バード・モンク・マイルスが示した「アート思考」と「即興力」の大切さ
『音楽』は私の人生において「かけがえのないもの」であり 人生の各ステージにおいての『自分の感覚の変化』を気づかせてくれる大切ものです
日常生活に完全に溶け込んでしまった『音楽空間』が与えてくれる最大の「気づき」は
「常識からの逸脱」「様々な問いかけ」そして「自分の感性との対話」
私が『ジャズ』に拘る理由は「自由であるから」です
『ジャズ』が変化を繰り返してきた理由
第二次世界大戦後から1950年代末までの『ジャズ』は ひとつのムーブメントが起こって成熟すると それを破壊して新しいムーブメントが起こるという「繰り返し」によって新しいスタイルを創造してきました
▼『ニューオリンズ・ジャズ』の反動が白人中心の『スウィング』
▼『スウィング』のアンチテーゼが黒人主導の『ビ・バップ』
▼『ビ・バップ』の反動が『クール・ジャズ』
▼『クール・ジャズ』の派生が白人中心の『ウエストコースト・ジャズ』
▼『ウエストコースト・ジャズ』のアンチテーゼが『ハード・バップ』
1950年代後半から1960年代初めには『モード・ジャズ』『フリー・ジャズ』そして「ジャズ・ファンク」「ジャズ・ロック」などの他ジャンルとの融合も行いながらによって常に進化を続けていきました
1960年代中盤以降は「社会環境の変化」「技術革新」「消費者ニーズの変化」もあって『ジャズ』は大衆音楽シーンの主役の座を奪われてしまいます
『ジャズ』が創造する『音楽空間』は決められた楽譜に従った演奏で構成されるのではなく『即興』によって作られてきました
『即興』なのですから「完成されたフォーマット」内では 遅かれ早かれ 誰がやっても同じような演奏になっていくので限界がやってきます
だからこそ『ジャズ』は常に変化を繰り返して進化していったのです
「『ジャズ』に名演はあるが名曲なし」という格言があります
『ジャズ』は『即興演奏』なので
同じ曲を同じメンバー 同じアレンジで演奏したとしても毎回内容は違ってくるので レコードはそれを「記録」したものです
従って 録音年月日・演奏メンバーを明記することは重要な情報なんです
チャーリー・パーカー(以下「バード」と略す)の凄さ
『ビ・バップ』は『スウィング』への反動的な運動だったとしても 自然な流れで誕生したものとは思っていません
バードという一人の天才の感性(音楽観)がジャム・セッションという狭いコミュニティでの競争的な『やりとり』から形作られていった音楽形式です
歴史上初めて 従来で合わないとされていた非和声音も「音楽理論上使える音を全部使ってみよう」という実験精神で『コード進行追従型即興演奏』の可能性を大幅に解放した【西洋音楽史上の大革命】
人の行動変容を伴う 正に『イノベーション』です
✅『踊る音楽』⇒『鑑賞する芸術音楽』へのゲーム・チェンジ
✅個人のテクニックを表現して競い合う演奏スタイルへのルール創設
【リハーモナイズ(reharmonize)】
既にあるコードの流れに「新たなコードを加えたり」「コード進行全体を全く別のものに変えたり」することによってメロディに違った印象を与えるアイデアが瞬時に創造していくこと
『ビ・バップ』はテンポが高速なので コンマ何秒のスピードでコードが進行していくので「考えて演奏する暇もない」狂気の世界です
バードの『即興演奏』は 「自由奔放」「天衣無縫」でインスピレーションはとてつもなく豊かで アイデアに満ち溢れていて 同じ演奏を繰り返すことはありません
音のつながりを瞬時にして組み立て仕上げられたバードの『音楽空間』は 入念に考案された楽譜に従って演奏した音楽以上に完成度が高いものです
セロニアス・モンク(以下「モンク」と略す)の凄さ
モンクの演奏を初めて聴いた人は「ん?」と奇妙な感じをうける 所謂『ジャズ』の流儀とは違っていて「違和感」すら感じるかもしれません
モンクは「ミントンズ・プレイハウス」のジャム・セッションでチャーリー・パーカーらと『ビ・バップ』を創造してきた一人で 高度なテクニックと音楽理論をマスターしている天才です
