多くの学生さんに会う機会を増やしたいので、就活イベントには出来る限り参加しています。」
「では?御社の社員の方々の特徴は?」
(川畑部長)
「手前味噌ですが、“いい人”の集団です。私の課題のひとつは、ここに“強さ”を足して“良い会社”にしていくことです。」
「“強さ”というのは個々人がスキルアップして、組織としての“強さ”を引き出すことですか?」
(川畑部長)
「この”強さ”を教えてくれるのは?
一般消費者であり、一番消費者と近いところで接しているパートさんやアルバイトさんの“声”です。
この”声”を吸い上げられる仕組み作りが必要だと感じています。」
「接客マニュアルはあるのですか?」
(川畑部長)
「接客マニュアルはありません。接客というものは、それぞれの“人”と“人”のふれあいによって違うものです。個々人の『ホスピタリティ』がベースになるもので、いろいろな形があっていいと思っています。」
「店長のマネジメント能力というのもポイントですね。」
(川畑部長)
「そうです。店長のマネジメント力によって店舗の雰囲気も変わりますし“強さ”も違います。
店長とブロック長の良好なコミュニケーション。
ブロック長と経営陣との双方向の正確で迅速な情報伝達体制の構築。
制度面でのサポート。
ここの仕組み作りも”人事の仕事”ですね。」
私は、ここで冒頭の 「人事は“クリエイティブ”な仕事」 というフレーズが完全に腹落ちした。
十人十色と言われるように、人にはそれぞれ“長所”があり“短所”があり、“得手”“不得手”、そして“好き”“嫌い”がある。
人間特有の“感情”という部分は、デジタルでは解決できない“機微”があり、そのズレが“ひび”となり“溝”になっていく。
この“ズレ”を最小限にするには、四角四面な制度でなく、創意工夫を生み出す“クリエイティブ”思考が必要だ。
「”ITリテラシーの向上”というものは必須と思いますが、その部分の社員教育は?」
(川畑部長)
「これからの時代、“ITリテラシーの向上”は重要です。個人スキルのベーシックな部分でしょうね。」
「店舗のIT化・機械化も必要ですが、『そもそも、なぜ?必要なのか?』という目的をまず理解して欲しいと思っています。
『人でなくても出来る業務をIT化・機械化して ”時間を創出” する。』
という目的を理解してもらって、人しか出来ない業務に充てる時間を増やし、一歩も二歩も先読みした“顧客対応”を考えたりする“クリエイティブ”な時間に結び付けるように働きかけでいきます。」
“人事という仕事”に対する熱い想い、覚悟が十分に伝わってきたので、“仕事大好き人間”に有りがちな弱点を突いてみた。
「オンとオフの切り替えのスイッチは何ですか? 」
(川畑部長)
「そこなんですよ。私個人の最大の課題は(笑)。オンとオフの切り替えが苦手なんです。 ”ワークライフバランス”と言いながら一番出来ていないのが私かもしれません。バレちゃいましたか?(笑)」
今回の取材を通じて私が感じたのは
『“人事部の仕事”は、各階層の“溝”を埋めることと、その“溝”を越えられる【架け橋】を架けること』
と教えたもらった気がする。
その【架け橋】は、デジタルでは出来ない、人と人の“対話”を通じてこそ行えるものだ。
川畑部長は、慎重に“言葉”を選びながら、独特の“間”で話をされる。
この“間”が妙に“心地良く”、人が話をしたくなる “空間” を作り出す。
取材を終えて、最後に
「川畑部長は、多くの【架け橋】を架けてるんですね。」
と何気なく言ったら
川畑部長は照れくさそうに
「ありがとうございます。」
と、“輝いた目”で答えてくれた。
“対話”による問題意識の共有、共に解決方法を考える
一人ひとりの良さを最大限活かすにはどうするか?
このことを社員全員が常に考える
これが、株式会社キリン堂の“社風”なのだろう。