エルヴィス登場で全米にロックンロール旋風が吹き荒れた1956年の光と影
1954年5月17日有名な「ブラウン判決」が下されました
この判決によって黒人社会と良識ある白人が「時代の変化」を感じて『人種差別の撤廃に向けた活動』『公民権運動』に動き出すキッカケになります
That’s All Right
1954年7月5日 テネシー州メンフィスのサム・フィリップスが経営するR&Bを扱う小さな独立レーベルの『サン・レコード』のスタジオでのセッションで エルヴィス・プレスリーが突然ギターをかき鳴らしながら 黒人ブルース歌手:アーサー・クルーダップの楽曲『That’s All Right』を歌いました
7月10日 メンフィスの白人専用ステーションWHQB(ラジオ放送)でエルビスの『That’s All Right』を流したところ大反響
この新しい危険なサウンドは 瞬く間に南部からアメリカ全土に広がり ロックンロール・ブームとなっていきます
Shake, Rattle & Roll
1954年 ビッグ・ジョー・ターナーの楽曲『Shake, Rattle & Roll』がR&Bチャートの1位を記録する大ヒット
1954年5月15日 ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのデッカ移籍最初のレコードとして『Rock Around The Clock』をリリースしましたがヒットしませんでした
2枚目シングル『Shake, Rattle & Roll』(ビッグ・ジョー・ターナーのカヴァー) をリリースしたところ全米トップ10入りの大ヒット
この2枚目シングルのヒットによって『Rock Around The Clock』もヒット
更に 1955年3月19日公開映画『暴力教室(Blackboard Jungle)』の主題歌となったことで全米チャートで8週連続1位の大ヒット
1月28日 エルヴィスは「CBS-TVトミー・ドーシー・ステージ・ショウ」に初出演して『Shake, Rattle & Roll』を歌います
1956年1月27日 エルヴィスは6枚目シングル『Heartbreak Hotel / I Was the One』をリリース(4月にチャート第1位を獲得)
1956年は エルヴィス・プレスリー時代の幕開けとなり『ロックロール』旋風が全米に広がっていきました
エルヴィスが黒人社会に受入れられた理由は?
1950年代中盤以降のアメリカは 公民権運動が広がるにつれて 白人と黒人は相容れない壁をつくり 互いの憎悪はますます激しくなっていた時代です
当時 黒人は黒人の音楽を聴き 白人は白人の音楽に耳を傾けているというのが現実で ラジオでオンエアされにくい黒人のヒット曲を白人がカバーして大儲けする『横取りマーケティング』が堂々と行われていました
白人のエルヴィスが 黒人のヒット曲を横取りして商業主義に走る他の白人歌手と違っていた点は?
自分の音楽的ルーツが黒人音楽であることを公然と認める発言
多くの知識人や学者が『人種差別問題』解決に向けて 難しい顔をして頭を抱えていたところ
エルヴィスは歌で人種問題の壁を簡単に乗り越えてしまいました
リトル・リチャード曰く
当時の白人社会は?
第二次世界大戦後 アメリカ経済は飛躍的に発展しましたが 中央都市と地方都市での経済繁栄の規模・スピード感には違いがありました
【中央都市】
1950年代半には アメリカ全世帯の88%がテレビを所有していて 最新の家電製品に囲まれて 芝生つきの郊外マイホームで暮らすことが 中産階級の目標となっていました
【地方都市】
南部は『機械化』『化学肥料・農薬』などの合理化によって 仕事を奪われた白人も増え 人々は仕事を求めて地方都市へ移動していきます
南部の田舎から見知らぬ都会に出てきて 工業化された非人間環境での仕事にはストレスも溜まり 週末には大衆酒場に集まって田舎から持ち込んだ音楽で踊って癒し合い 新しい連帯感が生まれます
南部人にとって音楽は最も身近な娯楽です
白人と黒人は隣り合わせに生活しながら それぞれ独自の文化を形成していて カラーラインを超えることは社会的タブーです
メンフィスの昼間は警官が白人と黒人の分離に目を光らせていたそうです
ロックロール旋風と人種差別
メンフィスから一気に広がっていった『ロックンロール』の流行は
南部で起こった公民権運動とも重なり
人種差別主義者だけでなく
保守層や聖職者といった多くの親世代から批判・糾弾されます
『ロックンロール』の『本質的な意味合い』が南部と北部では大きく異なっていました
南部人
北部人
当時の国民的TV番組『エド・サリヴァン・ショー』に出演したエルヴィスは 意図的に上半身だけしか映しだされません
これは番組関係者が 保守的な視聴者の抗議に配慮したものです
エド・サリヴァンが次のように伝え エルヴィスへの批判は少なくなります
単なる音楽という範疇に留まらず 当時のアメリカ若者世代の『行動スタイル』『価値観』そして古臭い親世代に対する『主張』であった『ロックンロール』
親世代の大人たちの意図的に
そして最大の問題は
本質的な問題を隠してしまいました
まとめ
いつの時代も同じで
若者世代を中心とした新しい挑戦は
古臭い価値観に囚われていて『偏見』『思い込み』『先入観』を変えらない親世代・大人世代によって抑制されます
自分たちが知らないことに対する不安感・嫌悪感によって
と否定する【現状維持至上主義者】の仕業です