モンクは 西洋音楽の秩序・権威を最も体現するピアノで
人々が耳慣れしてしまって常識化していた既存の音楽スタイルを打ち壊して解体して「モンク流の新しい秩序」で演奏しました
「コード的規制」「リズムの閉鎖性」「ハーモニクスの限定性」といった従来の概念を全て否定するのではなく 既存の素材を全て廃棄するのでもなく規制などを革新的に意味合いを変化させて 独自の構想で新しい音楽を創造しました
そこまで『絶対的』と思われていた価値に対して
「実は絶対的ではないんじゃないの?」と問いかけて新しい価値を創造する
これがモンクが天才たる所以です
モンクはピアノの先生から怒られる「指をまっすぐ伸ばした弾き方」をしますが『自分の一番出したい音を出すこと』が第一であって 楽器演奏の規範などの問題ではないことを教えてくれます
マイルス・デイヴィス(以下「マイルス」と略す)の凄さ
早々と『ビ・バップ』の限界を感じたマイルスは 『ビ・バップ』とは真逆のアプローチで アドリブを重視しないアンサンブル重視の『クール・ジャズ』に取り組みます
マイルスは アメリカの白人と黒人の間に厳然たる壁のある差別社会に失望して ヘロイン中毒に陥いるながらも『クール・ジャズ』路線から軌道修正して リズムの細分化実験を行った『ハード・バップ』の原型を築いたとされる作品『Dig(録音:1951/10/05)』を制作します
ドラッグ中毒から立ち直ったマイルスは 1954年2月にニューヨークに戻ってきて ハード・バップの歴史的名盤『Walkin(録音:1954年4月3日&29日)』を制作します
そして1955年~1959年の『Kind of Blue』まで様々な挑戦を続けます
マイルスが バード モンク という天才と大きく違った点は
あらゆる面で「両義性(アンビバレント)ambivalent」を持ち合わせていた点
✅ 「芸術性」と「大衆性」
✅ 「創造性」と「生産性」
✅ 「白人社会」と「黒人社会」
アコースティックからエレクトロニック化していく先進的な考え方
そして1970年代になって 若いロック・バンドの前座でファイルモアなどのライブ・ハウスや音楽フェスに出演していく頭の柔らかさ
最高の『音楽』を創造していく「チーム・ビルディング」に長けているところです
音楽は競争じゃない。協調だ。一緒に演奏して、互いに作り上げていくものなんだ。(引用:マイルス・デイビス自叙伝)
なぜ今『ジャズ』なのか?
人には常に「不安」というものが付き纏います
その「不安」を払拭するために何かの拠り所と「安定」を求めてます
そして知らず知らずのうちに『権威』にしがみついて「安易な道」を選びがちです
バード・モンク・マイルスの天才たちが訴えているのは?
既成の『権威』や『秩序』に囚われない【自由な発想】
既成の枠組みに安住することなく 自らの秩序を創造しながら常に自分に対して「問いかけ」を行っていく姿勢
『音楽』は「言語」を介して明示することで何かを「問いかける」ものではありません
『音楽』は直接『感性』に訴えてきます
『感性』は 個々の感覚を認めて受け入れる「枠組み」ですので当然それぞれ人によって違います
『即興』を磨き上げることによって 人は瞬間的に他者の心に触れることが出来る『直感的理解力』向上につながります
「先行きの見えない」過去の『常識』『当たり前』が通用しない現在の時代
『ジャズ』を学び直すことによって『即興力』を養うことの大切さ
を理解できると私は考えています
まとめ
日本には「個人」「社会」も存在しなくて『世間』の中で生きています
「法のルール」よりも『暗黙の世間のルール』に従わなければなりません
理屈や理論では解決できない「正解がない問題」に取組むことが多い今
俯瞰した視点で「問い」を立てて『思考の飛躍』が可能になる【アート思考】の必要性が語られています
アートにおける「インスピレーション」「ヒラメキ」「直感」はイノベーションを起すための『ヒント』を与えてくれます
この『ヒント』を実践に移す力こそ『即興力』です
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