④『ジョジョの奇妙な冒険』feat.Nena
第3部「スターダストクルセイダース」に登場するキャラクター
ネーナ
外見は非常におしとやかで美しい16歳の少女
初登場時はホル・ホースの恋人として登場
描写が少ないために、「元々ネーナは存在せず、貴族だと詐称してホル・ホースに接近していた」など諸説が挙げられ、読者間で度々議論されます。
彼女のスタンド「女帝(エンプレス)」の名前の由来は?
1980年代に世界的なヒットを飛ばしたドイツのロックバンド「Nena」と、
そのボーカリストであるガブリエル・スザンネ・ケルナー(通称ネーナ)です。
まずは、1983年にリリースされたドイツ語で歌われた反戦歌
「99 Luftballons」
をお聴きください。
バンド「Nena」と彼らのメッセージ
Nenaは1981年にドイツ・ハーゲンで結成されました。
結成メンバーは、ガブリエル・ケルナー(ボーカル)、カルロス・カンデラリア(ベース)、ユルゲン・デメル(ギター)、ユルゲン・アンドレアス・ロペス(キーボード)、およびリーダーのリヒャルト・フルム・ツールフェアデ(ドラムス)です。
彼らは、当時のヨーロッパで盛んだったニュー・ウェーブやポストパンクの影響を受け、エレクトロニックなサウンドとポップなメロディーが特徴の音楽スタイルを展開しました。
彼らの代表曲「ロックバルーンは99(99 Luftballons)」は、反戦と核戦争への警鐘を鳴らした一曲として知られており、荒木飛呂彦先生がこのバンドの象徴性やメッセージ性をキャラクターに反映させたのではないかと考えられます。
「99 Luftballons」は、意図せずに引き起こされる核戦争というシナリオを描いた反戦ソングです。
歌詞の内容は、無害な99個の風船が軍のレーダーに映り、それが敵のミサイルと誤解され、緊張が高まり核戦争が勃発するという物語を描いています。
当時、冷戦の影響で核戦争の危機が世界中に広がっており、この曲のメッセージは多くの人々に共感を呼びました。
また、この曲はドイツ語で歌われたにもかかわらず、アメリカやイギリスをはじめとする英語圏でも人気を博し、ビルボードチャートで上位にランクインしました。(その後、英語バージョンの「99 Red Balloons」もリリースされ、さらに国際的な認知度を高めました。)
キャラクター「ネーナ」との関連
ネーナのスタンド「エンプレス(女帝)」は、成長と拡大、力と支配を象徴するタロットカードの意味を持ちますが、それを皮肉るかのように、彼女のスタンドは寄生的で、戦闘中に他者の身体に張り付き、自らの存在を拡大していくという特徴を持っています。
スタンド「エンプレス」も、無自覚のままに状況を悪化させ、増殖しながら人間に害をもたらす存在として描かれ、ある種の不安や恐怖を具現化していると考えられます。
荒木飛呂彦の創作姿勢と社会的メッセージ
荒木飛呂彦先生の作品は、善悪の相対性や、力の使い方に対する問いかけ、そして人間の持つ「生きる意志」といったテーマが色濃く表れています。
キャラクター「ネーナ」も、戦争や支配、そして力の行使に対する警告の一部として描かれているように感じられます。
バンド「Nena」とそのヒット曲が放つメッセージが、作品全体の背景に一役買っていることは確かでしょう。
ベルリンの壁崩壊と平和の象徴
ベルリンの壁崩壊が起こった1989年には、東西ドイツの緊張が終わりを迎え、平和と統一に対する期待が高まりました。
この時期に「99 Luftballons」が改めて注目され、ドイツの音楽シーンにおいても、戦争や分断に対する批判と平和への願いを込めた楽曲として象徴的な存在となりました。
英語版
余 談
デヴィッド・ボウイの西ベルリン公演(1987年)
デヴィッド・ボウイは、1987年6月6日にベルリン西側のレジデンツ・ゲルトでコンサートを行い、彼の名曲「Heroes」を壁のすぐそばで歌いました。
東ベルリンの若者たちは壁越しにこのコンサートを聴き、東西の分断を超えた共感を共有しました。
ボウイ自身も後に
「壁の崩壊に小さな影響を与えられたことを誇りに思う」
と語っています。
ブルース・スプリングスティーンの東ベルリン公演(1988年)
1988年7月19日、ブルース・スプリングスティーンは東ベルリンでコンサートを開催し、30万人以上の観客を集めました。
とスプリングスティーンはコンサート中にドイツ語で語り、観客の心を大きく揺さぶりました。
東ドイツ政府が西側アーティストのコンサートを許可したのは異例であり、この公演は壁崩壊に向けた東ベルリン市民の自由への渇望を象徴するイベントとなりました。
ザ・ウォール・ライブ・イン・ベルリン(1990年)
ベルリンの壁崩壊から1年後の1990年7月21日、ロジャー・ウォーターズ(元ピンク・フロイド)はベルリンで「ザ・ウォール」のライブを開催しました。
このライブは、壁崩壊を象徴するイベントとして歴史に残るものであり、50万人以上の観客が集まる大規模なものとなりました。
「ザ・ウォール」はもともとピンク・フロイドのコンセプトアルバムで、孤立や分断をテーマにしており、ベルリンの壁崩壊にふさわしい象徴的な内容でした。
Roger Waters Pink Floyd The Wall Live In Berlin 1990 Another Brick In The Wall Feat Cyndi Lauper
次号へ続く
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