⑪『ジョジョの奇妙な冒険』feat.Vanilla Ice
第3部「スターダストクルセイダース」に登場するDIOの忠実な部下
ヴァニラ・アイス
その名の元ネタは、1990年代に一世を風靡したアメリカのラッパー
ヴァニラ・アイス(Vanilla Ice)
ヴァニラ・アイス(Vanilla Ice)
ヴァニラ・アイスは、1990年代初頭にヒップホップとポップを融合させたスタイルで世界的な成功を収めたアメリカのラッパー、俳優、テレビタレントです。
本名:ロバート・マシュー・ヴァン・ウィンクル
幼少期にテキサス州とフロリダ州を行き来する生活を送りました。
若い頃からヒップホップダンスやラップに興味を持ち、高校時代にはストリートでダンスバトルに参加していたと言われています。
この頃につけられたニックネーム「ヴァニラ」(白人ラッパーであることに由来)が、彼のアーティスト名の由来になりました。
彼は地元のクラブでパフォーマンスを行い、次第に注目を集めるようになります。その結果、1989年にインディーズレーベルからアルバム『Hooked』をリリース。
これが大手レコード会社SBK Recordsの目に留まり、1990年にアルバム『To the Extreme』として再リリースされました。
彼の代表曲「Ice Ice Baby」は、ヒップホップ史上初めてビルボードHot 100チャートで1位を獲得した楽曲として知られています。
その成功は彼を一躍スターに押し上げると同時に、多くの批判や論争を引き起こしました。
「白人ラッパー」としての批判
当時、ヒップホップは黒人文化に深く根ざした音楽ジャンルとされており、白人であるヴァニラ・アイスの成功は、ヒップホップコミュニティの一部から反発を招きました。一部では「商業的なポップラップに過ぎない」と評価されることもありました。
経歴の誇張
彼がインタビューなどで語った経歴(貧困生活やストリートでの過去)が誇張されていたことが発覚し、信頼性を損なう要因となりました。
このことが、彼の「本物のヒップホップアーティスト」としての評価に悪影響を与えました。
サンプリング問題
「Ice Ice Baby」の成功の鍵となったのが、「Under Pressure」の印象的なベースラインをサンプリングしたリズムですが、当時ヴァニラ・アイス側は、これをクレジットしないまま楽曲をリリースしました。
オリジナル曲「Under Pressure」の作曲者であるクイーンのメンバーとデヴィッド・ボウイは、このサンプリングについて正式な許可を与えておらず、リリース後にこの件が発覚しました。
「Ice Ice Baby」における「Under Pressure」のサンプリングについて、最初は否定していたものの、結果的に、ヴァニラ・アイスとオリジナルアーティスト側の間で和解が成立しました。
この和解により、「Ice Ice Baby」の作曲者クレジットにクイーンのメンバー(フレディ・マーキュリー、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラー、ブライアン・メイ)とデヴィッド・ボウイの名前が追加されることになり、彼らに著作権料が支払われる形となりました。
この事件もまた、彼の評価に影響を与えました。
ヴァニラ・アイスとシュグ・ナイトの「恐ろしい逸話」
シュグ・ナイト(Suge Knight)
シュグ・ナイトは、アメリカの音楽プロデューサー、実業家で、1990年代のヒップホップ界において絶大な影響力を持った人物です。
彼は若い頃、アメリカンフットボール選手として活動していました。
UNLV(ネバダ大学ラスベガス校)でプレーした後、NFLでロサンゼルス・ラムズのトレーニングキャンプに参加するも短期間で退団。
その後、警備員やボディーガードとして働き、音楽業界へと足を踏み入れました。
1991年、ドクター・ドレーと共同で「デス・ロウ・レコード」を設立。
このレーベルは、1990年代初頭のギャングスタラップ(Gangsta Rap)を代表するレーベルとして爆発的な成功を収めました。
これらのアルバムは、ヒップホップの歴史において重要な位置を占めています。
一方でシュグ・ナイト、暴力的な行動や犯罪的な背景でも悪名高く、ヒップホップ業界の裏側を象徴する存在となっています。
事件の概要
シュグ・ナイトは、「Ice Ice Baby」の著作権問題を理由にヴァニラ・アイスに接触します。彼の仲間であるマリオ・ジョンソン(通称"Chocolate")が、この楽曲の一部に貢献したと主張したのです。
最も有名なエピソードは、ロサンゼルスの高級ホテル「ベルエア・ホテル」のバルコニーで起こったとされる事件です。
シュグ・ナイトは、部下を引き連れてヴァニラ・アイスに迫り、脅し、ホテルのバルコニーの縁に追い詰めて、事実上、曲の権利を譲渡させる形に持ち込んだという話です。
この事件の結果、「Ice Ice Baby」の収益の一部がシュグ・ナイトに流れることになり、このお金が後にシュグが設立したデス・ロウ・レコードの資金の一部となったとされています。
「2パック銃撃事件」「ノトーリアス・B.I.G.銃撃事件」
いずれもシュグ・ナイトが関与していると言われていますが、これらの事件は公式に解決されておらず、ヒップホップ界の「未解決の謎」として残されています。
シュグ・ナイトは、度重なる暴力事件や法的問題で逮捕され、刑務所生活を繰り返しました。
2005年: ナイトクラブでの暴行事件で逮捕。
2015年: 映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』の撮影現場近くで、車で男性を轢き殺し、もう一人を負傷させる事件を起こし、殺人罪に問われました。
2018年、シュグ・ナイトは2015年の殺人事件について第二級殺人罪を認め、28年の懲役刑を言い渡されました。
現在も服役中であり、刑務所内で生活を送っています。
名前に込められたユーモアと遊び心
荒木先生は、音楽アーティストや曲名をキャラクターの名前に引用する際、時に名前そのものの意味や響きをキャラクターの性質に反映させ、時に意図的なギャップを作り出します。
ヴァニラ・アイスという名前は甘く軽やかなイメージを持ちながら、キャラクターそのものは冷酷で破壊的という対照的な設定になっています。
スタンド「クリーム」も、名前からは一見柔らかで甘い印象を受けますが、実際の能力は「全てを飲み込み消し去る」という恐るべきものです。
空間そのものを消滅させる能力は、物理的な破壊以上に、「無の恐怖」や「消滅の象徴」をキャラクターに与えています。
このギャップはジョジョのキャラクターに独特の深みと遊び心を与える重要な要素です。
ヴァニラ・アイス(アーティスト)の音楽が持つポップでキャッチーな印象と、商業的成功の裏にある批判や皮肉、そして一時的な人気の浮き沈みを暗示している可能性があります。
荒木先生は、このような名前の二面性を通じて、キャラクターと元ネタの深層的な関連性を描き出しているのかもしれません。
荒木先生は、嫌いなキャラとしてヴァニア・アイスを挙げています。
続く、、